早坂恭一

宮城県出身。薬の営業したり、イギリスで勉強したり、NGOでミャンマーにいたり。 クラリ…

早坂恭一

宮城県出身。薬の営業したり、イギリスで勉強したり、NGOでミャンマーにいたり。 クラリネットとニャンコをこよなく愛しながら、日々奮闘中。

記事一覧

雨と焔

数日前から、猛烈な暑さが鳴りを潜めている。 窓の外の曇天はいつしか雨に変わり、雨季の訪れを濃厚に感じさせる涼しげな風が吹き始める。気温もようやく“まとも”と呼べ…

早坂恭一
3年前
5

闇に沈んで

謎 夜の停電は厄介だ。陽が落ちて気温が日中よりも低いのはいいが、けして涼しさを感じるわけではないし、騒音からジェネレーターを稼働させるわけにもいかず、真っ暗闇の…

早坂恭一
3年前
2

言葉は暑さと決意に消えて

酷暑 暑い…。雨季はもうすぐというこの時期、朝から厳しい暑さが続く。 日中は、エアコンの設定温度22℃で何とか耐えられる室温になり(ミャンマーでデフォルトの16℃には…

早坂恭一
3年前
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皐月〜されど眦はゆるまず

苦悶 日曜月曜と、2夜連続の停電であった。23時頃に暗黒世界に落ちては、朝6時まで戻れない。 夜の気温が30℃近くあるこの時期、じりじりとした暑さに包まれ、汗まみれで夜…

早坂恭一
3年前
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「夏のサイン」に

1つ1つ 月曜は正月連休の最終日。月曜だが休日で、休みでも勢いよく仕事に出るという、1周回る感じのオープニングとなった。それにしても、毎日本当に暑い。 朝からDream …

早坂恭一
3年前
1

年越し狂騒曲

沈黙 13日から、ミャンマーは正月休みに入った。 16日が大晦日で、17日が正月である。本来ならば、街のあちこちにスタンドが設営され、ホースを構えた人々が見境なく水をか…

早坂恭一
3年前
3

“揺らぎ”

稲光 日曜夜は雷雨となった。短い間隔できらめく稲光と激しい雨が続き、さて来るかと思った矢先に停電となった。この時期にしては珍しい降りようと、落雷の刹那に「輝き」…

早坂恭一
3年前
4

鈍色の下のキャンバスに

定点観測 4連休明けの火曜は、近くのショッピングモールへ。 外出時の動線を極力短くしながら物資調達を済ませることができ、しかもカード決済で現金の節約が叶い、市内の…

早坂恭一
3年前
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種蒔人

夏へ ミャンマーは26日から4連休に入った。 春めく日本とは違い、盛夏に向かって日に日に暑さは増し、日中は40℃近くになる。朝も洗濯物を干しに出るだけで汗が滲み、建屋…

早坂恭一
3年前
7

戦時下にて

下り坂 沈鬱な面持ちで、車窓に流れていく街の様子を眺めていた。 路上には土嚢や瓦礫が散乱し、“お手製”のバリケードが所々で道を塞ぐ。いつか映画で観た市街戦の光景だ…

早坂恭一
3年前
5

拝啓 “あの日”の君へ

銃声 緊張の夜が明け、月曜を迎えた。 昨夜、ヤンゴン市内各所で銃声が鳴り響き、私の耳にもその音は突き刺さった。 「ついにここまで来たか…」 衝突の激しい地域からは…

早坂恭一
3年前
6

「春」

惨劇の月またぎ 2月28日、クーデター発生月の最終日は、多くの犠牲とともに締めくくられた。 SNSのタイムラインは、報道機関では掲載不可であろう凄惨な現場写真や映像と、…

早坂恭一
3年前
6

「修羅の国」の光

222 深夜から朝にかけての回線遮断は、週明け22日の月曜に限り、昼の12時まで続いた。 この日はミャンマー全土で大規模なデモが計画されていたため、いつもより延長し、そ…

早坂恭一
3年前
7

何のために、誰を救うために

ニュー・ノーマル 今週から新たな生活リズムが追加された。午前1時から9時の間、ネット回線が遮断され、それが月末まで継続されるらしい。 国民の健康を考慮した“官製デ…

早坂恭一
3年前
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流れる星は生きている

先週の今頃は「情報の孤島」にいた。 妙な静けさに包まれながら、ダウンロードしておいたkindleの本を読み、楽器を吹いて、世界から取り残された感覚を生きていた。 それ…

