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「書くことが好き」だから?安くてもいい??ライターの理想と現実、転職のタイミング

求職活動をスタートして1か月半が経過した。先日、マッチングサイトを利用して応募した正社員案件2社の、書類選考の回答期限が過ぎた。


残念な結果だった。

某月刊誌の編集兼ライター職、ビジネス系業界新聞の記者職――。前者については、私の興味関心とこれまでの業務のマッチング度が高く、媒体自体をとても気に入っていた分、しっかりと落胆した。後者はとりたてて興味ある業界ではなかったが、新聞という媒体の記者職&正社員というのは魅力的だった。実はこの会社、別の求人媒体の募集要項で「35歳まで」と明記しているのを見たことがあったので、「年齢大丈夫なの??」と思いながらもダメもとでに応募したのだった。オファーが来なければ応募していない。

が、やはり書類選考で落とされると腹が立つのが人情である。(笑)それならば、初めからはっきりと「弊社では40代以上の応募者・フリーの方はお断りします」と書いておけ!オファーメールよこすな!貴重な時間と手間を返せ!(笑)。まったく、こちらには遊んでいる暇はないのだ。


一方で、登録してあった派遣会社から、お仕事紹介メールがせっせと送られてくる。サイト上の個人ページには「スペシャルオファー」という欄に案件が掲示される。が、どうにもピンとこない、こちらの希望条件とはかけはなれた内容のものが多かった。

コーディネーター(おそらく彼女たちの多くも派遣社員かパートだろう)から、こうしたスキルや経験を無視したメールが配信されてくる理由は、推測するに以下3つ。

 ・年齢で自動的にふるいをかけ抽出されている。

 ・早く決めてしまいたい or 誰でもできる仕事を大量に自動的に撒いている。

 ・私の側で、個人データ、希望条件が適切に設定されていない。

たしかに、ここ最近は別の転職マッチングサイトを使用していたので、希望条件を細かく設定していなかった。個人データの部分を確認、更新し、マスコミ・出版以外の希望の条件を入力してから、少し自分で仕事を検索してみた。すると、その後から突然、外資系や海外関連企業の仕事の紹介メールが大量に届くようになった。今度はこちらの希望条件にマッチした物が多かった。(しかしながら、年齢制限があるかどうかは書かれていないので、実際に応募してみるまで分からない。)

派遣でも転職マッチングサイトでも、かくしてAIによる自動化が進んだ。今まさに、派遣スタッフに「お仕事紹介メール」を送っているコーディネーター達も、近い将来、その領域と職をAIに脅かされるだろう。何とも皮肉な、世知辛い時代になったと思う。



実は、この一か月の間、求職活動をしながら、行動と思考がまとまらない日々を過ごしていた。正社員の案件に応募しながらも、その一方で、「本当にこの業界、この仕事を続けて行っていいのだろうか?」と思う自分が、ずっといる。

先が見えない、行政や福祉が頼れない中で、年金もあてにならない私たちは、一部の特別な人々を除いて、一生働いて稼いでいくことが求められる時代に生きている。それは、私自身も例外ではない。子供の大学・大学院の学費、留学費用は高額だ。何歳まで生きるかわからないからこそ、老後資金も必要である。できれば、元気なうちは、夫婦で働いていきたいと考えている。

しかし、残業が4、50時間あっても「少ないほうです」などと堂々とのたまう企業がまかり通る出版業界で、いったい、いつまで健康で、心身を壊さずにやっていけるだろうか?という不安もある。この先、体か心を病んだその時に、その年齢で転職ができるのかどうか?とも考える。そもそも、この業界でフリーランスや業務委託のライターや編集者、カメラマンが多いのは、少ない予算で使い捨ての戦力をできるだけ多く確保して、チーム(編集部内部)総倒れを防ぐ目的もあるはずだ。紙媒体は何があっても期日スケジュール死守の世界だから、ある意味、仕方がないことかもしれない。それは、これまでの経験でも十分に分かっていたつもりなのだが、それでも往生際の悪い私は、たとえ「やりがいの搾取」をされていると気づいていても、この仕事をフリーのまま10年続けてしまった。「やりがい」中毒は身体の隅々をすっかり侵食して、「次号で辞めよう」「その次の号で辞めよう」と入稿される度に思いながらも、完成した版をこの手に取ってページを広げるころには時すでに遅し。辛かったことは水に流して、次の仕事の下調べやらインタビュー、取材に執筆etc.  目の前にある次の〆切に向けて嬉々として奔走しているのである。多忙は人の冷静な判断力と思考を奪う。

