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フウフ生活

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夫婦ってなんだろうね、と思う。私は国際結婚です。
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音楽畑の友人

音楽畑の友人

シンガーソングライターの友人がいる。割と近所に住んでいて、同い年で独身でネコと暮らしている。気ままに夜更けまで起きていて、会うのはいつも彼女が起きたばかりの昼頃だ。

彼女とは不思議な縁で、知り合ったのはもう25年ほど前のトーキョーだけど、当時は数回会っただけ。それも二人だけではなかったから、何を話したか覚えていない。

彼女は、私の元旦那さんの歌姫である。

そう、私には元旦那という人がいる。正

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フウフの現状

フウフの現状

「で、結局、今どうなのよ」である。
我々フウフのことだ。
知らない方にかいつまんでお伝えするならば、昨年1月に夫が突然家を出て行って、自分で近所にアパートを借りて別居生活となり、週末だけ会うようになり、話し合いをしだんだん週に何度か泊まるようになり、私の病気がわかり毎日家に泊まるようになり、私の入院中は毎日夫が子供達を見てくれ、今年になって私が仕事復帰し夜早く寝るようになってからは、夫の仕事が忙し

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ワサビの子

ワサビの子

 2023年1月の終わり、よく晴れたある日、帰ってきたら旦那がいなくなっていた。
 一人、家にいた高校生の娘は、泣いていた。
 「パパ、行っちゃった」と言って、さらに涙をこぼした。
 家の中に、彼の荷物は綺麗サッパリ無くて、パソコンを置いていた巨大な黒い机だけがポツンと残されていた。
 
 その前日、娘と夫の3人で、ピザ屋さんに行った。いつもと同じだった。娘の頼んだデザートにアルコールが効きすぎて

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愛について

愛について

 愛ってなんだろう。わたしは、夫のことを愛している、と、思う。同時に、憎らしくて憎らしくてたまらない。離婚すればいいじゃん、と何度も考えたし、友人にも言われる。でも、離婚して全て終わりでもない。いや、終わるんだろうか。あんなこと言われた、こんなことされた、あるいは何もしてくれなかった。嫌な思い出の一つ一つも、離婚すれば全て水に流せて、あとはキラキラとした思い出ばかり残るんだろうか。
 そんなとき、

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静かなひと

静かなひと

 わたしたちは日本で出会った。フランス人の夫は出会った頃から静かだった。わたしは、うるさい人より静かな人の方が好きだから、まぁ良いかと思っていた。
 自分の意見を言わないのも、思慮深いように見え、『まだ日本語が不自由だからかな』と思っていた。出会った時から、私たちは日本語で会話していた。

 結婚して15年以上経った今も変わらず、夫は無口だ。
 フランス人同士で話している時、おしゃべりで社交的な義

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夫が出て行った夜

夫が出て行った夜

 夫が出ていったその夜、わたしは全く眠れなかった。
 さっきまで普通だと思っていたのに、布団に横になると自分がどろりと溶けて地球の奥の方に吸い込まれていくような嫌な気持ちがして、目を閉じることができない。
 明日、いや数日後に何もなかったかのように帰ってくるかもしれない。
 でも、それにしては荷物をまとめたのがやけに念入りすぎる。自分で買った食器、わたしがあげたプレゼント、歯ブラシ、歯医者の診察券

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被害者から加害者に

被害者から加害者に

 被害者だったわたしが、加害者になった。そう、加害者になったのだ。
 夫に傷つけられたわたしは、夫婦でセラピストのところに行った。ズタボロになったわたしを見て、彼女は夫を厳しくたしなめた。
「勝手に、一方的に片方の家族が頻繁に来るのは、国際結婚のいかんに限らず、立派な離婚理由です」
 その言葉は、夫に響いたようだった。わたしがいう言葉は届かなかったのに、先生の言う言葉は届くらしい。涙が溢れて止まら

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帰国しよう

帰国しよう

 『タヒチで君は幸せそうじゃなかった』、と夫は言う。
 『ハネムーンで人気のタヒチなのに、君は幸せではなかった』、と。
 ハネムーンは所詮1週間そこらの夢幻。言葉もわからないまま、子供を育てながら10年以上も続くハネムーンなんて、そんなの悪夢だ。
 夫は続ける『だから日本に帰ろう、と思った。』
 『いや、もう何年も前から、君の幸せのために、日本に帰ろうと言っても、君は了承しなかった。』

 わたし

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ある日の思い出

ある日の思い出

 いい嫁になろうと、頑張りすぎたのだ。誰に頼まれたわけでもないのに。

 義父母が食べてくれそうなご飯を作る。『お腹がいっぱいだから』と、ほとんど口をつけずにそのまま生ゴミになる。お腹いっぱいだからと言ったばかりなのに、子供たちの目の前で、チョコレートをぽりぽり齧る。

 ご飯を作るより、掃除をするのが好きな義母。わたしと正反対なのだ。ある日、こんなことを言われた。「あなたは、どうしてそんなに毎日

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