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会社の成長を支えるナンバー2の育て方 vol.87 ナンバー2の役割⑨嫌われ役の機能

社員に厳しいことを言えない社長

事業活動の中で時には社員に対して厳しいことを言わないといけない場合があります。業績不振、慢性的な目標未達、社内のルール違反の放置、業務上のエラーが繰り返し発生するなど、無気力であったり、無責任な状況であれば、その事実を指摘し、改善を促すことは大事です。

この指摘や鼓舞を社内の誰が行うのか。経営を誰よりも真剣に考えている社長の役目とも言えますが、それを言えない社長もいます。

言えない理由としては、こんなところです。

・厳しいことを言って社員に嫌われたくない
・社員のモチベーションを下げたくない

・性格的に優しすぎる
・気が弱い

社長としての求心力に大きな影響をもたらしてしまう可能性があるのも現実ですから、社員にとっては厳しく感じられることを言いずらいのかもしれませんし、どう言っていいのか悩まれることもあるでしょう。

自分のこの気持ちを察して、お願いせずともぴしゃりと言ってくれる存在が社内にいると有難いというのも本音かもしれません。

「ウチのナンバー2は社員の顔色を伺って、嫌われ役ができない」という社長の不満の声が根強くあるのもこうした心情の表れなのです。

【過去記事はこちらから】
ナンバー2の役割①補佐役の機能
ナンバー2の役割②フォロワーの機能
ナンバー2の役割③実行役の機能
ナンバー2の役割④通訳役の機能
ナンバー2の役割⑤改革役の機能
ナンバー2の役割⑥調整役の機能
ナンバー2の役割⑦統括役の機能
ナンバー2の役割⑧代理役の機能

左 近藤勇 右 土方歳三

このテーマを扱うと登場するのが、新選組の土方歳三です。

ご存知のとおり、新選組は近藤勇をトップとし、土方歳三がナンバー2として補佐していました。土方歳三はトップである近藤勇に信望を集め、一方で、新選組の鉄の掟を厳守させ、組織の規律を維持するために冷酷な鬼の副長を担っていたと言われています。

トップの求心力維持と組織運営上の課題解決は状況によっては二律相反することかもしれません。だからこそあえて土方歳三は鬼の副長を演じ、バランスを保っていたのでしょう。

トップの性質や組織の状況によっては、ナンバー2が嫌われ役として代弁するという役割が良くも悪くも潜在的にはあるということです。

厳しいことを言う前に普段から考えるべきこと

時には、厳しい態度で臨むことが必要な場面はあるとお伝えしました。そして土方歳三のような存在がいてくれたら心強いと思う社長もいるでしょう。

ただ、あまりナンバー2にこの嫌われ役を求めすぎると別の問題が生じてしまうこともあります。

どうなるのかというと、

社長とナンバー2との間は信頼関係が強くなる一方で、社員と経営陣との間に大きな溝を生み、白けさせ、言い方、やり方によってはハラスメントと受け止められることももちろんあり、経営陣と現場の対立を生み、会社全体では一体感がなくなってしまう可能性があります。

特に感情的になって怒ったりすると、部下との間に修復不可能ほど信頼関係の破綻を招いてしまう場合もあります。

社長は自分が言いにくいことを代わりに言ってくれる便利な存在として気軽に嫌われ役として使ってはいけないですし、ナンバー2も社長のため、会社のためと思っていても、厳しいことばかり言っていれば良い訳でもないことを理解する必要があります。

嫌われ役は必要なのかという問題

本来、嫌われ役は必要悪の存在でもなく、行き過ぎて嫌われ者になってしまったらナンバー2自身の現場での求心力や部下との信頼関係にも大きな影響を及ぼしてしまいます。

社長が言いずらいからナンバー2が代弁したところで、ナンバー2が部下から煙たがられ、本格的に嫌われ者になってしまっては組織をまとめるという役割が果たせなくなってしまいますから慎重になる必要があります。

そもそも、厳しいことを言って嫌われるようなら、根本的にナンバー2自身の日頃の立ち振る舞いを見直す必要があります。

課題の多い組織は特徴があります。

・目標が不明確であること
・コミュニケーションが不足していること
・意見を出しづらい環境であること
・必要な情報共有が不足していること
・リーダーシップのある存在がいないこと
・役割分担と責任所在が不明確であること
・評価の仕組みが整備されていないこと
・さまざまなリソースが大幅に不足していること

社員が指示通りに行動してくれない、目標が未達である、受け身であるなど課題はさまざまですが、望まない状況が発生しているそもそもの原因は社員にあるのではなく、こうした状況に目を向けない経営側にこそ原因があることを認識する必要があります。

原因を取り除く努力をせずに、場当たり的に叱咤しても何の意味もありません。

理想としては、社員が自ら問題意識を持ち、自ら改善に励んでくれることでしょう。

そのために日頃から部下との信頼関係を大事にした関わり方をし、安心してさまざまな意見が言いやすい環境を作り、そうした意見や行動をサポートできる環境を整えるしかありませんから、課題の一つ一つを丁寧にクリアすることを考えなければなりません。

それでも緩んでいる時には言うべきことは言わないといけない場面はどうしても起きます。

その際には、これらに留意しないといけないでしょう。

・具体的、客観的な事実に基づくこと
・人ではなく、行動と考え方の修正を促すこと
・感情的にならないこと
・具体的な改善策を提示すること
・建設的であること
・社員の意見にも耳を傾けること
・理解を示すこと
・相手の人格否定をしないこと

ハラスメントやアンガーマネジメント、心理的安全性といった話を聞くようになって久しいですが、体育会系の職場だとまだまだこのようなことが往々にして起きているような気がします。

まとめ

今回はナンバー2の役割のひとつである嫌われ役という役割について解説させて頂きました。ただ、これに関しては人それぞれお考えがあることだとも思います。

職場に厳しいタイプの上司がいらっしゃる方にとっては正直鬱陶しい存在に感じるでしょうし、中にはそういう人もいた方がいいと考える方などさまざまでしょう。

会社全体の利益を考えた時に、意思決定の難しい局面や変革が必要な場合に、結果として部下から嫌われることもあります。ただ、それを恐れて、必要な判断をしない、変わることを止めてしまうことで会社を傾かせてしまうようなことがあれば本末転倒になってしまいます。

極端な例でいえば、事業再生が必要な会社ではドラスティックに物事を進めていかなければ本当に会社が破綻してしまいますし、その時に現場を先導するナンバー2が部下の評判を気にしてばかりいたら全員が不幸になってしまいます。

社員にとって耳障りの悪い話をし、指示を下すこともあり、それを社長が上手くできないのであればナンバー2として矢面に立つことも時には必要ですが、嫌われ役という役割は諸刃の剣でもあるので、その剣を使うことがないようにするのが正しい在り方ではないかと思います。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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