早坂恭一
3年前
6

Pray for Myanmar

2月6日10時過ぎから、ヤンゴン市内ではネットが不通となった。通信は電話のみに限られ、とんだデジタルデトックス生活に突入する。 いつまた途絶えるやも知れぬ、世界との…

早坂恭一
3年前
11
雨と焔

雨と焔

数日前から、猛烈な暑さが鳴りを潜めている。
窓の外の曇天はいつしか雨に変わり、雨季の訪れを濃厚に感じさせる涼しげな風が吹き始める。気温もようやく“まとも”と呼べる水準にまで落ち着き、おかげでエアコンの設定温度も26℃で十分である。

爆発
ここ数日、ミャンマーでは爆破事件が相次いでいる。
山間の地域では計画的な空爆が。また、ヤンゴンを含む各都市でも、有名なショッピングセンターや町の中心部で爆発が報

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闇に沈んで

闇に沈んで


夜の停電は厄介だ。陽が落ちて気温が日中よりも低いのはいいが、けして涼しさを感じるわけではないし、騒音からジェネレーターを稼働させるわけにもいかず、真っ暗闇の中で耐えるしかない。
ネットも切れて、予定していたオンライン講座も諦める。漆黒に沈む土曜の夜。静けさと暑さの中、ぼんやりすることすらままならない時間を過ごす。

雨が降り出すと、なぜか停電になる。不可解すぎるこの連関に興味を持ち、以前誰かに

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言葉は暑さと決意に消えて

言葉は暑さと決意に消えて

酷暑
暑い…。雨季はもうすぐというこの時期、朝から厳しい暑さが続く。
日中は、エアコンの設定温度22℃で何とか耐えられる室温になり(ミャンマーでデフォルトの16℃にはしないようにしておく)、少しでも外に出れば、強烈な日差しに溶けそうになり。

時折やってくる「お約束」の停電に舌打ちをしながら、早期の復帰をひたすら祈ることの繰り返し。しかし、睡眠時間帯の12-6時に当たると、もはやなす術はない。それ

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皐月〜されど眦はゆるまず

皐月〜されど眦はゆるまず

苦悶
日曜月曜と、2夜連続の停電であった。23時頃に暗黒世界に落ちては、朝6時まで戻れない。
夜の気温が30℃近くあるこの時期、じりじりとした暑さに包まれ、汗まみれで夜中に目を覚ます。ジェネレーターも動かせず、寝るに寝れない数時間が続く。さらには、夜間のインターネット遮断が解除されたという噂の検証も、wifiの固定回線が動かないため不可。何かとギブアップな夜を過ごした。

疲れがとれないまま朝を迎

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「夏のサイン」に

「夏のサイン」に

1つ1つ
月曜は正月連休の最終日。月曜だが休日で、休みでも勢いよく仕事に出るという、1周回る感じのオープニングとなった。それにしても、毎日本当に暑い。

朝からDream Trainへと出かけ、キャリア教育の初回第2部(前回と違うグループが対象)を実施した。
構成には一工夫加えてみたものの、受講者の年齢が下がったこともあったのか、リアクションは薄い。事前準備も含め、段取り自体は改善したが、今度は本

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年越し狂騒曲

年越し狂騒曲

沈黙
13日から、ミャンマーは正月休みに入った。
16日が大晦日で、17日が正月である。本来ならば、街のあちこちにスタンドが設営され、ホースを構えた人々が見境なく水をかけ合い、道を歩いていても方々から問答無用で「水攻め」にあうという祭りが展開される。

しかし昨年に引き続き、今年もその様子はまったく見られない。地方の一部では行われていたようだが、ヤンゴンではそれらしき雰囲気は露とない。
いつもなら

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“揺らぎ”

“揺らぎ”

稲光
日曜夜は雷雨となった。短い間隔できらめく稲光と激しい雨が続き、さて来るかと思った矢先に停電となった。この時期にしては珍しい降りようと、落雷の刹那に「輝き」を放つヤンゴンの街並みを、しばし眺めていた。
すでに23時を回っていたため、諦めがつくのも早かった。天からの「消灯」の仰せと受け止め、そのまま眠りに就いた。

目を覚ませば、朝から曇天。そのおかげで、暑さはかなり押さえ込まれている。だいぶ過

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鈍色の下のキャンバスに

鈍色の下のキャンバスに

定点観測
4連休明けの火曜は、近くのショッピングモールへ。
外出時の動線を極力短くしながら物資調達を済ませることができ、しかもカード決済で現金の節約が叶い、市内の日常の定点観測も可能になるという点で便利な場所だ。先週と比べると、利用可能な出入り口と利用客が増えた印象を受ける。

