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出戻り小学生

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根っからの学校嫌いが大人になって、まさかの学校で働くことに…。 現場における謎と不思議、笑いと感動に溢れた日々の記録。 今でも、戻れるのなら戻りたい…。
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#図書室

ある暑い夏の日

 図書室で一人、仕事をしていると、廊下から色んな声が聞こえてくる。
 先生同士の会話、子ども同士の会話、時に何故か歌声。そしてたまには絶叫も…。
 知らない大人の話し声。誰かが出張してきたのだろう。自分に関係のない予定まで把握していないので、今日はSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の日なのだな…と思う。一人、すごく声の通る先生がいるのだ。
 声は聴いたことがあるけれど、姿は見たことがない。

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ありとあらゆる境目に

 新年度が始まって、毎年何人かがやって来る。100%女の子で、100%高学年だ。
「友達が出来ない。」
「誰と仲良くしたら良いのかわからない。」
 今年やって来た子たちは、ストレートだった。
 学校の規模が大きいと、毎年クラス替えが行われる。クラス数が多ければ多いほど、小学校6年間で、一度も話したことがないとか、同じクラスにさえなったことがない…などという話もよく聞く。
 自身が小規模校の出身で、

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献血問題①

 三時間目から五時間目までのフリー参観日は、来校した保護者向けに献血を募るのが例年の倣いとなっているらしい。これまで知らなかったのは、私が週二日と三日の二校兼任で、各校の行事を確実に把握するには忙し過ぎたせいでもあるのだが、そのフリー参観日に、該当校へ出勤しているとは限らなかったからである。また、出勤していたとしても、授業時間の一日六限は基本的に埋まっており、昼休みや長休みのみならず、授業合間の十

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みっちゃん、カッコいい事件①

 みっちゃんという男の子がいた。当時小学6年生。読書家で、休み時間にも度々図書室に訪れては、一人黙々と本を読んでいる。しかし決して内に籠るタイプではないようで、勉強も運動もちゃんと出来、クラスではリーダーシップを取っている。とはいえコメディ担当とは違う。主張している姿は見たことがなく、真面目で非常にクールなのだ。
 みっちゃんが笑った顔を見たことがないわけではないが、笑顔の印象は少ない。一人で黙々

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