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依存症とメディア〜テレ東生配信〜

 2020年11月24日(火)

前回、大好評だった生闇鍋が2回目の生配信。

ちなみに前回はこのような記事でまとめていました

今回ゲストは2人で、
まず1人目はまんきつさん(@kitsukomz)
漫画家で、自身のアルコール依存症体験を元に描かれた「アル中ワンダーランド」が書店にて販売中。ブログが話題になりメディア出演やイラストレーター等で活躍中。

2人目は高知東生さん(@noborutakachi
俳優としてドラマや映画で活躍していましたが、覚醒剤と大麻所持容疑で逮捕。一度芸能界を引退したが、フリーとして芸能活動再開し、現在は依存症についての啓発や予防教育のイベントなどで講演活動を行なっている。

まずはまんきつさん。

 清野とおるさんと仲良しということで見ると一線を超えているのは判断できるのですが(笑)。
アルコール依存症になってたであろう時期の話は、インタビューやメディア出演でよく語っているので知っている方も多いと思うが、生闇鍋では生い立ちについても語っていた。

まんきつさんの幼少期は父親に殺されるかもと思うような日々だったようで、物が飛んでくるのも日常茶飯事だったようです。大人の顔色を伺って生活する子ども時代だったとのことでした。
 なんとなくですが、お父様もアルコール依存症?と思うようなエピソードで、当時はお母様も疲弊していたようです。このような育ちからも自分を大切にするということがよくわからなかったようです。

アルコール依存症になった原因として本人が思われているのが真面目な性格が災いし、漫画が思い通りに描けなかったことやブログの更新などと主婦業がプレッシャーとなり、寝る時間以外はほぼお酒を飲んでいたそう。緊張するから飲んで和らげよう等、動機付け(まんきつさん曰く、ドーピング)としてや気分転換で飲んでいたようで病理性は全く感じていなかったのだとか。

 ある時、イベントで登壇する際に緊張するからと飲酒をしてから挑んでしまったがために片乳を客席がいる中で出してしまったという珍事も…
 そんなお酒の失敗を繰り返していたため周りの声をきっかけに病院へ。医師からアルコール依存症の診断が下ったのですが、この程度で誤診を疑ったほど自認が難しかったようです。

アルコール依存症は自覚症状が無いことで、治療に向き合えない方が多いのですが、まんきつさんも何度もスリップ(再飲酒)を繰り返しながらも 今は我慢できない自分がいることに気づき、断酒に努めているそうです。

 家族とも現在は仲が良好だと話されていました。また、食生活にも気をつけるようになり、サウナなどで気分転換をするように行動が変化したそうです。

 それでも完治したとは言えず、まだ飲みたい気持ちは消えたとは言えないようです。一滴でも飲むと脳の自制が利かなくなると言われ、自力や意志の強さではどうにもならないものと言われています。ただ我慢するだけでなく、自分との向き合い方や不快感を得たときに我慢せず声に出す等の人に頼るということを学んで、現在は以前に比べて落ち着いて生活できるようになったそうです。

アルコール依存症を通して、自分の幼少期の体験や自分を大切にすることを改めて考えるようになったまんきつさん。日常の中で静かに依存症になっていく、特別な病気ではないんだなという感想を持ちました。

次は高知東生さん

 逮捕当時、ラブホテルで愛人と…という衝撃的なニュースで世間からさまざまなバッシングも受けてきた高知さん。

 現在は執行猶予期間も満了し、Twitter等を通して当事者の悩みや意識を発信することで、さまざまな依存症で苦しむ方たちへの社会的な孤立に対する啓発活動を行なっています。

 何より、生い立ちが壮絶だった高知さん。ご自身の著書でも詳しく触れているようですが、父親が任侠の大物親分で、母親はその愛人だったという地元で有名な「息子」という目で見られていたそう。祖母に育てられてはいたが、どこに行ってもそのイメージがついて高知さん本人はレッテルのように感じていたそうです。母親と暮らすようになってからも、夜を1人で過ごすような日が続いたり、タバコを買いに夜中起こされたりと大人への不信感が高まります。
 明徳義塾高校に進学し寮生活をしながら野球に打ち込む日々だったが、17歳の時に母親が自ら命を経ち、実の父親だと思っていた人とは別の人が父親だったことが判明。ただでさえ「息子」というイメージの一人歩きで1人の人として見られず、世間からは色眼鏡で見られていたが、大人に振り回されたことで更にアイデンティティの脆弱が孤独を更に作ります。

