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衣食足りて礼節を知る(管子)

 ソウリン
「倉廩実つれば即ち栄辱を知り、衣食足りれば即ち栄辱を知る」

(生活にゆとりができさえすれば、道徳意識は自ずと高まる)

「衣食足りて礼節を知る」という故事成語を聞いたことがある人も多いかもしれません。

もとは中国の歴史に出てくる斉国の宰相、管仲の言葉で、本来は冒頭にある表現なのですが、故事成語になる過程で「衣食足りて礼節を知る」になったと言われています。また『管子』は管仲の死後その言葉をまとめた書物です。

管仲は斉国の凡庸に過ぎない君主桓公を戦国の覇者にさせるなど優れた政治家という評価もある一方で、論語で有名な孔子から手厳しい評価を受けている人物でもあり、やり手の政治家であったため考え方は極めて現実的なのが特徴です。

君主というものは時として理想論で国を治めようとするものですが、財政を疎かにして理想を説くなど世迷いごと。民衆が日々の暮らしに事欠くような状態で、礼儀を説いたところで無意味であると喝破します。

民衆の生活を安定させれば、民衆も自然と礼儀を重んじ、人の道に外れた行いを恥ずかしいことだと考えるようになり、君主の命令も国の隅々まで行き渡らせることができる。

財政、経済の重要性に比べたら、刑罰や理想などは些末な問題に過ぎず、まず民生を安定させ、その後に道徳意識を高めることが国家存立の基礎であり、手順であると管仲は説いています。

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私はこの言葉を聞くと頭に浮かべるのは労働条件の悪い中小企業のことです。

「社長も人柄でいえば良い人で立派なことを言う。でも給料は安くて今後も給料が上がる見通しもない。どれだけ立派な考えを持っていたところで、現実の生活が楽にならないのなら何のために努力しているのかよくわからないし、将来が不安になってしまう。」

人として正しく、立派なことを言うのであれば、先ずは共に働く従業員の生活を良くして欲しいという考えが頭をもたげるのもそれこそ人として健全な考え方だと思います。

会社としては売上、利益が上がっていても従業員に全く還元する考えのない社長もいます。

納税資金であるとか、内部留保であるとか会社の事情もあるかもしれませんが、忙しく働いて成果を出して、明らかに売上利益が増えているにも関わらずなんの説明もなく、恩恵にも与れないのであれば、従業員としては不満に感じるでしょう。

また忙しいのに儲かっていない会社もあるでしょう。

経営は当期だけの結果だけを見て判断できない部分ももちろんありますし、給料が安くても、社長や会社や仲間が好きだからここで頑張るという人もいるかもしれません。

でも、正しいことを言われ、正しい行いを求められても、それに見合うものがないとやはり頑張れないのも現実です。

どんなやり方であっても儲かっていればいいという訳でもなく、従業員を酷使しても見合った待遇を与えればそれでいい訳でもなく、理想を説いても薄給であれば従業員の心も離れていく。

何事もバランスが大事だと管仲の言葉を見かけるたびに思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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