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le 20 août - Paris, 1994


1994年8月20日

 9時起床。9時半に「サン・ジャン」へ行き、朝食代わりにカフェ・オ・レを飲む。そしてその足で、パリ郊外にあるIKEAに行った。

 IKEAというのは、スウェーデン出身の巨大な家具屋である。北欧らしいシンプルなデザインの家具が、これでもかというくらいに広い倉庫のような店内に所狭しと積み上げられている。組立式のものが多い。
 ナツメさんは今、ロー・テーブルで仕事をしているのだが、膝が痛いのでロー・テーブルの下にチェストを入れて椅子に座って仕事ができるようにしたいと言う。今日はそのためのチェストを買いに来たのだ。
 しかし、色々なものを見ながら検討した結果、結局ライティング・ビューローのキットを買うことになった。

 アパルトマンに戻ると、早速作る。なかなか面白い。もともと何かを作るというのは大好きだ。タカさんとゼンと3人がかりでせっせと作る。

 ひと段落したところで、お昼を食べに外に出る。いつも行く「ル・ドラゴン」ではない、ピガールに近い中華料理屋へ入った。窓から目の前の建物の中庭が垣間見えた。すごく綺麗に手入れされた庭園だった。この店はワンタン・スープはとても美味かったが、焼きそばはイマイチだった。ご馳走になっておいて文句を言う筋合いではないのだが。

 昼食を食べ終えると、ライティング・ビューローはひとまず置いておいて、ゼンとふたりでサッカーのチケットを買いに行った。Gare du Nord北駅から少し歩いたところにある店だ。暑い中がんばって歩いたというのに(今日は久しぶりに暑かった)、店はfermé休みだった。雰囲気的にヴァカンスに出たっぽい。あきらめきれなかったが、しょうがないのでアパルトマンに戻った。

 アパルトマンに戻ると、ライティング・ビューローの続きに取りかかる。途中で「TAKA」へ伝言を伝えに行き、ついでにミシェルの店へ写真の焼き増しを取りに寄った。そして間もなく、ライティング・ビューローが完成した。

 夕方、ヨシさん達といつものように「ランデ・ヴー」に集まり、ライティング・ビューローの完成を祝った。ハイネケンがひときわ美味かった。
 ヨシさん曰く、木の表面をサンド・ペーパーで荒らし、墨を流してからロウを塗りつけるとアンティークっぽくなるらしい。これは良いことを聞いた。東京に帰ったら何かで試してみよう。


le 21 août

編集後記

今では日本でも誰もが知っている存在のIKEA、僕はこのときに初めて知りました。日本だと初期の出店・撤退を経て、2006年に船橋と港北にオープンしたあたりから知名度が急上昇したんじゃないでしょうか。

買ってきた家具を自分で組み立てて使うのって、当時の感覚だととても新鮮だったように思います。そしてとても楽しかったです。

そしてもうひとつ、今でも記憶に残っているのがサッカーのチケットを買いに行ったくだりです。

日記にも登場するGare du Nord北駅はターミナル駅で、TGVやユーロスター(この日記の直後に開業)も発着する大きな駅です。ただこの周辺というのは治安がよろしくないエリアで、ナツメさんやヨシさんからも注意されていました。

中でも隣のメトロ Barbès-Rochechouartバルベス=ロシュシュアール駅は絶対に降りるな、乗り換えもするな、遠回りでも避けて移動しなさい、と言われていたのですが……実はこの移動の際にうっかり乗り換えで利用してしまったのです。たしかPigalleピガールからメトロに乗って、ここで乗り換えたんですね。

幸いにも特に怖い思いをすることはなかったですが、パリの他のエリアとは明らかに違う雰囲気で、わりとドキドキしていたことを覚えています。

ちなみに、もうひとつ言われていたのは「メトロを使うときは階段を使わないこと。どんなに待たされても必ずエレベーターを使いなさい」というものでした。らせん状の長い階段の中腹あたりは逃げ場もなく助けも呼びにくいため、強盗に狙われやすいのだそうです。

今の治安状況がどうかは分かりませんが、もしパリに行かれる方がいたらご注意ください。

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