雑誌の編集者/ライターは、締め切りサイクルが早くキツイ仕事のわりに、報酬は低い職種だと言える。文字となって印刷される紙面の裏側には、インタビューや取材の下調べや勉強の為の読書等、活字に表れない膨大な投資時間がある。「好きでなければやってられない仕事」の代表格、フリーランスであればなおさらである。だからこそ、子育てという仕事への制約条件が消えた今後は、働いた分の適正報酬と保証がなければと強く思う。フリーランスという不安定な就業形態を卒業し、正社員もしくは派遣社員に転身して、この仕事を続けるのが良いだろうと考えたわけだ。

斜陽産業で財政的に厳しい出版社側は、間違いなく、体力ある若くて動ける人材が欲しいはずだ。女性であればなおの事、同じ程度のスキルならば、アラフィフ主婦ではなく、20~30代独身者あるいは子供のいない既婚者が好まれるだろう。もしも自分が採用決定者ならば、予算不足の制約条件下では、不本意ながらもそういう人材を優先的に選ぶはずだから。では、心の奥底では全て分かっていながらも、なぜわざわざ正社員に応募してきたかといえば、これらの「不誠実で、不都合な企業社会&業界の事実」を、この目で実際に確認してみたいという気持ちもどこかにあったのだと思う。(我ながら自虐的だな。)

50歳といえば、立派に人生の折り返し地点だ。紙の世界、雑誌作りに突っ走った10年間だったが、時代は移り変わり、紙媒体は淘汰され、気づけばWebメディアは玉石混交のカオスな世界だ。「本物のライター」と「ライターを名乗る素人」が無秩序に混在し、他人の記事を拝借しただけの「コピペ文」に「まとめサイト」等が氾濫し、あっという間に飽和状態となった。価格崩壊したwebライティング案件の非人道的な報酬単価、誤字脱字だらけの呆れるほど低品質な意味のない記事(とさえ呼べない文字の羅列)に遭遇する度に、この業界の暗く深い闇について考えさせられる。紙の業界が消えつつある中、この職業の本来の意味から遠く離れて、文字通り「writer=文字を打ち込む機械」に成り下がってしまえば、いずれ、この仕事も全てAIに取って代わられるだろう。紙だけではない。ウェブの世界でもライターの未来は既に明るくはない。

いずれにしても、今さらWebライターへと転身して、これまでと同等以上に稼ぐ為には、私は大人になりすぎた。もうすぐ50歳になる私は、書く物、スキル、読者、カルチャー、仕事の本質、何もかもが異なるWEBメディアの世界に今から飛び込もうとは、考えない。情報の海原に一瞬で飲み込まれては消える文章を、延々と書き続ける気力は無い。体力も続かない。刻々と目減りする時間を切り売りする以上、無駄なく手堅く地道に、現実を立ち回りたい。何より、私は編集ライターという「職業」に誇りを持っている。きちんと仕事に見合った適正報酬をいただきながら、これまでに積んだ知識・経験・スキル・教養を以って意味のある仕事をし、世の中にいくらか還元しながら、長く楽しく、心身共に健康で働きたいと願っている。


求職活動を始めるにあたり、できれば2か月以内に、たとえ希望に完全一致しなくても、何かしらの仕事を決めたいと考えていた。そろそろ、どこかで手を打ち、就労再開する目標期日が近づいている。

昨日、派遣会社から紹介された案件の中に、興味を引く仕事があったので、問い合わせてみた。今回はマスコミ・出版業界ではない。某大企業での海外関連の事務系専門職。新卒で入社した会社でしばらく担当した。長いブランクが気になったが、それなりのやりがいと需要はある手堅い仕事ではある。即、営業担当者から電話がきて、互いに詳細確認をした。どうやらこのまま紹介に進みそうだ。少し視点を変えて、業界・職種にこだわらず派遣で働きながら答えを探すのも、一つの方法かもしれないと思う。同時に、派遣社員として無理ない範疇で、出版業界の編集職を探したいという気持ちもまだある。好きな職種を優先するのか、QOLを優先させるか。価値観のせめぎ合いに悩みながら、今こそがライフシフトのタイミングであることも感じている。


これからの「生き方」と「幸せ」は? どんなふうに働き、どう生きたいのか?自分に問いかけている。これまでも考え続けてきたし、ぼんやりとは見えているが、完全な答えは、まだ出ない。

私は、十分には若くないけれど、まだそれほど年老いてもいない。夢も情熱もまだ人並みにはあるが、分別と現実的な知恵も、この身に纏ってしまった。そして、企業は、50歳以降の主婦を寛容に受け入れてはくれない現実がある。

子育ても終わりが見えた今、人生の折り返し地点に佇み、戸惑うばかりの日々である。



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