見出し画像

ヘヴィ・メタルシーンを辿る旅 ver.4 / 様式美の要素:叙情的な旋律、哀愁のメロディ / メタル史:メロディック・デスメタル / ゲイリー・ムーア、ボン・ジョヴィ & オジー・オズボーン

ヘヴィメタルの様式美の構成要素第4弾は、哀愁のメロディです♪

今回はこの曲からスタートです。

Santana - Europe


この曲はみなさん、お聞きになった事もあるのではないでしょうか。そう、邦題に哀愁という言葉が入ってますね。

まさにこの雰囲気をロックの中に取り込んだのが英国の民族音楽・フォーク直結のヘヴィメタルなのです。

ヘヴィメタルの構成要素その4:湿り気のある抒情的な旋律、メロディ

ヘヴィメタルの様式美の構成要素については、、、、
1、楽曲の構成1、劇的なイントロからの、スピードチューン or ドラマチックな楽曲への流れ
2、楽曲の構成2、複雑な構成と長尺の楽曲
3、ギター中心。ツインギターのハーモニー。
4、湿り気のある、抒情的な旋律、メロディ
5、メタリックな響き
6、ヘヴィな響き
となります。

今回は湿り気のある叙情的なメロディ。。つまりは哀愁漂うメロディとはなんなのか?これについてのご紹介です。

といっても、なにも特別なものではありません。日本人の心の奥底には、演歌や民謡の魂が備わっていると思います。

これは、例えて言うならば、神社仏閣に向き合う時や、遠くに富士を眺めるときに心に去来する思いのようなもので、大多数の日本人はこの感覚のイメージが沸くと思うんです。

英国にも恐らく同様のものがあって、英国のアーチストが本能のままに楽曲を紡ぎ出したときに、現れ出るものだったりします。

たとえば、、

The Beatles - In My Life

これをきいて郷愁を思わない方はいないのではないでしょうか?この雰囲気、この響きが哀愁であり叙情性でもあります。

ビートルズが、このムード満載になっていったのは、実は「ラバーソウル」というアルバムから。それまでは、オールディーズに近かったんですが、このアルバムから徐々に、彼らの個性が現れてきて、唯一無二の存在へ変わっていったわけです。

そして、次の例はこちら

Queen - Bohemian Rhapsody

まさに英国としか言いようのない音です。途中にオペラを挟むなどもそうなんですが、やはり出だしのメロディと、オペラパートまでの旋律ですよね。ここに英国ならではの哀愁のメロディが詰まっています。

では、メタルの世界ではどんな風な音になっているのか。それを紐解いてみます。

メタルの世界の抒情性、哀愁のメロディ

まずはメタルにつながっていった英国ハードロックの楽曲を聞いてみたいと思います。

Thin Lizzy - Whiskey in the Jar 

アイルランドの英雄とも称されるバンドの最初期の一曲(アルバムでいうと3枚目)。

出だしの物悲しい雰囲気、掠れる声が重なってきて、エレキギターの物悲しいソロへと突入していく。

英国や欧州のDNAには、もはやこういう音階が刷り込まれていると思っても良いと思います。

次にこのドイツの英雄というべきバンドの初期の楽曲(2枚目のアルバム)

Scorpions- Fly to the Rainbow

このドイツを代表するメタルバンドも初期は哀しみと抒情性満載の、いわば、人生の艱難辛苦に向き合っているかの様な雰囲気の楽曲が多かったんです。

これもまた絶望的なまでのメロディ。

この音楽の遺伝子が後続のバンドたちに受け継がれていきます。

では、70年代後半から80年代初頭にかけての英国のハードロックバンドをみてみます。

Def Leppard - Bringin' on the Heartbreak

いまやポップなロックバンドとして、世界を制覇しているこのバンド、デビューは、かの、New Wave of British Heavy Metalのブームに乗ってでした。

決してメタルバンドではないこのバンドにも初期にはこういった、哀愁の英国的メロディがあったんですね。

そして、ホワイトスネイクのボーカリスト、デイヴィッド・カヴァデールのソロ

David Coverdale- Only My Soul

この方もメタルというよりは英国流に解釈されたブルーズが主体の音楽。ホワイトスネイクにて十二分に表現されていく楽曲がソロアルバムにも満載でした。

この英国流哀愁の漂うブルージーさも、どこか切ない気持ちにさせてくれます。

そして、メタルバンドに見られる哀愁のメロディです。あえて、テンポの速いものをピックアップしてみましたが、どうでしょうか。雰囲気が伝わるでしょうか。

Iron Maiden - Wasted Years

UFO-Doctor Doctor

神・マイケルシェンカーの在籍していたバンドの代表曲。イントロからの出だしがたまらないですね。


ゲイリームーア- Out in the Fields

北アイルランド紛争の哀しみを若干の怒りに変えて展開した疾走感あふれる楽曲もまた、抒情性に彩られています。

いかがでしたでしょうか?

