le 12 août - Paris, 1994
1994年8月12日
14時起床。よく眠った。ナツメさんとゼンは午前中から何やら動いていたようだが、僕は全く起きる気になれなかった。
顔を洗って、歯を磨いて、ダイニングのカウンター・テーブルに戻ると既にサラダができていた。お昼ごはんはムールのスパゲッティだ。
そういえば、先週の土曜日はコックのスパゲッティだった。僕が遅くまで寝ている時はなぜか美味い貝のスパゲッティだな、今度はスパゲッティが食べたくなったらゆっくり眠っていようかな、とくだらないことを考えているうちに皿は空っぽになってしまう。コックといい、ムールといい、調理はシンプルなのに(いや、だからこそ)本当に美味い。
幸せな昼食を食べ終えると、そのままソファにごろんと横たわった。今日は夕方まで、本当に何もしなかった。安息のひととき。
夕方になると、いつものように「ランデ・ヴー」でヨシさん達と一杯。今日は、最近涼しかった中でも特に涼しく(朝12度、日中でも25度前後だった。東京は40度を超えたと聞いたけれど)、タートルネックのカットソーの上に買ったばかりの水色の革ジャンを羽織ってもまだ涼しかった。しかし、ヨシさんはポロシャツ一枚である。寒くないのか、と訊くと「こっちの気候に慣れちゃったから」ということだった。
それにしても、ヨシさんと僕のファッションは全く季節が違っていた。僕なんて、皆がビールを飲んでいる中でひとりだけ、寒いからと言ってvin chaud(ホット・ワイン)を飲んでいたのだ。
夕食を食べに、そのまま4人で「ル・ドラゴン」へ行くことになった。ここは相変わらずエビが美味い。
アパルトマンへ戻り、少しゆっくりしてから眠った。平和な1日だった。ブルノーから明日の約束についての連絡がなかったのが気になるところだが……。
編集後記
ベルナールのビストロの鴨のコンフィも、ル・ドラゴンの揚げ春巻やエビ料理ももちろん忘れられない味なのですが、ナツメさんが何度も作ってくださったコックやムールを使ったシンプルなスパゲッティも僕の中ではパリの思い出と直結していて、鮮明に記憶に残っている味です。
それはともかく、前日に夜遊びして疲れていたようです。そして待っていた連絡は来ない……夕方の外出中にアパルトマンの電話が鳴っていた可能性はあるんですけどね。スマートフォンどころか携帯電話も持っていない頃の話です。果たして明日の予定はどうなるのでしょうか?
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