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永遠の若手~試練の3番勝負/連載エッセイ vol.103

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「姿勢ッコくらぶ通信 vol.105(2018年・第2号)」掲載(原文ママ)。

今号のエッセイは、表紙面にもあるように、毎回楽しみにされている『隠れファン』も多いとされる、年頭恒例の『アメリカ研修ネタ』である。

さて、『アメリカネタ』の度に触れる通り、学生時代に客船で太平洋のアメリカ領を訪れた際、向こうの出国管理処理の不手際のお蔭で、ワタクシ、何故か彼の国へ不法に長期間滞在したという『オーバーステイ』の烙印がデータベース上で押されており…入国審査で『VIP待遇(別室二次審査)』を受ける場合も多い。

過去には、入国審査官から日本への『とんぼ返り』を提示されたり、審査に時間がかかり、乗り継ぎ便に間に合わないなど、割と散々な目に合っていたりもする。

そんな事情がある為、私にとっての『合衆国到着』は、飛行機がロサンゼルス国際空港へ無事に降り立ってからが『勝負』なのである。

着陸後、空港ターミナルのボーディングブリッジ(搭乗橋)へ向けて、滑走路をゆっくりと進む飛行機がやがて止まり、シートベルト着用サインが消えるや否や、手荷物を抱えて、機内を前方出口へ向けて進み、空港内をかなりの早足でガシガシ進む。

まぁ、このある種『殺気立った競歩風アジア人』の姿こそ、『不審人物』そのものだという仲間内からの指摘もあるが、背に腹は代えられないのだ。

さて今年、少々戸惑ったのが、入国審査場のレイアウトが大きく変わっていた事。

ロスアンゼルス国際空港は現在、2023年完了予定で、140億ドルという巨大予算を投じた改装工事を行っており、これまでも毎年利用する度に、ちょこちょこと施設の様子は変わってはいたが、今回利用した入国審査場が、これまでと大きく変貌していた。

まずは入国希望者による長蛇の列に並んだ後、それぞれが『Return ESTA(リターンエスタ)』と呼ばれる銀行ATMのような機械端末にて、自分で手続きを行う。

『ESTA(エスタ)』とは、『アメリカ電子渡航認証システム』の事で、合衆国へ入国・通過する者に対し、事前にインターネットで電子申請することを義務付けたもの。
つまり、彼の国の土を踏みたい者は、事前にネットで($14もの手数料を払って!!)手続きを済ませる必要があるのだ。

そして過去に1度でも『ESTA』を使って入出国した者は、この設備を使って素早く入国手続きが行える……というのが謳い文句なのであるが、上記の事情を抱える私は、当然の事ながら、端末より排出された大きく『×印』の付いたレシートを持って、今度は『入国審査官』の待ち構えるブースへと続く行列へ、これまた並び直す。

『第1ラウンド惨敗』である。

そして、自分の並ぶブースの列が徐々に短くなり、やっとの事で審査官に手招きされると『第2ラウンド』の幕開けである。

私のパスポートを機械に通し、PC画面を覗くなり、眉間に皺を寄せる審査官。
そのタイミングを見計らって、事情を簡潔にまとめた英文が記されたA4コピー用紙と、これまで利用してきた古いパスポート2冊を笑顔で差し出す。

『事情は分かったけど、システムが複雑で、修正できないんだ』
『そのようですね。』
『2次審査にはいつも行く?』
『行くときもあれば、そうでない時も……
(ハッ!!!!)……さ……最近はこの1次審査でパスできますね!!(←必死な虚勢)』
『……OK。』

こうして、なんとか『第2ラウンド辛勝』をもぎ取り、荷物のターンテーブル付近で待つ仲間達と合流。
こうして日本から研修に参加する約50名(内、東北人10名!! 過去最高!!)は無事に合衆国へと入国できた。

しかし……私の心は、未だ『カリフォルニアな雲ひとつない快晴』には至らない……。
何故ならここ数年、『第3ラウンド』とも呼ぶべき、私にとっての『入国試練』が定着しつつあるからなのだ!!

その後我々は、LA市内で昼食も兼ねた時間潰しをして、ラスベガスへの飛行機に搭乗。
そんな訳で、目的地に着くのは夕刻過ぎ。
ホテルへチェックインできるのは宵の口になってしまう。
そこで、翌日から始まるセミナーに備えて、初日の夜は参加者全員で食事会となる。

そしてその場所こそ、『最後の試練の場』なのである。

向かうは、最近日本でもブームになっている『赤身熟成牛肉』を食べさせるステーキ店。
『まずはアメリカらしいボリューミーな食事をとってもらいたい』という師匠の意向が反映されたお店選びで、ここ数年の定番となっている。

どのくらいのボリュームかというと、『1ポンド≒450グラム』。

但しこれは焼く前の状態であって、運ばれ目の前に置かれると、実質500~600グラムはある印象。
まぁ、向こうの方々は、計量もアバウトなので、『表示より下回らなければOK!!』というアメリカンなサービス精神がビッシビシと伝わる。

この為、通常の日本人にとっては、男性でも1枚食べれば満足、女性に至っては残してしまうのが『お約束』となっている。

そして問題なのが、その『席配置』である。

通常はエリア毎にまとまって座るのであるが、私は所属する会の中枢を担わせて頂いているので、師匠を含めた、所謂『上座』のテーブルに座る事になる。

そのこと自体は、非常に名誉な事であり異論はないのであるが……ワタクシ、活動期間は別として、そのテーブルに座する方々の中でも、年齢的に下から2番目……つまり『若手』なのである。

そうなると、どういった現象が起きるかというと……同じテーブルに座る女性陣から、アリガタイ事に、食べきれない分のステーキが、『割と』な分量で『配給』される。

確かに私は大食い『だった』。

初期の頃は、与えられた分量を苦にもせず呑むように食していた。
しかしながら現在、ワタクシも大厄を乗り越え、割といい歳となった。
食も順調に細くなりつつある。

ところが自分が歳を重ねるように、当然ながら仲間達も妙齢に達していく訳で……つまりは年々『配給量』が増加傾向にあるのだ!!

だからといって、もはや『恒例のネタ化』した感のある『ステーキ大食いキャラ』から逃げるのも癪だ。
付け合わせのポテトを無視して、無言で赤身をナイフで切り裂きフォークで口腔へ運ぶ……。
そのペースは既に、後程大挙するであろう『配給』を見据えたものである事は言うまでもなかった。

結果的に……ステーキ2枚半(≒1㎏以上)、その後の『ダメ押し』たる『ニューヨークチーズケーキ(巨大&特濃)』3個を完食……。

渡米前の1ヶ月で3㎏絞り込んだ体重を一夜にして取り戻す事となった『永遠の若手』は、その後、ラスベガスの煌びやかな夜景に誓うのであった……『若年層の人材育成……是、必須也!!!!』

第3ラウンド……来年に継続!?(苦笑)


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