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#61. レモンしかなきゃそれでもいい


英単語 lemonade は、日本語において 2 つの読み方を持っている。

前回の記事で、「アイロン|アイアン」、「セカンド|セコンド」、「ステッキ|スティック」などの、「英語では同じ単語なのに、カタカナ表記が違う日本語」をいくつか紹介した。

どのような経緯でそうなったかは知らないが、英語の iron, second, label, machine, stick, strike はいずれも、日本語において 2 つの姿(読み方)を持っているのだ。

...... が、上の記事では、ある意味いちばんエキセントリックな例を出すのをすっかり忘れていた。

そう、それがこの lemonade である。

だいたいの人は lemonade と見れば瞬間的に「レモネード」という言葉が浮かぶだろう。こちらはとくに面白くないが、問題はもう 1 つの方である。

言葉としては、日本人ならだれでも知っているおなじみの言葉ではあるのだが、きっと lemonade に由来すると知っている人はほとんどいない。

ちなみに発音は次の通りだが、これを聞いて「レモネード」の他に lemonade がどのような日本語として存在しているか、すこし推測してみてほしい。

ヒントは、夏になると無性に飲みたくなる清涼飲料水で、ペットボトルではなく特殊なビンに入っている。

炭酸が効いていて、ビンにはビー玉が入っていて ......

ここまで来ればもうおわかりだろう。

日本語における lemonade のもう 1 つの読み方、それは、みんな大好き「ラムネ」である。

これを知らずに、「レモネード」と「ラムネ」を同じくくりで見たことのある人は、きっとほとんどいないだろう。同じ英単語から生まれた言葉でありながら、この 2 つは互いに似ても似つかない飲み物に変わってしまった。

ちなみに「レモネード」と言えば、英語には "When life gives you lemons, make lemonade" という決まり文句がある。

文字通り読めば「人生がレモンをくれるときには、それでレモネードをつくりなさい」ということだが、これが転じて、「逆境のときも、くじけることなく、それを上手に利用しなさい」「災いを転じて福となせ」というような意味になる。

英語の lemon はスラング的に「すぐ故障する機械,欠陥品,役立たず」などの意味で使われることもあり、(きっとあの強すぎる酸味のせいだろうけれど)あまりポジティヴな意味を持っていない。

しかし、いくら酸っぱいレモンを大量にもらったとしても、それを使って美味しいレモネードがつくれるのなら、しょい込まされたレモンもありがたいものに思えてくる。

いつもいつでも、そんな風にして逆境をいなせる考え方ができるといいな。

今日都内では、今年初めての真夏日が観測されたらしい。

暑いと炭酸が飲みたくなるが、今年はコンビニでラムネに手を伸ばす代わりに、家でレモネードでもつくって飲んで、涼しい顔してこの逆境を乗り越えようか。


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