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12の基本スキル「話す」:会話力を高める(1/2)

本ブログ記事は『ビジネススキル 完全攻略 -基本編-』からの抜粋になります。全部まとめて読みたい方は、是非、電子書籍をご購入ください。


「話す」と「聞く」のバランスを考える

 「話す」スキルを習得していく前に、「話す」ことと「聞くこと(質問すること)」のバランスがどうあるべきか、まずはそこから話しをしていきたいと思います。

1対多のコミュニケーションのように多くの人の前でプレゼンする時は、当然、話の主導権は話してにありますが、1対1などのコミュニケーションでは、基本は、相手が話しをするのを聞くというスタンスで会話をしていくことが重要です。

どれぐらいの割合がいいかというと、相手が8割話しをして、こちら側が話しをするのは2割程度、残りの8割は聞くスタンスぐらいが丁度いいです。「質問する」スキルは「聞く」スキルに含まれますが、色々な角度から質問をして、相手が話をしたことを、聞いてあげるというスタンスを取ることが大事です。
図表にすると、以下のようなイメージになります。

図表.話すと聞くのバランスイメージ

私自身、営業をしていたときに、お客様にできるだけ話をしてもらうということを心掛けていました。
そうすると、お客様は話しをすればするほど、話しを聞いてくれた人(つまり、私)に対して、心を開いてくれるということを実感しました。

よく、営業マンはおしゃべりで口達者な人が多いイメージがありますが、できる営業マンは、実はそれほどしゃべりません。基本、お客様の話しをよく聞いて、適切な質問で会話をコントロールしていきます。
つまり、「聞く」スキルと「質問する」スキルを駆使して、コミュニケーションを図っていきます。

また、飛び込み営業に近いかたちで初めてお会いする新規のお客様などは、ガードが固く、会話を拒絶してくる方もいらっしゃいます。

こういう状況でも、話をし過ぎずに、質問を駆使して、お客様の話しを引き出していくことができると、心を開いてくれます。

あまり話しをし過ぎないという前提で、どのように話をすれば、相手と適切なコミュニケーションが取れるか、「話す」スキルで求められるテクニックを学んでいきたいと思います。

ゴール設定と全体像の提示

会話を始めるときは、会話で話したいことと、話す内容の全体像を示すことが重要です。

カフェなどで、取り留めもない会話をすることはよくあるかと思いますが(これはこれで楽しいですけど)ビジネスでは何を目的として、この会話でどういうことを成し遂げたいか相手に対して明確に伝える必要があります。

また、前提条件を共有できていれば、細かい話しから入っていっても問題ありません。
ですが、前提条件が共有できていない人やマネジメントレイヤーの人に対しては、まずは、話す内容の全体像(大枠)を提示し、そこから、部分的な細かい話しに入っていったほうが、相手も理解しやすいです。

図表.全体と部分の関係

 「理解する」スキルのパートで、さまざまなフレームワークをご紹介しますが、フレームワークとは、ものごとを包括的に捉える視点や枠組みだったりするものです。
会話の最初にフレームワークを示して全体像を共有したうえで、今話している内容がフレームワークのどの部分に該当するのか整理してあげると、相手の理解度もグッと高まります。

論理的・構造的に話をする

情報を論理的かつ構造的にまとめて、分かりやすく伝えることで、聞き手は内容を簡単に理解できるようになります。

特にビジネスの現場で先に結論を言ってから、そのあとに具体的な事例や証拠を示していく話しの流れが一般的です(論理的思考力に関しては、「考える」スキルのパートで詳しく解説したいと思います)。

図表. 論理的な話しの構成

・導入

会話やプレゼンテーションのはじめに、今回話をするトピックや問題を簡単に紹介しましょう。相手を引き込むために関心を引く要素や背景などを説明します。

・結論の提示

結論をはじめに示すアプローチは、「結論から話す」としてよく知られている話し方です。この方法は相手にすぐに結論を伝え、その後の説明でその根拠や詳細を説明していきます。こうすることで、相手は話のポイントをすぐに理解し、その後の情報で理由や具体例を詳しく学ぶことができます。

