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進撃のセルフテーブル☆肉球付/連載エッセイ vol.80

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.82(2014年・第3号)」掲載(原文ママ)。

記事編成の都合上、読んでいて思わず『デジャヴ(既視感)』を感じさせてしまうようで大変恐縮であるが、今号も前号に引き続き『韓国訪問ネタ』である。

しかしながら、約半年前の事柄を扱った前号とは異なり、今回は5月中旬に行ってきたばかり故、いわば『撮って出し』的な『躍動感』溢れるフレッシュなネタを…。

さて、ワタクシが在籍する『公衆衛生博士課程』としては4回目となった今回の集中講義。

ただ、そうは言っても、そこは『天下の(!?)博士課程』である為、メインのカリキュラムとなる『研究論文の作成準備』や『それに関連するレポート作成』は、国内にいる普段から随時取り組まざるを得なく、結果的に現地で行う『自らの勉学へ直接的に関連する事柄』は、『研究論文の打ち合わせ』や『対面試験』などに限られる。

そんな中、もう1つの重要な『責務』として挙げられるのが、『カイロプラクティック理学修士号取得者』として『現役の日本人修士課程在籍者(MSコース3期生)』の学習をサポートする事。

つまり『教育助手(ティーチングアシスタント)』として大学サイドに立ち、教授の行う講義を手助けするのだ。

まぁ、国内の大学院でも、博士号取得を目指す院生が大学の研究室に在籍しながら、現役の大学生の教育に携わる例を踏まえて頂くと想像しやすいかと思う。

その具体的な業務と言えば、教授からの指示を受けた後の実習時に手助けをしたり、時には『なんちゃって通訳』的な事をしたり、実技試験で『患者役』をしたり…。

そして今回の『事件』は、実技試験にてワタクシが、その『患者役』を務めていた時に発生した!!

ここで今回の『主人公』を紹介しよう。

彼の名は、オーナー院長でもある北海道在住のY氏。
その人柄は、まさに『いいヒト』そのもの。
温厚を絵に描いたような『好漢』である。

そして同時に…『巨漢』でもある。

180cmはあろうかという上背に、同程度弱はあろうかという胴回り…。

ワタクシは彼に出会って初めて知ったのである…『太鼓腹』という言葉が表現する本当の意味を…!!

そんな彼の『持ちネタ』は、『ワタシ、お腹…出てますケド…実は固いんです!!』という『謎の腹筋自慢』であったが…

(実際に触らせて貰うと、確かにパンパンな張力を有しており、正直、触りたくなる存在感ではある…『となりのト〇ロ』的に!!)

…ある日、京都在住の某氏に…

『それって…「内臓脂肪」って事だから、ブヨブヨの「皮下脂肪」より、むしろアカンやろ!!』

…という容赦のないツッコミを受け、遭えなく『撃沈』した事は、個人情報保護の観点から絶対的機密である!!

しかしながら最近では彼自身もその体型に関して、『開き直り』とも取れる『活用法』を見出しており、例えば、スマホを握る両手を『肘掛』的にお腹の上に乗せて、長時間操作する場合の腕の疲労を軽減させたり、手にした印刷物複数枚が乱れた際には、そのお腹の上でトントンっと揃えたりと、その存在、まさに『ポータブルセルフテーブル』の如し!! 

その使い勝手は、周囲が『ちょっと羨ましいカモ…』と、ついつい思ってしまうレベルである(その『維持費』を度外視すればの話ではあるが…)。

さて話は本題に戻って、『実技試験』での事。

私が『MSコース1期生』として学んだ際には、試験官は当然ながら患者役も現地の大学関係者であった為、やりとりは全て英語。
非常に緊張する時間であった。

一方、今回は患者役が我々『日本人の博士課程在籍者』であり、日本語も使用可能。
ともすれば緊張感が薄れがちになる状況で、患者役とはいえ試験に携わる自分が空気を乱す事はご法度。
私は極力感情を乱すことなく、試験に臨んでいた…。

そして試験は、Y氏の順番が回ってきた。

彼は緊張しながらも、汗をかきかき拭い拭い、順調にミッションをこなしていった。
そしてある実技に移行した時…おもむろに試験会場の空気が変わるのである!!

『二頭筋腱反射』という神経テストが存在する。
それは肘を曲げた際に盛り上がる事でお馴染みの『二頭筋』の、肘内側に位置する『腱』を、『打腱器』で叩く事で筋収縮の神経反射を検知するテストである。

その際、患者は血圧測定時の様に掌を上にして腕全体を検者に差し出す体勢となる。

そして正対する検者は、片手に打腱器を持ち、もう片方の手で差し出された腕を支えてリラックスさせつつ、拇指(親指)を二頭筋腱にそえるという、患者の腕を置く机のない状況下では、少々コツのいる体勢で臨む必要があり、ある意味、その佇まいをチェックすれば、その『熟練度』を推し量る事ができるテストともいえる。

そしてY氏は期待通りに…私の腕を…乗せたのである…その…『ポータブルセルフテーブル』へ…しかも…これ以上ない自然な手さばきで!!

やばい…患者役である自分が笑ってはいけない…。

そう思えば思う程こみ上げてくる思いを必死に抑えつつ、想像以上の安定感をアピールしてくる差し出した我が腕を視線で制し、なんとか『沸点』手前で次のテストへ移行し、難を逃れた……と思いきや!!

『リンネテスト』という聴神経テストが存在する。
その詳細は割愛するが、検者は振動させた音叉を、患者の乳様突起(耳の後方の骨)に当て、患者はその音が聞こえなくなったら手を挙げてその旨を検者に知らせる…という過程を含んだテストである。

そのテストに臨んだY氏は私に、目を閉じるように指示を出した。

本来であればこのテストにおいて、その行為は必須ではないのだが、私が聴覚へ集中できるようにという彼の配慮であろう。
言われるがまま目を閉じた。

私の視界から姿を消すY氏…。

暗闇の中、彼の声が響く…。

『それではこれから耳の後ろに音叉を当てます…
 振動音が聞こえますかぁ~??』 

暗闇の中、そっと頷くワタクシ。
恐らく私の右斜め前方1mの距離から指示を出している模様…。

『それではこの振動音が聞こえなくなったら
 手を挙げて知らせてくださいねぇ~!!』

彼の誠実な試験態度に応えようと、私はじっと耳を澄ませた…。
そして数十秒後、振動音が消えた…!! 
私は彼の誠実な試験態度に応えようと、天を指差すが如く勢いよく右腕を振り上げようとした!! 

その時…!!!!

バァイイィィィ~ン!! 

『んふぐぅ!!』 

『痛ぇぇ!!』

賢明な読者の皆様であれば、ナニが起きたのか想像に難くないであろう…。

目を閉じた暗闇の中、勢いよく差し上げられた私の右腕は、その速度が最高潮に達しようかという拳上角60度の位置で、見事、迫り出したY氏の太鼓腹に手関節を捻挫する勢いで激突したのである!!

その後…Y氏、ワタクシ、試験官のあまりの爆笑っぷりに試験が約2分間中断したのは言うまでもない…。

そしてその試験結果は…
今のところ、まだ大学から通知が…届いて…いない…。


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