フォローしませんか?
シェア
薄楽俊
2022年11月30日 16:24
黄昏れている自転車が黄昏ているブランコが黄昏ている物干し台が黄昏ているブラウスが黄昏ているジャングルジムが黄昏ているコルセットが黄昏ている鉄棒が体育館裏が素敵な先生が黄昏ている黄昏ている たそがれているスーパーマーケットが黄昏ているきみの作ったおいしかったオニオンスープが黄昏ているコンビニエンスストアも黄昏ているカップラーメンも茶碗蒸しも黄昏ている街のカップルも警察
2022年11月27日 20:28
こんな夢をみたんです じつは私のようで私でないひとがきのう妻のようでつまでないひととわかれてきたようなんです きのうのようできのうでないひの海はおだやかでふたりはほんとうのようになかよくむつみあいはだかのまんまでまるで愛みたいなせっぷんをしてほらこのさくらがいはきみのかくれたところのいろだとわたしがいかにもわたしらしいいやらしいことをいうとおんなはあたかも
2022年11月21日 01:00
はなの色はうつりにけりないたづらに 我がみよにふるながめせしまに 小野小町ほほえんでみると誰よりもうつくしかった拗ねてみると誰よりもあいくるしかったいろんなをとこがわたしを抱きにきた無垢なる恋に飽き自らの手管に溺れ知恵の虚しさにくちびるを噛む日々蛇の勝ちほこった笑い声が十六夜の山あいに谺し花の雨を降らせるどれだけの生贄が
2022年11月16日 01:07
ふたたびの初恋たとえば それは摘み取るまえの夜明けの菫たとえば それは告げずにおわった初恋たとえば それは忘れることを知った花橘の香たとえば それは僕らの夏空に気高く聳えていた共産党宣言たとえば それはその崇拝者であった君のバラ色の歯ぐき朝日が君を射止め君がぼくを射抜いた自治会館で確かにぼくは清らかな肉欲を君に感じていたそして いま 夢を捨てたぼく
2022年11月11日 00:18
挽歌少しづつ距離ができる希望が生まれるたびに願うたびにぼくたちは言葉で幾多の景色をつくったまるで国産くにうみのようだと君はいいぼくは初夏に横たわる丘陵のような君のなだらかな腹を無言で撫でたとるに足らない戯れの過ぎてゆくほどにたまらなく愛おしくなるのはなぜか希望がかなえられるごとに言葉は単なるツールとなってぼくたちは労働者の消えた鉄の街の払い下げアパート