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2023年1月の記事一覧
キヨメの慈雨 第三話 (ジャンププラス原作大賞・連載部門応募作品)
「チコ、もうひと頑張りだよ!」
その言葉に適当に応えつつ、チコは内心で舌を巻いていた。
(肉体の水への変化は消耗が激しいというのをわかっていながら、全身を水に変えてさらにそれを操作し小窓から外へ脱出したか。この小娘、凄まじいな。コトナリを見ても大して動じることはなく、戦闘が始まっても取り乱すことはなく、能力を手にしても迷うことはない。ノリがいい、というやつなのか適応力が異常に高いのかはわから
キヨメの慈雨 第二話 (ジャンププラス原作大賞・連載部門応募作品)
男は両手を縛った女子高生を前にして尚、手を出せずにいた。自宅のリビングに、何かがいる。蛇と呼ぶにはあまりにもおかしな、青色の何かが。それが力強く少女に言い聞かせる。
「お前には、特別な力がある!」
それは、少女に勇気を与えた。それは、暴漢に恐怖を与えた。たった一言で、両者の立場は逆転していた。
チコに気を取られている男に、意澄は思い切り喉突きを喰らわせる。それから両手が自由になったこと
キヨメの慈雨 第一話 (ジャンププラス原作大賞・連載部門応募作品)
進級時の恒例行事といえば、自己紹介だろう。ましてや、高校に入学してすぐの一年生のクラスとなれば尚更だ。その自己紹介が、御槌意澄は苦手だった。
別に自分が嫌いな訳でも、他人に興味が無い訳でもない。ただ、言うことが無いのだ。新たなクラスメイト達は『カードゲームをやってます』とか『ギターが弾けます』とか『中学では陸上で県大会入賞しました』とか、それぞれ趣味や特技や個性を口にしているのに、意澄にはそ
ジャンププラス原作大賞・連載部門応募作品「キヨメの慈雨」あらすじ
平和な地方都市・天領市を未曾有の豪雨災害が襲ってから三年。
入学早々、特技も個性も趣味も無いことに悩む女子高生・御槌意澄は昼休み、校舎裏で弱っていた蛇型の不思議な生物を発見する。
自分は『コトナリ』の一種だと名乗る記憶喪失のその生物は、傷を癒すために取り憑かせろと意澄に迫り、そして尋ねた。
「特別な力が、欲しいのではないか?」
それが、平凡どころか没個性な少女の物語の始まりだった。
意澄