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小説

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自作の小説です。 最近はほぼ毎日、500〜2000字くらいの掌編を書いています。
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#毒親

閉ざされた王国(子供な神様の話)

閉ざされた王国(子供な神様の話)

 創造神は小さな子供。

 何も知らない無邪気な子。

 遊び相手を生み出して、おもちゃの王国を作る。

 気まぐれな言葉を法律に、気に食わない民は投げ捨てる。

 神様をお慰めするための王国で、人々は神様のご機嫌を占い、祈る。

 どうか神様がほんの少しだけ大人になられますように。

 甘えたい盛りの神様は、優しい親を創造する。

 撫でてもらって、

 抱きしめてもらって、

 わがままを聞い

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あなたは死ぬまで知らなくていい

あなたは死ぬまで知らなくていい

 あなたを好きになりたかった。

 あなたを好きな私でいたかった。

 あなたを愛する見返りに、あなたに愛してほしかった。

 真冬の川に飛び込めともし言われたら、私は飛び込む覚悟があった。

 あなたを喜ばせるためならば、辱めにも耐えられた。

 あなたに命じられたなら、

 それが望ましいことなのだと、当たり前だと言われたなら、

 行間の期待を読み取りさえしたら。

 足を引っ張るわがままを

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【小説】あなたの天使(天使のぼくと、神さまのお兄さんの話)

【小説】あなたの天使(天使のぼくと、神さまのお兄さんの話)

 天使みたいな子だって小さいころから言われてた。

 ぼくはうれしかったし、この先も天使みたいでいようって思った。——本物の天使になろうって思った。

 同じクラスのまりあちゃんはお父さんがアメリカ人で、幼稚園のときに劇で天使の役をやったって言ってたから、「天使ってどんなの?」って聞いてみた。

「神さまのしもべだよ。神さまを信じてる人を守ったり、神さまの言葉を伝えたりするの」

「しもべってドレ

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