北條立記

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最近の記事

「神」—人間の域の及ばない何かを描く ~アクションペインティング田嶋奈保子さん~

田嶋奈保子(たじまなほこ)、成真妃呂子(せいしんひろこ)、神透(しんす)。葛飾北斎が、頻繁に改号していったように、時期によりアーティスト名を変えるアクションペインティングの画家がいる。本名は、田嶋奈保子。2008年から活動を始め、「燃えゆる家」シリーズなどで個展を開催してきた人だ。 家の炎を描いてきたアーティスト 田嶋奈保子時代は、「燃えゆる家」シリーズのように、DV、介護、育児放棄といった自身の家族を題材に、描いてきた。斎藤誠「炎の画家!田嶋奈保子 ― DV、介護、育

    • 現代音楽をめぐる4つの事業案

      1 サウンドロゴと環境音楽 2 現代音楽プラットフォームサイト 3 社会問題の中にいる子どもを対象とした音楽 4 楽譜出版 私はこれら4つの事業案について思案しています。 実践段階に入っているものではありませんが、現代音楽を絡めた新規事業として行えそうなものは何か? それを考えた結果を簡単にまとめます。 サウンドロゴと環境音楽 駅、区役所、文化施設、商店街、病院といった公共空間で、環境音楽を流し、その音楽の中に企業のサウンドロゴを混ぜて広告料を取るという、現代音楽によ

      • 映画「パンケーキを毒味する」

        パンケーキの比喩 フワフワなほど美味しいのがパンケーキだ。甘いシロップが香り高いとき、さらにもっともっとと食べてしまう。 パンケーキの比喩はなんだろう?甘い誘惑を指すのか。とくにそれが政治の関係で登場するときに。 映画冒頭では、時の菅総理が記者らを招いて開くという「パンケーキ懇談会」のパンケーキが何なのか? 菅総理がパンケーキのようにスカスカなのか?という問いを発する。 スカスカというのは、何も考えていない頭というニュアンスもあるが、菅氏の関係者がいずれも取材拒否を続け

        • 本は章ごとに読む

          おすすめの読書法です。 つまり本は興味を引く一章を読むだけでも意味がある。 興味引く一章だけを抜き出して読んでいく読書法。 本というと通読しないといけない。 しかし実際にはできない。 だからすぐに読み通せない本は、読むこと自体をあきらめてしまう。 ということになりがちです。 けれども、通読ではなく、手に取った本に一章だけでも自分の関心や気分に引っかかる章があれば、その本は買って読み、部屋に置いておく価値がある。 また通読をしようと考えていると、もう一つのワナにもかかりま

        「神」—人間の域の及ばない何かを描く ~アクションペインティング田嶋奈保子さん~

          その人のギラギラする声-能の体験記

          梅雨が明けて梅雨が明けて、酷暑に入った7月末、能の歌唱である謡(うたい)の体験レッスンに参加した。重要無形文化財認定の保持者である長山桂三(ながやま けいぞう 1976-)氏による、マンツーマンの稽古である。 受講料3000円、40分。楽天が本社を構える二子玉川から東急大井町線で一駅。世田谷区の上野毛という所に長山氏が建てた能楽堂がある。世田谷長山能舞台と言い、ごく新しいモダンな建築物の一階に設けられている。 レッスンに申込んだのは、長山氏のウェブサイトからだった。数

          その人のギラギラする声-能の体験記

          表現者の見えない思いを探して

           電気の源は表現者にある。ここで電気とは芸術のことだ。芸術は、表現者の見えない思いにより作られる。  そして、電気の受容者は社会のわたしたちだ。しかし、源と受容者の間には、社会システムなど、つなぐ幾重ものコードがないといけない。  これはアーティストが活動するための、また社会の受け手がアーティストを理解するための、アーティスト論である。関係者4人に取材した。                             文=北條立記 1 アーティストは何を考えているか アーティ

          表現者の見えない思いを探して

          社会、舞踊、文学そして人々を想う ~心の探求家原田広美さん~

           自身の幼少期からの葛藤と闘い解放しながら、心理療法家となり、人が自分と向かい合う方法を探索されてきた人。心理療法家で舞踊評論家の原田広美さんだ。心理療法とは何か。幼少期以降のトラウマなどを解決し、現在のその人をアクティブにする手段である。本記事は、心理療法の概略を紹介しながら、原田さんという一療法家の、人としての核心に焦点を当てている。  華やかな出で立ちでお越しになった原田さん。昨年(2020年)10月、東京淡路町。その料亭街で写真撮影の後、クラシック喫茶「ショパン」

          社会、舞踊、文学そして人々を想う ~心の探求家原田広美さん~

          近代現代音楽の地域的違い 凝縮、民族的混淆、民謡回帰 ~近藤浩平口述シリーズ第4回~

           第4回では、音楽史に関する幅広い見識をもとに、20世紀の近代音楽・現代音楽の地域別特徴を述べていただいた。現代音楽の特徴というと、無調や不協和音という音遣いの特徴の話が多いが、近藤氏はクラシックの知識ももとにすることで、ヨーロッパ大陸、アメリカ、イギリスの近代現代音楽の地域的特徴に言及されている。  ヨーロッパ大陸、アメリカ、イギリスで20世紀音楽には違った特徴が見られる。ヨーロッパのメインストリームは、19世紀までのクラシックの濃い癖のあるところを集めて凝縮した、クラシ

