見出し画像

MBA Essentials 2021<総合コース>春 第8回 ファイナンス理論 ~資本コスト、キャッシュフロー、企業の価値~

会計に引き続き苦手意識の強い分野ですが、「ファイナンスをまったく知らなくてビジネスができる時代ではない」と先生は言います。

本来は2時間程度の講義でわかるわけはなく、まとまった学習が必要です。
逆に言うと、「わかっているとアドバンテージ」な分野です。

そんな難しい分野について「もうちょっと勉強してみよう!と感じて行動してもらう」を目的に講義されていました。

本記事でそれがほんの少しでも伝われば幸いです。

一緒に学びましょう!


第8回 概要

画像1

ファイナンス理論 ~資本コスト、キャッシュフロー、企業の価値~
鈴木 一功 先生

企業財務やファイナンスについて学べば、企業が活動を継続していく上での「血液」ともいえる、お金の流れ(=キャッシュフロー)を通じて、企業価値について理解できるようになります。
資本コストとは何か、企業のキャッシュフローと企業価値はどのように関係するのか。
具体的な事例を通じて、議論していきます。


学んだこと

画像2

大きくは、以下の3つです。

✅①覚えておきたいファイナンスの格言
✅②資本コスト
✅③CAPM(キャップエム)

①は「格言」は、格言そのものではなく本質が大事です。

②の「資本コスト」は、最近よく聞く言葉だそうです。私はアンテナを張ってなかったのでまったく気がつきませんでした。

この言葉が出はじめると本屋に「資本コスト」を冠した本がズラーっと並んだのだとか。たまには本屋で刺激を得ないとダメですね。

③の「CAPM」は、使い方を学びましょう。


ファイナンス理論を学ぶ意義

画像4

ファイナンスといってもいろいろです。今回は、コーポレートファイナンス(投資家からどうやってお金を集めるか?)に的を絞ります。

ファイナンスとは

お金の流れは企業にとっての血液です。この流れ、つまり企業の資金調達を考えるのがコーポレートファイナンスです。

ファイナンス理論は、ビジネススクールでは必修科目ですし、企業買収(M&A)の基礎知識でもあります。

「私の仕事では関係ない」ではなく、いつどこで必要になるかわかりません。「用語くらいは知っておくべき」と先生もおっしゃっていました。


覚えておきたいファイナンスの格言

画像6

❶資産の価値は、その資産が生み出すキャッシュフローによって決まる
 
→ 資産価値=キャッシュフローの現在価値
❷今日の1円は、明日の1円より価値がある
 → 将来キャッシュフローは現在価値で評価する
❸卵を運ぶとき、すべてを1つのバスケットに入れて運ばない
 → 分散投資
❹投資家は、リスクの高い投資に、より高い利益を期待する
 → ハイリスク↔ハイリターンの原則
❺世の中にタダ飯はない
 → うまい話には裏(リスク)がある

❸❹❺はなんとなくイメージがわきますでしょうか。

これをわかっていれば、「ノーリスク(元本保証)で10%のリターン」、そんなうまい話なんかあるわけがないとわかりますね。

❶❷について、関連用語も交えて見てみましょう。


資産価値と現在価値のてんびん

シンプル_薄ピンク

てんびん

格言❶「資産の価値は、その資産が生み出すキャッシュフローによって決まる」の話です。

図の赤線は、投資家が投資で支払う資金です。つまり投資元本です。これをてんびんの左側に置きます。

投資後は、毎年収入が発生しますが、その将来のキャッシュフローを現在価値に置き換えて合算した値(緑線の合計)てんびんの右側に入れます。

現在価値は、あとで説明します。

このてんびんが釣り合うように、つまり、投資家も企業も損しない価格で投資元本を決めるのだそうです。

実はここ、よくわかっていません😓。投資家からしたら、「緑が多い方がいいんじゃない?」と思ったからです。つっこんだ学びが必要ですね…


「現在価値」とは

画像12

ここで出てくるのが、格言❷「今日の1円は、明日の1円より価値がある」です。逆にいうと「明日の1円は、今日の1円より価値はない」です。

1円

これは単純な話で、「お金は運用すれば利益を生む」からです。

今日か明日に1億円あげる」と言われたら「今日くれ!今くれ!」と言わなくてはいけません。

なるほど、宝くじが当たったとわかったら当日にでも受け取りに行って運用すべきですね!…当たらないんですけどね😓

先のてんびんの右側は、この現在価値に置き換えた値を使うというわけです。

1年後の100万円と2年後の100万円は単純に足せません。「一旦、現在価値に直してから足す」必要があるわけです。

講義では現在価値の計算式も教わりましたが、ここでは現在価値という言葉だけ紹介させていただきます。


「資本コスト」とは

シンプル_薄ピンク

上場企業が守るべき企業統治の行動規範「コーポレートガバナンス・コード」というものがあります。

これに「経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握した上で、~」という記述があります。

この「資本コスト」ですが、詳しくは説明されていないのです。なので、各社が勝手な理解をしているのだとか。なんだそりゃ😲

資本コスト」とほぼ同じ意味の言葉たち
・割引率
・資本の機会費用
投資家の期待収益率(リターン)

先生は、2つ目の「投資家の期待収益率(リターン)」が一番正しい理解だろうとおっしゃっていました。

企業は、投資家が期待する収益率を出さないといけません。達成できないとどうなるのでしょうか?

