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記事一覧

もうやめよう。今日やめよう。

もうやめよう。今日やめよう。

どうせ読まれないなら
どうせ誰にも見向きされないなら
もうやめよう
今日やめよう

そうなったって誰も私を求める人などいないのだから

書くことなんて私には出来ないことだったのだ
痛みを伴いながら書いても書いても
誰の心にも響かない
そんな不毛なことをして何になる
だからもうやめよう
今日やめよう

だのになぜ
私の心は書きたいと切望するのだろうか
血を流してまで
書きたいものが湧き出るのは
どう

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明日の憂鬱

明日の憂鬱

明日の憂鬱を前借したみたいに、憂鬱な夜だ
こんなにも泣きたくなるのは何故だろう
夜の散歩にでも出たら
気が紛れるのかな
それともダムが決壊して泣き出してしまうのかな
でもこれは明日の憂鬱の前借だから
明日はきっとこの憂鬱は晴れて
晴々とした気持ちになるのだろう
早く眠れ私
早く
早く

明日は明日の風が吹く

明日は明日の風が吹く

明日は明日の風が吹く
今日がどんなに辛くても
今日がどんなに寂しくても
今日がどんなに哀しくても
明日は明日の風が吹く

今日とはちがう風が
必ず新しい風が
どんなに辛い日の後も
哀しい日の後も
寂しい日の後も

必ず新しい風が

さよならの朝

さよならの朝

ぴかぴかの朝が来て
街が目を覚ます
私はいつもねぼすけで
いつもぴかぴかの朝を少し逃してしまう

早く目が覚めた今朝
街はまだ少し寝ぼけ眼で
私はねぼすけではない朝を噛みしめる

さよならをいうために
早く起きた朝
今日で最後になるあなた
好きだったあなた

さよなら
さよなら

街の中に
私の心に
さよならがこだまする

【小説】群青色の夏 4

【小説】群青色の夏 4

 僕がそう言うと、万里子は納得がいかないような顔をしながらも、こくりと頷き、それ以上の反論はしてこなかった。僕には、万里子の納得のいかない気持ちがよく分かったが、先生がオーディションをしてメンバーを決める以上、そこは僕たちの手の届かない神域なのだとも思っている。
 
 だから僕は、万里子のパートリーダーとしての焦りや不安を感じ取りつつも、信じようと彼女に投げかけたのだった。それは中学生の僕に出来る

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【小説】いつかまたどこかで

【小説】いつかまたどこかで

幸せな毎日でした。一緒に居れるだけでよかったのです。でも私のそんなささやかな幸せは一瞬にして奪われてしまいました。

今日は私のそんな話を聞いてください。

私はそのころ大介という人と付き合っていました。大介とは高校時代から数えて、八年も付き合っていて、一番心を許せる大切な人でした。傍に居れるだけで幸せで、私はこの人と結婚するんだと決め込んでいました。それは大介も同じだったようで、私の誕生日が近づ

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【小説】群青色の夏 3

【小説】群青色の夏 3

「由人、パーリー会議始まる」

僕にそう声をかけたのは芳香だった。パーリー会議とはパートリーダー会議の略である。

「もうそんな時間か、すぐ行く」
「明人にも声かけといてね。いつも遅刻されると困るの」
「わかったよ。必ず声かけてから行く」
 
僕はクラリネットの教室で窓に向かって練習をしている明人に声をかけた。

「おーい、明人パーリー会議始まるぞ!急がないと芳香にどやされる。急げ!」
 

そう

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【小説】群青色の夏 2

【小説】群青色の夏 2

 普通、クラリネットパートのパートリーダーはコンサートマスターがなるものだ。他の学校では違うかもしれないが、この学校では慣例的にそうなっていた。けれど、小林先生は「明人ではまとまらないだろうから」とパートリーダーには僕を指名した。

 部長に僕がなったのも、「由人のほうが多分向いている」と小林先生が呟いたからだった。部長は選挙で行われるが、僕と明人はほぼ横並びの票数だったが、小林先生の呟き一つで、

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【小説】群青色の夏1

【小説】群青色の夏1

 嫉妬していた。僕は、明人に。それはごく自然なことだと思うし、だから僕はそれが悪いことだなんてこれっぽっちも思わない。けれど、もし明人に嫉妬せずにいられたら、僕はどんなにか楽だっただろうかと、夢想することはある。それはいけないことだろうか――

 僕、森永由人と明人は一卵性双生児だ。僕の方が少し早く生まれたので兄で、明人は弟だ。僕たち兄弟は傍目に見れば仲の良い双子だと思う。同じ学校に通い、同じ制服

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【超短編】おやすみ、世界

ひなこの日課は毎夜世界におやすみを告げることだ。それは今日も同じで、ひなこは世界におやすみを告げる。ひなこのおやすみはいろんな言語に変換されて、世界中におやすみをもたらす。

ひなこは太陽のような子どもだ。日に焼けた褐色の肌に、赤い髪、そばかすの目立つ顔に、笑顔が良く映えた。そんなひなこは日中は学校へ行ったり、友達と遊んだりしながら普通の女の子として過ごす。

けれど夜になると、ひなこは世界におや

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【短編】リストカットシンドローム

【短編】リストカットシンドローム

時間の流れは残酷だ。由紀子はそう思った。気が付けば自分の肌にはそれ相応の年輪が刻まれ、もうお姉さんと呼ぶよりおばさんと呼ばれた方がしっくりくるような年齢になっていることに気付いた。

そんな自分が、未だにリストカットに頼って生きているのが可笑しくなって由紀子は一人フッと笑った。

若かったころ、十代だった頃はリストカットはファッションのように流行り、みんなと言っていいほどみんなしていた。由紀子は違

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【短編】フェルマータ

【短編】フェルマータ

瞳は見知らぬベッドから、見知らぬ天井を眺めていた。

昨日の記憶は曖昧だ。途中までの記憶と状況から察するに、私は病院に居るらしい。私は昨日、死のうと思った。理由なんてない。本当に死のうと思ったのかさえ怪しい。

アルコールと病院から処方された薬を一気に飲み、最初のうちふわふわしていたものの、気持ち悪くなり、そのまま気を失ったようだ。

そしておそらく彼が私を見つけて、救急車でも呼んで私はここに居る

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