僕の好きな詩について 第十一回 山村暮鳥

こんばんは。詩について好き放題書くnote、第十一回は山村暮鳥です。

大正四年(1915)に刊行された詩集「聖三稜玻璃」に収められた一編ですが教科書で読まれたかたの方が多いかもしれません。

ではどうぞ。

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「風景 純銀もざいく」山村暮鳥

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
ひばりのおしやべり
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
やめるはひるのつき
いちめんのなのはな。

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100年以上前の詩とは思えない鮮やかさ。特に「やめるはひるのつき」の青白さが菜の花の黄色と対照的で素晴らしいですね。こういった、「ことばで絵を描く」作品の中で、こんなにピュアなものは寡聞にして他に思い当たりません。この詩を見ていると黒い線で書かれた文字とその隙間ががどんどん黄色く見えてくるので、言葉の持つ力に改めて感嘆です。

彼はこの詩が入った詩集を出した9年後に結核で他界してしまいますが、10年余の活動期間の中で5冊も詩集を出しています。(最後の一冊は生前に入稿、死後に出版)
詩の一編一編が比較的短いものの多い詩人ですが、それにしてもかなり多作のような気がします。

彼の他の詩でも時々あるのですが、明るい言葉の中に時々悲哀が混ざると、いっそう胸に迫る思いがします。あと、何故ひと段落9行ずつなのか気になります。「いちめん感」が出る最少の行数なのでしょうか。不思議。

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