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薄楽詩集

40
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2022年11月の記事一覧

【詩】黄昏ている

【詩】黄昏ている

黄昏れている

自転車が黄昏ている
ブランコが黄昏ている
物干し台が黄昏ている
ブラウスが黄昏ている
ジャングルジムが黄昏ている
コルセットが黄昏ている
鉄棒が体育館裏が素敵な先生が黄昏ている

黄昏ている たそがれている

スーパーマーケットが黄昏ている
きみの作ったおいしかったオニオンスープが黄昏ている
コンビニエンスストアも黄昏ている
カップラーメンも茶碗蒸しも黄昏ている
街のカップルも警察

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【詩】フロイトへ

【詩】フロイトへ

                    こんな夢をみたんです じつは
私のようで私でないひとがきのう妻のようでつまでないひととわかれてきたようなんです きのうのようできのうでないひの海はおだやかでふたりはほんとうのようになかよくむつみあいはだかのまんまでまるで愛みたいなせっぷんをしてほらこのさくらがいはきみのかくれたところのいろだとわたしがいかにもわたしらしいいやらしいことをいうとおんなはあたかも

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【詩】小町幻想

【詩】小町幻想

 

  
 はなの色はうつりにけりないたづらに 
            我がみよにふるながめせしまに  小野小町

ほほえんでみると
誰よりもうつくしかった

拗ねてみると
誰よりもあいくるしかった

いろんなをとこが
わたしを抱きにきた

無垢なる恋に飽き
自らの手管に溺れ
知恵の虚しさにくちびるを噛む日々
蛇の勝ちほこった笑い声が
十六夜の山あいに谺し
花の雨を降らせる

どれだけの生贄が

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【詩】ふたたびの初恋

【詩】ふたたびの初恋

ふたたびの初恋

たとえば それは
摘み取るまえの夜明けの菫

たとえば それは
告げずにおわった初恋

たとえば それは
忘れることを知った花橘の香

たとえば それは
僕らの夏空に
気高く聳えていた共産党宣言

たとえば それは
その崇拝者であった君の
バラ色の歯ぐき

朝日が君を射止め
君がぼくを射抜いた自治会館で
確かにぼくは清らかな肉欲を
君に感じていた

そして いま 
夢を捨てたぼく

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【詩】挽歌

【詩】挽歌

 

挽歌

少しづつ距離ができる
希望が生まれるたびに
願うたびに

ぼくたちは言葉で幾多の景色をつくった
まるで国産くにうみのようだと君はいい
ぼくは初夏に横たわる丘陵のような
君のなだらかな腹を無言で撫でた

とるに足らない戯れの
過ぎてゆくほどに
たまらなく愛おしくなるのは
なぜか

希望がかなえられるごとに
言葉は単なるツールとなって
ぼくたちは
労働者の消えた鉄の街の
払い下げアパート

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