          近代現代音楽の地域的違い 凝縮、民族的混淆、民謡回帰 ~近藤浩平口述シリーズ第4回~

          わたしの作曲家としてのスタンス ~近藤浩平口述シリーズ第3回~

           第3回は、近藤氏の作曲論と作曲家としてのスタンスを述べていただいている。ヨーロッパのメインストリーム的な現代音楽とはやや距離をおき、一般のお客さん目線に立ち、しかし妥協せず他の作曲家では代用できない音楽を求めている方だ。 クラシック音楽は自由度あるすごい表現道具  日本、西洋を問わず、大多数の作曲家や演奏家は、ヨーロッパクラシック音楽の継承者としてのポジションを得るために、現代音楽をやっている。ピアニストなら本物のベートーヴェンを弾けるか、オーケストラなら本物のシュトラウ

          わたしの作曲家としてのスタンス ~近藤浩平口述シリーズ第3回~

          音符に書けない音を求める ~野村雅美さんインタヴューVol.3~

           ギタリスト・作曲家・抽象画家の野村雅美さん。インタヴューVol.3では、現代芸術の魅力、現代音楽、社会制度、環境音楽などについて語っていただいた。 現代芸術の魅力は言葉で言えるか ————こういうインタヴューをさせていただいている目的は、現代芸術の魅力をどう言葉で表現できるかを知ることなんです。  逆の答えになるけど。言葉で表現出来ない言葉以上の美を現したくて音楽や美術をやっている気もするね。音楽学の人が言葉を使って音楽を論じる訳だけど難しい作業だろうね。センスも必要だ

          音符に書けない音を求める ~野村雅美さんインタヴューVol.3~

          音符に書けない音を求める ~野村雅美さんインタヴューVol.2~

           ギタリスト・作曲家・抽象画家である野村雅美さんへのインタヴューVol.2。今回は、インプロとご自身の「目にヒリヒリするような」絵画について語っていただいた。 インプロの音楽的意義をめぐって ————インプロの音楽的意味、インプロという表現形態の良さはうまく言葉で表現できないでいるんですけど。コラボする上では使いやすいものだと思いますが、即興の演奏会はお客さんが少なく、社会的には需要が少ないのかと思ったり。  プレイヤーがお客だったりね。即興演奏そのものが凄いポピュラリテ

          音符に書けない音を求める ~野村雅美さんインタヴューVol.2~

          音符に書けない音を求める ~野村雅美さんインタヴューVol.1~

           ギタリスト・作曲家・抽象画家の野村雅美さん。現代音楽、インプロヴィゼーション、ミニマルミュージック、絵画、社会制度、環境音楽など広範に語っていただいた。その内容を、Vol.1~3にわたってお届けする。毎月東京阿佐ヶ谷のクラシック喫茶ヴィオロンで行われている、野村さんと演奏家やダンサーとのコラボレーション企画であるComporovisationを通じて、野村さんのファンとなっている方は多い。人のやっていない音楽、と常に語る野生のミュージシャン。各種表現者を包み込むその音楽。

          音符に書けない音を求める ~野村雅美さんインタヴューVol.1~

          「回る楽器職人」の子どものための音楽教育思想 ~近藤浩平口述シリーズ第2回~

           第1回口述シリーズでは、作曲家近藤浩平氏の「地産地消の持続可能な音楽とオーケストラ」というお話をお届けした。第2回では、「回る楽器職人」「回るシンフォニー」という音楽プログラムを題材として、子どもに音楽に触れてもらう方法論について述べていただいた。「回る楽器職人」は近藤氏がベアリング会社NTNと共同開発した楽器で、「回るシンフォニー」は同じくNTNのために音楽教育学者の近藤真子氏と開発されたものである。 子どものための音楽教育思想  「回る楽器職人」や「回るシンフォニー」

          「回る楽器職人」の子どものための音楽教育思想 ~近藤浩平口述シリーズ第2回~

          地産地消の持続可能な音楽とオーケストラ ~近藤浩平口述シリーズ第1回~

           多くの作曲家や演奏家の活動は、作曲と演奏のみにとどまる傾向がある。その中で作曲家の近藤浩平氏は、地域の文化経済、オーケストラ運営、子どもの音楽教育に関しても、考えをめぐらしている人だ。現代音楽のマネジメントや教育上の停滞と限界を超えようとするかのような、先鞭をつける発想を述べられている。深い音楽史的知識もあわせもつ、日本作曲界における魅力の人。インタヴューで口述していただいた内容を、数回にわたって連載します。 1 地産地消の持続可能な音楽  近年、わたしは音楽と文化の地

          地産地消の持続可能な音楽とオーケストラ ~近藤浩平口述シリーズ第1回~

          日本人作曲家の現代作品を広めるには~杉浦菜々子さんインタヴュー~

           日本人作曲家のピアノ曲演奏に取り組まれている、ピアニスト、ピアノ教育家の杉浦菜々子さん。杉浦さんが行っているように、いわゆる現代音楽の中で、日本人作曲家の音楽から紹介をするのは、この日本で現代音楽を広める上で、ひとつの自然なやり方だろう。  そう思った私は、去る2020年8月11日、ピアノ教室を開かれているご自宅にて、お話を伺った。  日本人の現代音楽作品は、ガイドして紹介するのが有効という。弾き手となる子どもにも、演奏会の聴き手にも。そして、ピアノの先生に対しても。これは

          日本人作曲家の現代作品を広めるには~杉浦菜々子さんインタヴュー~