 人に頼れず男らしさや強さこそが自分に必要だと思い、孤独や寂しさを紛らわすように人脈を増やし、誰かに頼られる自分になることが自己実現と思っていた高知さん。地元でメンズクラブを立ち上げるなどしていたが、東京ではAVのプロダクションを経営。スカウトをきっかけに芸能活動を開始したようです。東京に住み始めてからは遊び仲間の中で、覚醒剤や大麻をを集団で使用していたようで、恐怖心はあったものの"こんなものも使えない男なのか"と思われるのが嫌で使用するようになったそうです。

 表面的には華やかな生活だったように見えましたが、孤独や不安を紛らわすことが出来ても解消されるわけではなく、欲求を埋めるツールだった薬物。使用しない時期もあったそうですが、サイドビジネスのエステの経営がうまくいかないことで薬物に依存するようになったそう。逮捕の際には心の底ではホッとしたという。

逮捕されたことで仕事も家族も失い、更にバッシングを受け孤独を突きつけられた高知さん。死を考える日もあったそうですが、刑を受けている人々の人生を聞いたりする中で自分の人生だけが不幸では無いんだと思ったそう。また、自助グループの人たちとの繋がりを深め、本当の自分を出せるようになり"生き直す"というアドバイスを受け入れたという。愛して欲しかった幼少期や過去の自分を振り返り、受け止め、現在の自分に対してのあり方も変わったそうだ。

 生闇鍋の企画であり司会である上出遼平さん@HYPERHARDBOILED)はメディアの立場にいながらも、依存症に対する報道の仕方に疑問を抱いている様子がひしひしと伝わった。

ダメ、ゼッタイ。という端的に否定する教育

罪を犯した人を排除するような社会のあり方

罪起こさなければならなくなってしまった背景へリアルな理解が深まらないメディア

依存症や障害、病気、LGBTQなどマイノリティに対する社会の理解の低さ

固定された価値観、優生思想を感じさせる日本の教育

山口達也や伊勢谷友介に対するバッシングのように、意志の弱い人がなるものという印象を与えるような報道への疑問視

 メディアが将来を語る番組はたくさんあるけど、現状をきちんと受け止めて話す(しかも作る側が)ことがほぼないため、上出さん自身も葛藤が見えているのがとても良かった。

保育士として私が思うことは、
児童精神科 佐々木正美先生「絶対受容」という言葉が頭をよぎります。

絶対受容とは相手の存在をどんな時でも受け止めることをさします。

近年、母親の在り方も多様化し、子供のすべてを受け入れることは母にとっての負担だと否定的な意見もあります。
 しかし、マズローの五段階欲求の法則では最も基本的な欲求が生理的欲求で、生命活動を維持するために不可欠な必要最低限の欲求として食欲・睡眠欲・性欲があげられています。

 性欲となれば青年期以降のと思われる方もいますが、小児性欲があるという精神科医 フロイトの著書の中では口唇期、肛門期、男根期(エディプス期)、性器期という段階で分類し身体成長と性的発達が複雑に絡み合って進展するとされています。
乳児期〜2歳くらいまでは口唇期とされている性欲。口から得る快楽・満足を経て信頼感を得たり、楽観的なパーソナリティを発達させると言われています。

 ここを掘ると長くなってしまいますので、割愛させていただきますが、欲求を受け入れてもらえる経験が安全や信頼を発達させるのです。
 ゲストお2人の共通点は「大人の顔色を伺って子ども時代を過ごした」というところでした。相手の欲求を受け入れようとしてしまう現れに思います。自分の欲求を殺して生きてきたがために、人ではなく物に依存するようになったように感じてなりませんでした。

 真面目に生きようとした結果として、依存症に傾いてしまった。
そんな感想を抱いた生配信でした。
上出さんには企画の期待をしています!

お掃除係の実習を体験した保育士さん、きちんとした指導・教育を受けられずも頑張る支援者さん…など現場に困り感を持っている方へサポートすることで、子どもたちに還元されるものがあるのではと信じています。よろしくお願いします。