外国人彫師が語った日本のヤンキー青年の悲劇
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外国人彫師が語った日本のヤンキー青年の悲劇


友人に日本でタトゥースタジオを営む外国人の彫師がいる。
彼はもう日本に来て15年以上、日本語はペラペラで難しい単語や慣用句なども使うのだが、イントネーションが日本人の多くが想像するようないわゆるカタコトの日本語だ。

しかし彼は「この方が外人っぽくて面白いデショ?」なんて言っているので、本当は流暢に話せるところをわざとやっている節もある。
いつもユニークな発想をする彼ならではのジョークかパフォーマンスのようなものなのかもしれない。


そんな彼と何人かで話している時、友人の1人がタトゥーについて興味を示し、彼に色々な質問を投げかけていた。

「タトゥーってやっぱり痛いの?」

「ウーン、ボクは全然痛くないと思うヨ。でも痛いところは痛い。痛くないところは痛くない。」

「どこが痛いの?」

「やっぱり皮膚が薄いところは痛いだよね。あとあまりお肉がないところ。耳のうしろとか、みんな好きだけどやや痛いと思う。」

「へぇ〜、そうなんだ。」

「まぁ、普通に転んで弱いところが痛いかな。腕とか強いでしょ?」

「あーなるほどね!」

「まぁ、耳の後ろ、転んでもすりむけないけどね!ハハハハ!」


確かに。
彼は陽気に笑った。
もう1人の友人が聞く。


「ねぇ、じゃあ今まで来た人で変なお客さんとかいた?」

「変...。ウーン、変っていうか、昔おもしろい人がいたよ。ある青年だった。彼は日本のヤンキーだね。オラオラの人。彼はこう言ったの。

”もう、おもいっきりやっちゃってくださいよ!オネガイシマッス!”」


いきなり例のイントネーションでヤンキーのモノマネを始める彼。
勢いがあって、ちょっと巻き舌で、モノマネだけでもかなり面白い。
私達は笑いながら続きを聞いた。


「彼はね、腕にControl myselfって彫りたいって言ったの。"オレ、痛いのとか、マジ平気なんで、オナシャース!”ってこうやってね。」


彼のヤンキーモノマネはプロだった。
青年の真似をしながら、肩のあたりをバシバシと叩く。

「でも腕はそんなに痛くないんだよね。」

彼のモノマネに爆笑しながらも先ほど教えてもらった知識を持って相槌を打つ私達。

「そう。腕はそんなに痛くない。それで、OKって言って、デザインを決めて、スタートしたのね。」


彼は黙る。
うんうん、と聞く私達。
そして少し黙った後、彼は大きな声で笑いながら言った。


「多分、緊張だよね。彼、ボクがちょっと腕に触っただけで、びっくりして倒れちゃったの!ハハハ、Control myself、全然デキテナーイ!」


彼はバタリと倒れた青年のモノマネをしながら、笑った。
"コントロール"の発音が良すぎて、なんなら私達には一瞬なんと言ったかわからないくらいだったが、そのわざと話すカタコトのヤンキーモノマネと流暢な英語のダブルパンチに彼が普段言っていた面白さとはこれなのかもしれないと思った。
これを面白いであろうという発想でやっているんだとしたら、彼は相当周りを観察しているし頭がいいなと思った。


「すごいね、気絶するとかほんとにあるんだ。」
「ヤンキー面白い。伝説だわ、ある意味。」

涙目になって笑いながら友人たちが口々に言う。

「そう、だからね。多分タトゥーを彫る時に一番大事なのはリラックスの気持ちだね。」


青年もきっと緊張しながら勇気を出して、全然平気だと自分自身に言い聞かせて初めてのタトゥーを入れに行ったのだろう。
見知らぬヤンキーの青年には、笑い飛ばしてしまってちょっと申し訳ない気持ちになりつつも、彼の話口調も相まって私達はついつい笑わずにはいられなかった。

やはり笑い、ユーモアには、文化やその人のカラー、そしてちょっと人を嘲るようなブラックな要素が含まれている。
そしてその絶妙な配合をうまく扱える人は、ある意味言葉の使い手とも言えると思う。


ちなみに復活したヤンキーの青年に彼は「全然大丈夫だよ!今日でもいいしまた今度でもいいから、リラックスしてぜひもう一度トライしよう!」と言ったらしいが、青年は「そっすね!」と明るく答えながらも、その日は帰ってしまい、今のところまだ現れていないという。

彼がControl myselfできるようになるには、もう少し時間が必要なようだ。

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日野笙 / Sou Hino

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デザイン/文筆/コピーライティング | 2021年1月より毎日投稿始めました。身の回りの事、ふと感じた事、頭の中の物語などを書いています。死なない程度の気づきの毒と、寝る前にふっと笑えるくらいの薬を。何かしらのご依頼等はTwitterのDMにお寄せ下さい。