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僕の好きな詩について 現代詩 日本編

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僕の好きな詩について、言いたいことを言うnoteです。日本人の近現代詩に絞ってます。画像はネットから。問題があったらすぐ消しますので教えてください。
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2018年8月の記事一覧

僕の好きな詩について 第十二回 高村光太郎

好きな詩の話を好きなだけする楽園のようなnote、第十二回は高村光太郎です。

ではまずこちらをどうぞ。
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「道程」高村光太郎

僕の前に道はない

僕の後ろに道は出来る

ああ、自然よ

父よ

僕を一人立ちさせた広大な父よ

僕から目を離さないで守る事をせよ

常に父の気魄を僕に充たせよ

この遠い道程のため

この遠い道程のため

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僕の好きな詩について 第十一回 山村暮鳥

こんばんは。詩について好き放題書くnote、第十一回は山村暮鳥です。

大正四年(1915)に刊行された詩集「聖三稜玻璃」に収められた一編ですが教科書で読まれたかたの方が多いかもしれません。

ではどうぞ。

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「風景 純銀もざいく」山村暮鳥

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめん

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僕の好きな詩について 第十回 まどみちお

詩について好きなことを言うnote、記念すべき第十回は、まどみちおさんの詩です。

「ぞうさん」や「ふしぎなポケット」の作詞もされ、2014年に104歳で天に召されたまどさんの素敵な詩をご覧ください。

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「ぼくが ここに 」まどみちお

ぼくが ここに いるとき
ほかの どんなものも
ぼくに かさなって
ここに いることは できない

もしも ゾウが ここに いるならば

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僕の好きな詩について 第九回 茨木のり子

好きな詩について好きなことを書くシリーズ、第九回は、皆大好き茨木のり子さんです。
茨木さんは本シリーズ第三回に登場した山之口貘さんについても本を書いてらっしゃいますね。

ではどうぞ。
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「わたしが一番きれいだったとき」茨木のり子

わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがらと崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした

わたしが一番きれいだったと

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僕の好きな詩について 第八回 矢沢宰

好きな詩について放言するnote、第八回は早逝した天才詩人、矢沢 宰(おさむ)です。

短い詩なので2つ載せます。ではどうぞ。

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「少年」矢沢宰

光る砂漠

影をだいて

少年は魚をつる


青い目

ふるえる指先

少年は早く

魚をつりたい

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「再会」


誰もいない

校庭をめぐって

松の下にきたら

秋がひっそりと立っていた

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僕の好きな詩について 第七回 荒川洋治

徒然なるままに僕の好きな詩を紹介して感想を述べるノート、第七回は荒川洋治氏の「梅を支える」です。

タイトルもう少し洒落てても良いよなぁ、と思いつつ、好きな詩です。碍子(がいし)という言葉はこの詩と日本ガイシという会社名でしか見たことがありません。

それではどうぞ。
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「梅を支える」 荒川洋治

きょうは梅が見られると思ったのに
碍子をぬらしてあいにくの雨だ
梅を

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僕の好きな詩について 第六回 吉野弘

最近このシリーズが楽しくて仕方ないハルです。こんばんは。

しかし、詩論や詩の感想を書くと自らのことばに縛られて詩が痩せるような気もします。

そんな中、今回は吉野 弘氏の「祝婚歌」です。
ではどうぞ。

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「祝婚歌」吉野 弘

二人が睦まじくいるためには

愚かでいるほうがいい

立派過ぎないほうがいい

立派過ぎることは

長持ちしないことだと

気づいているほう

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僕の好きな詩について 第五回 宮沢賢治

僕の好きな詩について 第五回 宮沢賢治

こんばんは。僕の好きな詩について思うまま語るシリーズ第五段は、宮沢賢治です。(このシリーズでは出来るだけ有名な筆者か作品を選んでいるつもりです)

素晴らしい作品が星の数程ありますが、今回はこちら。

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「永訣の朝」 宮沢賢治

けふのうちに
とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)

うす

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僕の好きな詩について 第四回 中原中也

僕の好きな詩について 第四回 中原中也

こんにちは。八月中旬なのに秋の気配ですね。平成最後であることも含め、今年はとても変わった年だと思います。
さてそれでは今回の詩はこちらです。どうぞ。
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「頑是ない歌」中原中也

思えば遠く来たもんだ
十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた
汽笛の湯気は今いずこ

雲の間に月はいて
それな汽笛を耳にすると
竦然として身をすくめ
月はその時空にいた

それから何年経ったことか

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僕の好きな詩について 第三回 山之口貘

僕の好きな詩について 第三回 山之口貘

僕の好きな詩のことを好きに語るノート第三回は、山之口貘さんです。

僕は生まれだけ沖縄なのですが、そのせいで沖縄を代表する詩人の一人である貘さんに強い親近感を抱いています。

それでは今回の詩を。

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「喪のある景色」 山之口貘

うしろを振りむくと

親である

親のうしろがその親である

その親のそのまたうしろがまたその親の親であるというように

親の親の親ばっかりが

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僕の好きな詩について 第二回 大岡信

僕の好きな詩について 第二回 大岡信

僕が好きな詩について、好きなことを言うノート、二回目です。

ではまず、今回の詩をどうぞ。

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「青春」 大岡信

あてどない夢の過剰が、ひとつの愛から夢をうばった。おごる心の片隅に、少女の額の傷のような裂目がある。突堤の下に投げ捨てられたまぐろの首から吹いている血煙のように、気遠くそしてなまなましく、悲しみがそこから吹きでる。

ゆすれて見える街景に、いくたりか幼いころ

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僕の好きな詩について 第一回 谷川俊太郎

僕の好きな詩について 第一回 谷川俊太郎

こんにちは。

僕の好きな詩について、言いたいことを言うコーナーを始めてみます。

僕にも読んでくださるかたにも新たな視点が生まれることを期待しています。

それでは第一回の詩はこちら。

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「さようなら」谷川俊太郎

ぼくもういかなきゃなんない

すぐいかなきゃなんない

どこへいくのかわからないけど

さくらなみきのしたをとおって

おおどおりをしんごうでわたって

いつ

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