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小説『君と明日の約束を』

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2021年5月の記事一覧

『君と明日の約束を』 連載小説 第七十一話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第七十一話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
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 ミツ君には詳しいことは分からない、と言ったけれど、先生に全て教えてもらっていた。ほとんどの手術が成功しているけど、一部では術中に亡くなった事例もある。それに、四肢の麻痺、など後遺症が残った例も少なくな

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『君と明日の約束を』 連載小説 第七十話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第七十話 檜垣涼

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 病気に罹ってから、私はお母さんにできるだけ学校であった話を伝えるようにしていた。それは初め、私が病気に罹っているせいで友達とうまくいっていない、とお母さんに思わせないためだったのだと思う。
 喘息に病

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『君と明日の約束を』 連載小説 第六十九話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十九話 檜垣涼

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 でも、そんな楽しい時間はすぐに過ぎてしまう。数週間して、私はやっと本を読み終えた。

 そして次の日から、その男の子は私の病室に来なくなった。
 看護師さんに聞くと、何となく口を濁された。幼いなりに、

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『君と明日の約束を』 連載小説 第六十九話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十九話 檜垣涼

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「読んでみて!」

 キラキラした目をこちらに向けるその男の子の勢いに負けて、私はゆっくり一ページ目の文字を目で追っていった。

 しばらく読んで、分からない文字が来た時に顔を上げた。隣には、嬉しそうに

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『君と明日の約束を』 連載小説 第六十八話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十八話 檜垣涼

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 その子が現れたのはそんな時だった。彼は同じ年齢の男の子で、お父さんが入院することになったらしく、そのお見舞いで病院を訪れたらしい。

 彼が私の病室を覗いたのはたまたまだったのだろう。後から聞いて

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『君と明日の約束を』 連載小説 第六十六話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十六話 檜垣涼

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 鋭い声に、思わず伏せていた目を慎一に向ける。慎一はまっすぐ射抜くような視線で僕を見ていた。

「うぬぼれ?」
「そう。結局するかどうかは自分なんだから。それに、患者の体調を管理するのは医者。慎一は

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『君と明日の約束を』 連載小説 第六十五話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十五話 檜垣涼

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 二人とも布団に入ったのを確認すると慎一がリモコンを操作して、明かりを消した。遮光性の高いカーテンのおかげで部屋の中は真っ暗になる。

「慎一、起きてる?」
「ああ」

 自分から話しかけたのに、言

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『君と明日の約束を』 連載小説 第六十四話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十四話 檜垣涼

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「ひゃっ」

 中から小さな悲鳴が聞こえた。驚き、見ると、声を出したのは振り返った日織だった。

 怯えた顔で僕を見る彼女が、少し華奢に見えたのは気のせいではないだろう。
 彼女は僕を見ながら焦った

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『君と明日の約束を』 連載小説 第六十三話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十三話 檜垣涼

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 梅雨の名残か、鬱屈とした厚い雲に覆われた天気の中、僕は学校へ向かう電車に乗っていた。時間はいつでもいいけど十時ごろと言われていたのでその時間に合わせていつもより遅めの電車に乗っていた。
 他の学校

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『君と明日の約束を』 連載小説 第六十二話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十二話 檜垣涼

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「それをスマホで送ったんだけど」
 慎一が目を眇める。
「ごめん」

 慎一はふっと笑った後、わざとらしい怠そうな声で続ける。

「なんかまた七三が面倒な仕事押し付けたらしい。学校の職員室に印刷機あ

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『君と明日の約束を』 連載小説 第六十一話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十一話 檜垣涼

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 その単調な音に体が押しつぶされるような気持ちになる。
 みんなが何かと向き合う音のない数秒間。どんな時でも僕から目を離さないお母さんが、僕のことなんか目に入っていないみたいにお父さんに話しかけている。

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『君と明日の約束を』 連載小説 第六十話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第六十話 檜垣涼

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 静かな病院の廊下に、僕とお母さん二人の足音だけが響く。いっそのこと音がなかったらいいのに、いろんなところから足音が聞こえるみたいで、気持ち悪い。

 進む先に、一つ光が漏れている部屋があった。お父さん

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『君と明日の約束を』 連載小説 第五十九話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第五十九話 檜垣涼

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 気持ちが混乱したまま時間を過ごしていた。

 彼女に会わせる顔がないと思うのは、自分の都合のいいように解釈しているだけなのかもしれない。でも、彼女と会う資格がないことは明らかだった。

 というか

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『君と明日の約束を』 連載小説 第五十八話 檜垣涼

『君と明日の約束を』 連載小説 第五十八話 檜垣涼

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「あ、いや……ごめん。でも本当に大丈夫だから。絶対。だから、ね、行こうよ」

 小説の話をして、楽しくなって。そんな興奮が全て彼女の体を蝕む原因になっていたという可能性は否定できない。僕が彼女の手伝

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