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ブルーラインズクラブへようこそ/連載エッセイ vol.13

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.15(2003年2月)」掲載(原文ママ)。

親愛なる読者の皆様、今更ではあるが、新年明けましておめでとうございます。

早いものでこの連続エッセイも3度目の新年を迎えた。
例年、新年一発目のネタは「アメリカ研修・こぼれ話」であり、また一部の読者はそれを期待しているとの事。

もちろん書く側にとっても、これほど「美味しいネタ」に事欠かない恒例行事はなく、今回も彼の地へ向かう飛行機の中で「いいネタ見つかるかなぁ~」などと呑気に考えたりしていた。

そう、到着早々にこれ以上ない「事件」「が待ち構えているとも知らずに…。

外国に着いてまずクリアしなければならないのは「入国審査」。
日本から米国へ行く場合、帰りの航空券があれば、特にビザの取得は必要なく、目的や滞在日数など簡単な質問に答えればスンナリ通過できる。

そんな訳で、私はいつもの様に審査官の前に進み、パスポートを差し出し、満面の笑顔を作ってリアクションを待った。

しかし私のコードを通したパソコンを覗き込む審査官の表情は見る見る曇っていき、やがて鋭い眼差しを湛え始めたのである。
そして審査官は私にこう告げた。

「あのブルーラインに沿って進みなさい。」

視線を辿ると、確かにそこには青色の線が引かれていた。

今まで存在すら気付かなかったその線は、荷物受取場の手前で大きくカーブし、その1番奥のスペースへと続いている。
私は嫌な予感がしながらも、仲間達に軽口をたたくことで動揺を隠し、一人進んだ。

やがて正面に見えてきたカウンターでパスポートと書類を差し出し、ベンチに腰掛け、周りを見渡した。
その時、私は初めて気が付いたのである。
自分が警察官に囲まれていることを…。

辿々しい発音で名前が呼ばれ、カウンター越しに向かい合った黒い制服の審査官は言い放った。

「取り敢えず今日中に日本に帰ってもらうから…。」

何を仰る、という感じで「どうしてだい?」と私がフレンドリーに切り返すと、彼は鋭い目を一層険しくしてこう呟いたのである。

「It is not the game(これはゲームじゃない)!!」

「ヤバイ。シャレになんねえ!!」

焦った私は急に英語を理解できないという素振りを見せ、通訳を呼ぶことを求めた。
自分のファニエスト・イングリッシュでは泥沼にハマリそうな様相だったためだ。

通訳の頑張りと、ここ数年のアメリカ研修の実績で、なんとかウルトラクイズ並みのとんぼ返りは避けられたのだったが(どうやら以前のパスポートに5~6年前の事務処理ミスがあるらしい)、ホッと一息ついて立ち去ろうとする私の背中に、審査官は例の渋い声で叫んだ。

「これから合衆国に着く度に、ここに来てもらう事になるからな!」ってレギュラーかよ!!


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