長らく機能していなかった、入り口横のATMも復活。待ち時間10分ほどで出金を済ますことができた。単なる偶然かもしれないが

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種蒔人

種蒔人

夏へ
ミャンマーは26日から4連休に入った。
春めく日本とは違い、盛夏に向かって日に日に暑さは増し、日中は40℃近くになる。朝も洗濯物を干しに出るだけで汗が滲み、建屋の1Fと2Fの温度差に驚く。

この状況下、21時から半日の停電は痛い。
ネットの不通に加え、とてつもない寝苦しさ。水シャワーを試みるも冷水は出ず(外付けタンクにためてある水を使うため、外気温で“ぬるま湯”となっている)、あまり効果は

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戦時下にて

戦時下にて

下り坂
沈鬱な面持ちで、車窓に流れていく街の様子を眺めていた。
路上には土嚢や瓦礫が散乱し、“お手製”のバリケードが所々で道を塞ぐ。いつか映画で観た市街戦の光景だなと、まじまじと見れば見るほど薄れゆく現実感に、月曜から妙な気分になった。

前日の日曜、ヤンゴン市内で過去最多の犠牲者が発生した。
加えて、ヤンゴンの複数の地区に戒厳令が発出され、さらにはモバイルネットワークも遮断。自宅兼事務所の固定回

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拝啓 “あの日”の君へ

拝啓 “あの日”の君へ

銃声
緊張の夜が明け、月曜を迎えた。
昨夜、ヤンゴン市内各所で銃声が鳴り響き、私の耳にもその音は突き刺さった。

「ついにここまで来たか…」

衝突の激しい地域からは距離をとってきたものの、向こうから迫ってきた。

どうやら同時間帯に、市内12地区で行われていた模様。特定の標的を狙っているものではなく、威嚇が目的のようであった。
しかし、“まさか”はあり得る。跳弾も見越して、窓から離れた場所に寝る

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「春」

「春」

惨劇の月またぎ
2月28日、クーデター発生月の最終日は、多くの犠牲とともに締めくくられた。
SNSのタイムラインは、報道機関では掲載不可であろう凄惨な現場写真や映像と、悲痛な声で埋め尽くされた。これほどつらい月末は、過去にあったであろうか。

翌月曜からは3月へ。

「あの日」からちょうど1ヶ月。昨日の悲劇に嘆息しながら迎える朝は、その心の写鏡か、やたら湿気っぽい。
2月いっぱいと目された深夜から

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「修羅の国」の光

「修羅の国」の光

222
深夜から朝にかけての回線遮断は、週明け22日の月曜に限り、昼の12時まで続いた。
この日はミャンマー全土で大規模なデモが計画されていたため、いつもより延長し、その勢いを削ぎにかかったと考えるのが妥当であろう。

なぜこの日に一斉デモなのか。
それは、同じ数字が並ぶ日付(今回なら2)に特別な意味を見出し、契機としてきたミャンマーの伝統によるものだ。1988年の民主化運動の時も、行動を起こした

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何のために、誰を救うために

何のために、誰を救うために

ニュー・ノーマル
今週から新たな生活リズムが追加された。午前1時から9時の間、ネット回線が遮断され、それが月末まで継続されるらしい。

国民の健康を考慮した“官製デジタルデトックス”なのだろう。
特に最近はFacebookの利用時間も増えているし、夜も物騒になっているから、深夜くらいはネットを離れたほうが健康的という配慮に違いない。そういえば、ナチスも国民の健康管理にはとても敏感だった。

そんな

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流れる星は生きている

流れる星は生きている

先週の今頃は「情報の孤島」にいた。
妙な静けさに包まれながら、ダウンロードしておいたkindleの本を読み、楽器を吹いて、世界から取り残された感覚を生きていた。

それから1週間。この間の経緯を綴るだけで本が1冊書けようかと思えるほど、目まぐるしく世の中が動いていった。

月曜には、正式な夜間外出禁止令(20時から4時まで)と、公共の場における5人以上の集会禁止令が発出された。
感染防止対策とはま

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Pray for Myanmar

Pray for Myanmar

2月6日10時過ぎから、ヤンゴン市内ではネットが不通となった。通信は電話のみに限られ、とんだデジタルデトックス生活に突入する。
いつまた途絶えるやも知れぬ、世界との接続が保たれている間に、世界が一変した月曜の早朝から今までの顛末を、思うさま書いてみる。

未明の激震
2月1日早朝、国軍によるアウンサンスーチー氏と与党幹部拘束のニュースに、慄然と飛び起きる。
政権転覆、非常事態制限、空港の閉鎖が次々

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