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涙の訳は聞かないでおくよ

ポロポロと、涙を零すあなたを抱きしめながら
この人の涙を拭くのは、私の役目でありたい。

これからも、ずっと。
心の片隅で、そう確信したのです。

お家に来た恋人に、今まで書き綴った文章を
まとめた本の話をした。

彼は私の紡いだ言葉を読んだことがないので。

失恋話もあるけど、読みたい?って聞く私に、
「1番ライトな日常回だけお願いします」だって。

そういう臆病な所、相変わらず愛おしいネ!

別府で暮らしていた頃の話と、ラグビー部の話。
他愛もない心に留めておきたい日常の一コマを。

なのに、君はポロポロと泣きはじめてしまって。

「どうして涙が出るのか分からない」

そっかそっか。

高校の同級生でも、地元のツレでもない私は、
過去のあなたを「想像」でしか慮れないから。

どんなに心寂しい夜を過ごしてきたのかも、
誰と出会って何を感じてきたのかも、
私には何も分からない。

だけどね、1つだけ確かなことがあるんだ。

あなたは拙い私の文章で泣いてくれる位に、
優しく、純粋で、綺麗な心の人だってこと。

パジャマの袖で、この愛おしい涙を拭きながら、
ふと思った。

あなたは、寂しさを満たしてくれる人でも、
自分の感情を押し付けてくる人でもない。

私が、この手で、あなたの笑顔を守りたいって。
あなたの幸せを紡ぐのは、いつだって私が良い。

だから、その涙の訳は聞かないでおくね。
もう、泣かなくて大丈夫。ずっと側にいるから。

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