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宵闇やドヴォルザークに導かれ

宵闇が秋の季語(仲秋)です。ドヴォルザークは、「遠き山に日は落ちて」の歌い出しで知られる唱歌の作曲家。すっかり日本人に親しまれていますが、オリジナルは交響曲9番「新世界より」の第2楽章のメロディです。

引っ越してもうすぐ5ヶ月になるこの町では夕方5時に、「遠き山に日が落ちて」のメロディが町内中に鳴り響きます。初めは驚きましたが、随分昔からの慣習らしく町の人は何も思っていないみたいです。

町中と書きましたが、平成の大合併で田舎ですが面積は広大です。全ての町で聴けるのか、元々のこの町だけなのか、いろいろ疑問が浮かびます。そのうち市役所に聞いてみようと思ってます。(なんか嫌がられそうな気もしますが…)

ドヴォルザーク作曲「新世界より」とは?

ついつい「より」を言い忘れて「新世界」と呼んでしまうこともありますが、うっかりそんな呼び方をしては「どこに通天閣があんねん!」と突っ込まれてしまいます。正しく「新世界より」と呼びましょう。

ドヴォルザーク(1841-1904)はチェコの作曲家ですが、ヨーロッパで名声を得ていた彼は、1891年にアメリカ、ニューヨーク・ナショナル音楽院の院長として破格の高給で招かれます。アメリカネイティブの音楽や黒人音楽にからも大きな影響を受けた彼が、帰国後発表した作品のひとつが「交響曲第9番 新世界より」(1893)です

「新世界より」の第2楽章は、「家路 Goin' Home」というタイトルで、ドヴォルザークの弟子でもあったウィリアム・アームズ・フィッシャーによって合唱曲として編曲されます。1922年の発表と比較的近代の作品であるにもかくぁらず、この曲は多くの黒人民謡のように勘違いされ、受け止められます。それは「新世界より」が黒人霊歌の影響を受けて、作られた作品であることを如実に示すエピソードといってもよいでしょう。

その後、1930年代に日本に紹介され、多くの日本語詞がつけられます。もっとも著名なのは「遠き山に日は落ちて」の歌い出しで始まる堀内敬三氏の作ですが、他にも宮沢賢治氏なども詞をつけています。

近年では、本田美奈子さん、平原綾香さんも作詞、レコーディングしています。

日本で親しまれている海外の民謡

ちょっとテーマから逸れますが、海外の曲でありながら日本人にとても親しまれている曲があるので、そちらにも触れておきましょう。

卒業式などでお馴染みの「蛍の光」。別れを偲ぶ曲としてすっかり定着していますが、元はスコットランド民謡の「オールド・ラング・サイン(Auld Lang Syne)」です。オリジナルは別れの歌でなく、年始、披露宴、誕生日などの節目となるおめでたい席で歌われる歌だそうです。

ヨーロッパ、アメリカと経て日本に伝わるうちに、節目の曲という習慣だけが日本に伝わったのかもしれませんね。日本語詞は、稲垣千頴氏によるもので中国の故事に由来するそうです。

スーパー、デパートの閉店の曲は蛍の光ではない

卒業式以外では、お店の閉店時のメロディという印象もあります。でも、実は閉店時の曲は「別れのワルツ」という「蛍の光」とは別の曲です。

1940年のアメリカ映画「哀愁」で恋人たちが別れのダンスを踊るシーンで使われた曲です。ワルツというのは3拍子のダンス用の曲のこと。ズンチャッチャッで拍子が合えば3拍子です。「蛍の光」は4拍子です。別の曲というよりは編曲ですが、別のタイトルもついていることですし、区別しておきましょう。

閑話休題

ちょっと余談が長くなりました。ドヴォルザークが鳴ったからそろそろ暗くなるよ、という、それだけの意味です。ただ、ドヴォルザークのメロディは春でも冬でも5時になる時報のようなもの。そのメロディを擬人化して宵闇という自然現象も動物か何かのように例えているところが、ちょっとしたいたずら心です。

チェコの大作曲家ドヴォルザークが、夜の妖精の名前のような気がしませんか?そんな雰囲気が出せれば成功なのですが…

本日も長々とおつきあいありがとうございました。5ヶ月第2楽章の1部だけ聴いてきたので、久しぶりに通して聴いてみたくなりました。

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