いわゆる、ガンズやエアロスミスなどのハードロックバンドや、SlipknotやLinkin Park、Kornら、デビュー時はメタルバンドのカテゴリに入っていたバンドたちの音と比べて違いは一目瞭然では無かったでしょうか。

この音、この抒情性、哀愁が、メタルの様式美なのです。

Europe-Ninja

北欧の哀愁。抒情性あふれるメロディアスな展開。

ハードロック編で詳述いたしますが、アメリカのハードロックブームの発火点となった、ブリティッシュメタルの影響を受けて哀愁漂うロックをやっていたグループは80年代前半には、結構いました。

徐々に、その抒情性を無くして、いわゆるポップなアメリカンハードロック化していくんですが。。。

↓このバンドにも、こんな哀愁の楽曲があります(セカンドアルバムまでは、この手の英国直結の哀愁がありましたね。。)

Bon Jovi- Runaway


では、この項の最後に、必殺の抒情性を兼ね備えた楽曲をご紹介します。これぞメタル。これぞ様式美。

Ozzy Osbourne - Mr.Crowley

この曲のラストのギターソロが特筆すべき音で、、これは伝説のギタリスト、ランディ・ローズが残した、黒魔術に傾倒していたといわれる人物・クロウリー氏の断末魔にも近い音。いや、慟哭と言っていいものかもしれません。


ヘヴィメタル・ハードロックの歴史vol.4〜メロディックデスメタル

歴史編第4弾は、メロディック・デスメタルです。

北欧メタルの進化していった先に、メロディック・デスメタルなるカテゴリが登場しました。

デスメタルというと、当初は、「吠えているだけで、歌っているとは、とても言えないボーカル、よくわからない不快な声」「乱暴で暴虐的な音」「悪魔的なジャケット」と、、まあ、僕もいまだに、嫌いなジャンルです。嫌いというか、受け付けないというか。

ただ、このバンド群が様式美に開眼し始めたんです。そこで、歴史が動いた。

この様式美を兼ね備えたデスメタルバンド達が地上に姿を表したのは、2000年代から。

つまり、70年代の原型から80年代にきちんとしたメロディを備えて隆盛を迎えたハードロック・ヘヴィメタルが、90年代に入って、、、湾岸戦争や、資本主義の結果としての格差社会で地下で喘ぐ若者の怒りを体現して地上に躍り出てしまったニルヴァーナのグランジの影響で、古き良きロックは一網打尽にされてしまった。

あるバンドはポリシーを捨てグランジ風のアルバムを出し、ディオやジューダスプリーストも時流に乗ったアルバムを出すなど、どん底の時代。

そんなとき、80年代に青春を過ごした面々が、大人になったわけですね。そして、

「俺たちが愛していたのはそんな音楽じゃない。世の中になければ自分たちでやってやろうじゃないか。俺たちはアルバムを聞き込んでいるから、あの頃の音を俺たちなりに表現できるんだ!そして、古き良きメタルの素晴らしさをもう一度広めようぜ!」

と思ったかどうかはわかりませんが、彼らが確かに古き良き英国の抒情性を兼ね備えていたことは事実です。しかも、オリジナリティあふれ、楽曲もかなり質の高いレベルで。

*デスメタルにはデス声。。なんですが、彼らも歌で表現することの重要性を認知していったのか↓では、きちんとした声で歌っていますのでご安心を(Arh Enemyというバンドは除く。。)

Amorphis- Silent Waters

のっけからのピアノの旋律。XのEs Dur のピアノ線のような、物悲しくもあり、はかなくもあり。。。

In Flames- The Jester's Dance

ワルツのリズムというのでしょうか。この闇夜の雪原にポツンとたたずんでいるかのような雰囲気。。

In Flames - Stand Ablaze

Burrn!誌にて、死地に赴く戦士のテーマ曲と紹介されてましたが、まさに!な一曲。

Sentenced - Cross My Heart and Hope to Die

このバンドも歌詞が絶望的なまでに暗いのですが、日本人の耳には意味がすぐ入りませんから、歌詞に引っ張られずにメロディが楽しめます。


Arch Enemy - We Will Rise 〜Fields of Desolation 

なんとデス系なのに女性ボーカルだったという、マイケル・シェンカー直結の哀愁のメタルバンド。ツインギターのハーモニーが鳥肌もの。最後の方に珠玉のメロディが出て来ますので、ぜひ最後まで聞いて見てください。


そして今回のラストは、様式美の最高峰とも言える、オジーとランディの作品を。

Ozzy Osbourne- Diary of a Madman

ギタリスト、ランディ・ローズは、悪魔的なオジーとは対照的に、悪魔の横にいる天使的な存在に見えますし、実際、そんなギターのメロディも多いんです。

が、時折、悪魔が顔を覗かせて、暴れ出します。ランディに憑依して、彼の技術や魂を持って自らの音を高らかに奏でているかのよう。

この曲はそんな、ランディが生きていた時代にオジーと残した中では、裏の代表作とも言えると思います。この慟哭をぜひ!


今回もお読みいただきありがとうございました。次回からは、ヘヴィメタルのメタリックな部分とヘヴィな部分をご紹介します。まずはメタリックから。

お楽しみに!

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 500

この記事が参加している募集

スキしてみて

私の勝負曲

いつも読んで下さってありがとうございます。頂いたサポートはいろんな音楽などを聴いてご紹介するチカラになります。あなたに読んでいただき、新たな出会いを楽しんでいただけるよう、大切に使わせて頂きます。よろしくお願いします!