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短編小説

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#小説

ショートノベルdeヒストジオ

ショートノベルdeヒストジオ

略称、ショベルジオ!
そんなサービスを構想しています。

ショートノベル。短い小説。

本来、ノベル、とは
「新しい」「NEW」という意味で
小説、特に長編小説を指します。
それを短くして、ショートノベル。
いわゆる「短編小説」です。
イメージでは三千字程度くらいまで。

(もっと短いものは
「ショートショート」と
呼ばれますが、そこまで
短くはないのでショートノベル)

『showと述べる』にも

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短編小説「上曽峠」

短編小説「上曽峠」

「あげそじゃない、うわそ、だ」

と、彼は言った。

私は恥じ入った。それまでずっと
あげそとうげ、と誤読していたからである。

「…この峠はな、冬になると雪が積もり
しばしば、事故が起きた。
ゆえにこの峠の近くの住民たちは、
ずっとこのトンネルができるのを
待ち焦がれている」

彼は、独り言のように言った。
私は、その赤ら顔を見ながら、

「ではようやく、峠を登らずに
東西に行き来ができますね。

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短編小説『ゆりいか池の精』

短編小説『ゆりいか池の精』

一人の男が、森の中を歩いていた。

鬱蒼とした森である。
まるであの生徒の心の中のようだ、と
彼は思った。昼間でも薄暗い。
時折、木漏れ日が差し込む。しかし、
雲がかかれば、また薄暗くなってしまう。
明かりを持って近づけば、その近くだけ
明るくはなるが、消えれば、また見えなくなる。

…何か道が見える方法はないのだろうか?
そんなことを考えながら、彼は歩いていた。

「うーん、このあたりのはずだが

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短編小説「上曽峠」

短編小説「上曽峠」

「あげそじゃない、うわそ、だ」

と、彼は言った。

私は恥じ入った。それまでずっと
あげそとうげ、と誤読していたからである。

「…この峠はな、冬になると雪が積もり
しばしば、事故が起きた。
ゆえにこの峠の近くの住民たちは、
ずっとこのトンネルができるのを
待ち焦がれている」

彼は、独り言のように言った。
私は、その赤ら顔を見ながら、

「ではようやく、峠を登らずに
東西に行き来ができますね。

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異窓会なら行きそう

異窓会なら行きそう

郵便受けを覗いた尾身玉枝は、1通の手紙が入っていることに気が付いた。薄紫色の封筒に、見たことのない切手が貼ってある。差出人を見ると、こう書かれていた。

『異窓会事務局』

いそうかい…? 同窓会ではないのか。怪しいので封を開けずに捨てようかとも思ったが、同窓会、というその連想にひっかかるものがあり、捨てずにテーブルの上に置いた。

翌朝、玉枝はもう一度その封筒をしげしげと見た。やはり「異窓会事務

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