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閉ざされた王国(子供な神様の話)

 創造神は小さな子供。

 何も知らない無邪気な子。

 遊び相手を生み出して、おもちゃの王国を作る。

 気まぐれな言葉を法律に、気に食わない民は投げ捨てる。

 神様をお慰めするための王国で、人々は神様のご機嫌を占い、祈る。

 どうか神様がほんの少しだけ大人になられますように。



 甘えたい盛りの神様は、優しい親を創造する。

 撫でてもらって、

 抱きしめてもらって、

 わがままを聞いてもらって、

 愛してもらって、

 飽くこともなく求め続ける。

 離れることは許さない。

 幼気な神様のお世話を放棄するなんて、万死でも足りない責苦に値する。



 神様に仕えていた親は、やがて自ら神となる。

 飢えの真空を埋めるように貪欲な自我をさらけ出し、神への復讐を被造物に向ける。

 増える神々。

 膨張する宇宙。



 いつか小さな親たちは、手の内に隠し持った針を、浮腫んだ宇宙に突き立てる。

 膨れ上がった神は萎み、残された痩せぎすの子供たちは、愛しい迫害者から抜き取った針を縮退した宇宙の墓標とする。

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