見出し画像

「24分のX」:第19話  超ショートショートで連載小説 荒れ野

〇「24分のX(にじゅうよんぶんのえっくす)」 短編よりも短い、あっという間に読める超ショートショートの連続小説。 分かっていても、なぜか答えにくい「問いかけ」がある。


第19話

「何が良いの? 私の」

その問いに俺は困惑した。

「気に入っているところ・・・困ったな。
まず、顔とスタイル・・・は、タイプじゃないんだよな。
醸し出す色気・・・も、ある方じゃないしな。」

それから暫く、考え続けたが、
彼女が求めている答えを俺は思いつかなかった。

やがて彼女が冷めた目で見つめていることに気付き、焦った。

「ああ。そうだ。これだ。
優しい気持ちで悪口を言えるところ!」

プッと思わず彼女は噴出した。

「それ、とても長所には聞こえないわよ。ふふふ。」

「笑ったね。久しぶりに見たよ、その可愛い笑顔。ははは。」

幸福な笑い声がお互いの心を震わせているのが分かった。
一通り笑った後、唐突に彼女は真顔に戻った。
そして、俺の眼を真っ直ぐに見据えて言った。

「本当に良いの? この先は荒れ野が続くだけかもよ」

泥棒猫というあだ名がついた女が、
恐る恐る前に一歩進もうとしている。

「どんな道でも俺が花を咲かすから、絶対に荒れ野になんかならない!」

その時から俺は、
恋という重罪で囚われた彼女の人生に
愛という免罪符を握りしめて、寄り添うことになった。

                                                             つづく


#朗読 #恋愛 #会社 #恐怖 #失恋 #不思議 #小説 #可愛い #ショートショート #秘密 #不倫 #社内恋愛 #夫婦 #課長 #挑戦 #覚悟 #泥棒猫 #新しい彼 #告白 #二番手 #一番手 #荒れ野 #免罪符 #恋 #愛 #人生 #寄り添う


ありがとうございます。はげみになります。そしてサポートして頂いたお金は、新作の取材のサポートなどに使わせていただきます。新作をお楽しみにしていてください。よろしくお願いします。