物言う株主が出てきて経営陣を変えてくる

ちらほらニュースでも聞きますね。

投資家は配当だけを期待しているわけではありません。当然株の値上がりも期待しています。


「機会費用」とは

画像15

資本コストとほぼ同じ意味のリストの中に「資本の機会費用」という言葉がありました。

機会費用とは何でしょう?
「この言葉を理解していない人は多い」と先生は言います。

<機会費用>
ある経済活動に対して、選択されなかった最善の選択をしたときに得られる価値

と、講義では定義されていました。

例えば「行列の機会費用」。「並んでいるだけ」なら、なんらコストはかかっていないように見えますが、本当にそうでしょうか?

5時間並んだとして、もしその時間に時給1,000円でバイトしていたら5,000円得られていたかもしれません

当然、そのような考え方はフィクションだったりパラレルワールドだったりします。時給何万円の人もいるので人によっても違います。

この考えで企業を見た場合、「今は不景気だから、赤字にさえならなければいい」というような考え方があるかもしれませんが、これはダメです。

安易な思考停止にならず「もっと儲かる働き方」があるはず、と考えるべきなのです。

投資家の目線で見た場合、当然他社と比較をします。利益率3%のあなたより5%の他社を選びます。最低でも「=」でなければ投資をしてくれません。


CAPM(キャップエム、資本資産価格モデル)

画像14

ここは計算式を出さざるをえないです。目をそらさず学びましょう!

資本コストとほぼ同じ意味のリストの中に「投資家の期待収益率(リターン)」という言葉がありました。

これは株式の値上がり益も含めているので、推定するのは難しいです。

そこで出てくるのがCAPMという1つのモデルです。

投資家がみんな使うわけではないですが、企業サイドはまずこのCAPMを使用するのがデファクトスタンダードだそうです。

デファクトスタンダードの理由は「式が簡単だから」です。😲

画像17

リスクフリー金利は、一般的には長期国債利回りです。これは0.3%としましょう。すると、0.3%+β×6%になり、暗算できるレベルになります。

つまり、「βが決まれば期待収益率=資本コストがわかる」というわけです。

βの細かい話は統計学の話ですが、「データベースから取ってこれる」ということを知っておけば大丈夫です。

例えば、日経さんで「β(ベータ)値高位ランキング」というのがあります。

「え?じゃあ、このβが高い銘柄に投資すれば儲かるじゃん!

そう、「ハイリターン」です。でも、ハイリターンに伴うもの「ハイリスク」を忘れてはいけません。格言❹でしたね。


ファイナンスにおける「リスク」とはなにか?

シンプル_薄ピンク

ファイナンスにおいては、「決まっていないこと」をリスクと言うそうです。

「株価が落ちる」「倒産」=リスクなのではなく、「不確実」なことがリスクなのです。上がるのもリスクだし、下がるのもリスクなのです。

逆に、約束されていることはノーリスクです。「必ず1%」はノーリスクなのです。


企業価値評価手法とは

シンプル_薄ピンク

期待収益率以外では、投資家はどうやって企業価値を評価しているのでしょうか?

企業をいくらで買うか?というM&Aの世界TOB(株式公開買い付け)と関係します。

当然、企業価値評価にはいろんな方法があるのですが、今回は主流とされる「エンタープライズDCF法」を教えていただきました。

企業価値評価手法

紹介事例は「三井不動産による東京ドームTOB(1株1,300円)」でした。ちなみに当時の株価は1株900円前後です。

フローベースなので将来の儲けも見込んでいるのですが、幅はあります(931~1,356円)。1,300円はDCF法で出した上限に近い値です。

細かい式には目をつぶって、以下を覚えておけばよいと思います。

<これだけ覚えよう!>
①企業価値評価手法はいろいろある。
②主流は「エンタープライズDCF法」で、将来の儲けも見込む。
③DCFはFCFをWACCで割る。
 FCD:フリーキャッシュフロー
 
WACC(ワック):税引後加重平均資本コスト

素人目線だと、900円が1,300円になるなら「お!いいじゃん!」って思ってしまいますね。10年くらい前はみんなそんな感覚だったそうです。

でも、「もう、みんなわかってきている」ので、最近のM&Aはなかなかモメるそうです。


まとめ

シンプル_薄ピンク

格言自体は覚えられなくても、「資産価値と現在価値のてんびん」「今日の1円>明日の1円」「分散投資」「ハイリスク↔ハイリターン」「タダ飯はない」はイメージできましたでしょうか。

資本コスト」は、「機会費用」であり「期待収益率」でありました。

期待収益率はCAPMで計算するのがデファクトスタンダードで、βを知れば暗算できることもわかりました。


本日の学びはここまで。また来てください。👋


先生の著書を紹介します。

無題


この記事を書いている「高橋ひろあき」とは?


最後までお読みいただき、本当にありがとうございます! 楽しく、読みやすいnoteになるように今後もがんばっていきます。