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山頭火に遊ぶ

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山頭火と戯れる記事を収録します。
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#現代俳句

山頭火に遊ぶーリフレイン/ 安か安か寒か寒か雪雪

山頭火に遊ぶーリフレイン/ 安か安か寒か寒か雪雪

▢ 詩のリフレイン

文学においてリフレインは詩の代表的な技法である。一般的には、ある言葉やフレーズを繰り返すことで、強調したりリズムをつけたりする表現法と説明されている。まあ、それはそうだが実際の作品ではそれだけにとどまるものではない。詩人たちはこれまで言語限界の突破とその拡張を様々に企んできた。だから、リフレインがそうなるのはおかしくない話だ。そのことを2つの詩で確認してみよう。

この詩は「

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山頭火に遊ぶ-新緑病と煙霞僻

山頭火に遊ぶ-新緑病と煙霞僻

   アルコール依存症、カルモチン中毒、神経衰弱
   循環気質、多血気質、新緑病、煙霞僻

これは近畿大学臨床心理センターの人見一彦先生が指摘されている山頭火の病気と気質及び体質である。(「山頭火の病蹟(2)」)山頭火はこんなにたくさん心身の問題をかかえて生きていたのかと驚かされる。今回は、この中の「新緑病」と「煙霞僻」について、人見先生の論文に即して述べることにする。

▢新緑病

「新緑病」

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山頭火に遊ぶ-短く、そして鋭く

山頭火に遊ぶ-短く、そして鋭く

今、ぼくの前に、山頭火の椿の句がある。ぼんやりと自由律俳句のことを考えているのである。

  ぬかるみ赤いのは落ちてゐる椿
  落ちては落ちては藪椿いつまでも咲く
  山の椿のひらいては落ちる
  いちりん挿しの椿いちりん

これを定型の句と比べてみる。

  落ざまに水こぼしけり花椿    松尾芭蕉
  古井戸のくらきに落る椿かな   与謝蕪村
  落椿くぐりて水のほとばしり   高浜虚子

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山頭火に遊ぶ-ほろりと歯がぬけて

山頭火に遊ぶ-ほろりと歯がぬけて

山頭火は「草木塔」に歯を詠んだものを3句収めている。
ほろりとぬけた歯ではある
    冬がまた来てまた歯がぬけることも
    噛みしめる味も抜けさうな歯で
日記を見ても歯医者にかかった形跡はない。だから、治療などせず、歯痛に呻き苦しみながら、自然に「ほろり」とぬけるのを待っしかなかった。もちろん入れ歯を買う金もない。このような彼の歯との格闘は昭和7年、51歳の時か

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山頭火に遊ぶ-あざみあざやかなあさのあめあがり

山頭火に遊ぶ-あざみあざやかなあさのあめあがり

▢ あざみあざやかなあさのあめあがり

読むより先に目に飛び込んでくる句だった。あざみ、あざやか、あさ、あめあがり。あざやかな「あ」のつらなり。事象はあざみにとどまる雨のしずくが朝の光に煌めいているのだが、ぼくには「あ」が煌めいていた。この句にまさる「あ」にであったことはない。あざみが「あ」に煌めいている。そん感じだったのである。

ざっと見ただけだが、山頭火の句にこのような句韻法はでてこない。も

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