四角いマットの人食い狼(8)

小林の車──リブレのステッカーが貼ってある黒のワンボックスカー──が出ていくのを見てから、古川は神野に向き直った。

「社長。ウルフは良いレスラーです。しかし、ハラダほどじゃありません。もともとリブレを潰せれば良かっただけの話が、ずいぶんとややこしくなっていませんか」

 神野は飲みさしのコーヒーカップを持ち上げ、なにが珍しいのやらしげしげと見つめながら言った。

「古川よォ。お前、俺と組んで何年

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ライク・ア・ヘル・エッジ・ロード(1)

頭をふっ飛ばされた死体が出たのは、今日六人目だった。
 小さな家だ。メキシコの乾いた風が砂塵を巻き上げて、外から窓を叩いた。
 そこに真っ赤な血がべっとりと貼り付いた。七人目のクズ野郎の脳とのシェークだった。

「頼む……助けてくれ! 俺がなにやった?」

 男はぴいぴい泣きながら跪き、無様な命乞いをはじめた。誰でもそうだ。多分同じ状況になればそうするだろう。

「何やったって……わかってない? 

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四角いマットの人食い狼(7)

──同時刻、神プロ応接室にて。

「俺は結構だがねェ」

 古川は思わずその言葉に──他ならぬ自らのボス、神野の──耳を疑った。

「ローン・ウルフは、いいレスラーだ。やりてェかやりたくねェかでいやあ、やりてェ。ハラダも世話ンなってんだから、そちらさんにも華を持たせてえしな」

 小林は胸をなでおろしたように見えた。──一方の古川の心中は穏やかではない。神野は負けない。強すぎるのだ。ローン・ウルフ

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四角いマットの人食い狼(6)

──三十分後。
 リブレ事務所前の喫茶店『スターロード』にて。

「俺は嫌だね」
 阿久津はそう言い切った。コーヒーの湯気が虚しく漂う。
 小田島は口内にコーヒーではない苦味が広がるのを感じていた。
 阿久津ことローン・ウルフは──今はオフ用の簡易マスクを被っている──ハラダと戦いたいと言い切った。

「君はハラダと戦って勝ちたいのか」

 我ながら間抜けな質問だ、と小田島は思った。当たり前だ。レ

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四角いマットの人食い狼(5)

ハラダの会見と同日。リブレの事務所にて。

「小田島ァ……なんでこんなことになった?」

 粗末なスチール製のデスク、それが社長の執務スペースの全てだった。
 そこに頭を抱えている男が一人。抑えられた手の隙間から地肌が覗き、額から禿げ上がっているのがわかる。
 小林はとにかく小心な男であった。

「ハラダをうちで飼いならせるかよ」

 もともと、別の団体で燻っていた中堅レスラーだった小林は、数人を

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天使が街にやってきた(前編)

「君も隅に置けませんねえ」
 ニタニタと笑顔でそう言って笑えあえたのなら。それは幸せなことだっただろう。
 残念ながら、その相手だった男──サイにはそういう感情はない。むしろ憂鬱そうな表情だ。オールドハイト、セントラルパーク。暖かい季節だ。ベンチに座り、新聞や本、タブレットで文化を摂取する──白い雲が伸びて消える。
「いつの間に同棲なんか始めたんです? 仕事ばっかりだと思ってましたけど、やることや

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Twitter最強自動ツール

Twitter最強自動ツール

●僕は、自由が欲しくてネットで副業を始めたはずなのに、
 気が付けば作業に追われてばかりで自由とは程遠い毎日を送っていました。

●僕は、色々ありすぎて何をやればいいか分からなかったので
 誰でも簡単に稼げると噂のサイトアフィリに挑戦しましたが、
 そもそも更新する内容にぜんぜん興味が無かったため
 少しずつ少しずつモチベーションが下がっていきました。

●僕は、な

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ブチ 第17話 「テレビの情報」

第二章
私とブチのパラダイス篇

ブチ(オス 雑種)と片田舎に住む少女の物語
この物語は、私が以前Twitterで少しずつ書いていたものです。一回の文章はTwitterの制限文字数内で収まるようになっております

第16話 「パラダイスの邪魔者」から、本邦初公開の内容となっております!!
noteでブチに初めて出会った方も、Twitterでご覧になっていた方も必見です^_^

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スキ、ありがとう、スキ
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ブチ 第16話 「パラダイスの邪魔者」

第二章
私とブチのパラダイス篇

第16話 「パラダイスの邪魔者」は、本邦初公開の内容となっております!!
noteでブチに初めて出会った方も、Twitterでご覧になっていた方も必見ですよー

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土手は「私とブチのパラダイス」

なのだけど、

そのパラダイスには、たまに、邪魔者がいる

それは

牛 🐄

ごく稀に牛が放牧されている事がある

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スキ、ありがとう、スキ
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四角いマットの人食い狼(4)

一週間ほどしてから、ゴッドプロレス側は緊急の記者会見を開いた。帝国プラザホテルの鶴の間──様々な芸能人が華やかな式を執り行ってきたこの場は、まるで戦いを始める前のようにピリピリとした空気が支配していた。

「ハラダ選手! 説明してくださいよ!」

 日本スポーツの記者が気勢をあげる。

「言ったとおりですよ。自分は明日からリブレに移籍して、そこのベルトを獲ります」

 天井に手がくっつくのではない

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