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遺志と意志/連載エッセイ vol.97

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「姿勢ッコくらぶ通信 vol.99(2017年・第2号)」掲載(原文ママ)。

これ程までに『現地自由時間』の予定を立てず、海外へ旅立った事が、これまであったであろうか…いや、ない!! 

…と、いきなり反語調で幕を開けた今回のエッセイネタは、年頭恒例の『アメリカ研修』である。

前号掲載のエッセイでも触れた通り、学生時代に客船で太平洋のアメリカ領を訪れた際、向こうの入国管理の不手際のお蔭で、ワタクシ何故か不法に長期間滞在したという『オーバーステイ』の烙印が押されており…入国審査で『VIP待遇(別室二次審査)』を受ける場合が多い。

しかも今回は、彼の国に物議を醸しまくりな新大統領が就任した影響から、入国審査が厳しくなっている…との情報が各所より入っていたので、現地自由時間の予定を事前に立てるどころか、入国できるか否かさえ見通しが持てない、個人的にはかなりの緊張感を伴う渡米となった。

飛行機がロサンゼルス国際空港に降り立ち、シートベルト着用サインが消えるや否や、手荷物を抱えて、機内を前方出口へ向けて進む。

エコノミークラスの、しかも団体客に宛がわれがちな最後尾に近い座席からの『一気のごぼう抜き』を画策し、かなりの早足で空港内をガシガシ進む。

そして、入国審査場へ到着。

急いだ甲斐もあって、並ぶ異邦人の列はまだ短い。
その最後尾にスッと身を寄せると、自分が呼ばれるのは案外早かった。

今回の入国審査官は、私と同年代の黒人男性。いざ…尋常に勝負勝負…!!

…と煽るだけ煽ってしまったが、結論から言えば、多少の説明が必要だったものの、今回は『別室審査』を受けることもなく、割にあっさりと『入国達成』!! 

後から現地の旅行代理店の方に聞いたところ、入国審査に関わる例の大統領令が出た直後は、周辺で開かれたデモなども相まって、国際空港は大混乱だったものの、その後の司法判断の影響もあり、3週間もすると、だいぶ落ち着いたのだとか。

結果的に同行の仲間達よりかなり先に審査を通過してしまったワタクシ…その到着を待つ間、手持無沙汰の為、思わずターンテーブルより、研修参加者のスーツケースをすべて降ろすという作業に没頭したところ、空港職員やその他の乗客に、旅行代理店の社員と間違われて、イロイロと尋ねられる…というオチまでついてしまった。
やれやれである。

しかし、人生はプラスとマイナスが表裏一体、捨てる神あれば拾う神あり…という事で、目一杯の心配を抱えた分、今回は想定外の嬉しい事も…。

上記の事情から、入国できるか否かが、ある意味一番の焦点だった今回の訪米。
前もって現地自由時間の予定を立てることもできなかった為、入国してから現地の情報を搔き集めていると、そこに耳寄りな情報が…。

ここ数年、見に行きたいと熱望しては公演スケジュールの都合で鑑賞できていなかった『ナイトショー』が、どうやら今回はイケそうなアンバイ…。

これはチャンスとばかりに、ラスベガスのホテルへチェックインした直後、ボックスオフィスへ走り、彼の地を離れる最後の夜の公演チケットを滑り込みで入手した。

そのお目当てのショーとは、世界的に有名なカナダのエンターテインメント集団・『シルク・ドゥ・ソレイユ(太陽のサーカス団)』による、『マイケル・ジャクソン/ワン』。

ワタクシ…このエッセイでもかつて触れた事のあるように、根っからの『シルク~好き』である。

ラスベガスで『常駐公演』されている彼らの数々のショーは、初訪問以来、何度も観返す程のヘビーユーザーであり、世界ツアーとして展開された『巡回公演』のDVDも全て持っているレベルのファンである。

(但し、日本に来た『巡回公演』には何故か足を運んだ事がない…つまり…国内滞在中には『自由時間』が存在しない…から??苦笑)

ワタクシ…これまであまり触れてはこなかったが、ボチボチの『マイケル好き』である。

CDやDVDは一通り持っており、UCLAに解剖実習へ行った時も、実習自体より、彼が運び込まれた『附属病院』を見て心拍数が上がってしまうレベルのファンである。

そんな両者が融合したこのショーが数年前に始まって以来、訪問の度に鑑賞を熱望していたものの、『シルク~』の常駐公演では、パフォーマーの体調管理を考慮して、週2日程度の『休演曜日』が存在し、私の自由時間が毎回そのタイミングに合ってしまうという悲しい事情により、未だ願いを達成する事が出来ずにいた。

しかし今回は、幸運にも休演曜日が変更!! 

そして、事前準備が出来なかったからこそ、私のスケジュールも調整可能!!

そしてそして、熱い思いを伝えたボックスオフィスの受付女性の配慮もあり、座席は後方ではあるものの、ステージ全体を見渡せるド正面!! 

彼のお馴染みの曲が流れる中、スピーカー内蔵のシートに腰を下ろし…いざ……開演~~♪♪

結論からご報告すると…ワタクシ、一演目目から涙を堪え切れず…クライマックスでは『号泣』であった。

涙の理由…それは2つあったのかと思う。

1つは、『受け継がれる遺志』の存在。

彼は残念ながら、『肉体』としてはこの世にもう存在してない。
しかし、ステージ上には間違いなく、その『精神』が存在した。

もう1つは、『受け継ごうとする意志』の存在。

ステージ上でパフォーマンスをする演者は勿論、ステージ裏で奮闘するスタッフ、ショーを練り上げる演出陣、その全員が彼の事を想い、彼から触発された思いをぶつけ、彼の遺志を受け継ごうとする事で、彼ら自身の意思が輝きを増している…そんな印象を持った。

だから正直、最初は『感動』のみの涙であったが、途中から『悔しさ』が混じった涙でもあった。

私が『師匠』と出会って20年。
『姿勢医学/姿勢科学』に留まらない彼の思考思想に触発され、今日に至った。

でも…あのショーに携わっっている人々のように、自分の人生を懸けて、全力で自分の信じるものを表現しようと、出会った方々を感動させられるレベルで、毎日毎秒を目一杯奮闘できているのであろうか。

世界トップレベルのショーを体感して、このような思いを持つこと自体、おこがましいのかもしれない。
しかし、このおこがましさこそが、自分の成長の『伸びしろ』だと信じたい。
『みちのく岩手を姿勢医学の先進地域へ』…出来る事、やりたい事はまだまだある。

そんな訳で…私は満足げな観客達に交じって会場を後にしつつ、心に固く誓うのであった……『次回はもっと前の席で観よう』…と!!(←ソッチの決意か~い!!)


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