・具体的な事例や証拠

結論を述べたあとは、具体的な事例や証拠を示します。こうすることで、結論を補足する根拠が提示され、話す内容の説得力が高まります。
事例や証拠は、具体的な実例(ケーススタディ)、事実(ファクトデータ)、証拠(エビデンスデータ)などで裏付けていきます

・論理的な説明と詳細

結論と事例のあとは、より具体的な説明と結論や事例の背後にある論理(ロジック)を説明していきます。この段階では、なぜその結論に至ったのか、そのプロセスや論理的ないきさつを説明します。

・質疑応答とフィードバック

会話やプレゼンテーションの終わりに、相手からの質問やフィードバックを受け入れます。こうすることで、相手がどこまで理解しているかを確認し、疑問点や不明点を解決できます。こちらのプロセスは、「仕切る」スキルで学ぶラップアップに該当するプロセスになります。

■ 事例:プロジェクト進捗報告
登場人物:
・山田(プロジェクトリーダー)
・佐藤(プロジェクトメンバー)
山田:「こんにちは、みなさん。今日はプロジェクトの進捗報告を行います。まず、結論からお伝えします。プロジェクトの進捗は非常に良好です。目標に向かって順調に進んでいます。」
佐藤:「それは素晴らしいニュースですね!具体的にどのように進んでいるのでしょうか?」
山田:「はい、それを詳しく説明します。まず、我々は新しいマーケティングキャンペーンを立ち上げました。これにより、Webサイトのトラフィックが過去3か月で30%増加しました。」
佐藤:「それは効果的ですね。どのようにしてそれを達成したのですか?」
山田:「それは良い質問です。増加したトラフィックは、ソーシャルメディアの広告投資とコンテンツ戦略の改善によるものです。具体的な事例として、先週の新しいコンテンツ投稿が、直接トラフィックの増加に貢献した例があります。」
佐藤:「納得しました。また、他の側面ではどうでしょうか?」
山田:「もう一つの重要な側面は、販売の増加です。新しいマーケティングキャンペーンの影響で、販売は前年比で20%増加しました。これにより、収益も増加しています。」
佐藤:「それは素晴らしいですね。進捗状況を共有していただき、ありがとうございます。」

この会話の事例では、まず結論から話し始め、具体的な事例と説明を行っています。最初に結論を伝えた後、詳しい情報と具体的な事実を提供し、相手が理解しやすいように情報を伝えることができます。

結論から話し始めるアプローチは、相手の注意を引きつけるのに効果的な方法です。また、簡潔なコミュニケーションに適しています。

ただし、情報が複雑だったり、相手の知識レベルによっては、詳しい説明や具体的な事例を出すことも大切です。結局のところ、話す目的と相手の必要に合わせて、話の流れをうまく調整することが大事です。

定量的・具体的に話をする

話している内容に説得力を持たせるためには、事実ファクトデータ)や証拠(エビデンスデータ)を活用して定量的に話をすることが大事です。また、抽象的な話し方ではなく、できるだけ具体性をもって話しをすることも話しの説得力を持たせることにつながります。

図表. 世界の年平均気温偏差

たとえば、地球温暖化に関して議論する時も、過去130年間で世界の平均気温がどれぐらい上昇しているのか、数字を見せられたほうが、説得力があります

図表.抽象的な話し方、具体的な話し方

また、日常のちょっとした会話においても、抽象的な言い方ではなく、定量的・具体的に話しをしたほうが、説得力が増します。
こちらは「処理する」スキルで求められるタスクを具体化する話しにもつながっていきます。

■ 事例:デジタル広告施策
・田中(デジタルマーケティング担当者)
・高橋(経営者)
田中:「こんにちは、高橋さん。デジタル広告キャンペーンの効果について報告いたします。まず、CTR(クリック率)は10%で、広告が表示された際にクリックされた割合が高いことを示しています。」
高橋:「それは素晴らしいですね。具体的なコンバージョン率はどうですか?」
田中:「コンバージョン率は5%です。広告をクリックしたユーザーのうち、5%が製品を購入しています。また、ROAS(広告費用効果)は3.5倍で、広告費用に対して3.5倍の収益を生み出しています。」
高橋:「それは非常に効果的なキャンペーンのようですね。クリック単価はどの程度か教えていただけますでしょうか?」
田中:「現在の、CPC(クリック単価)は150円です。これは比較的低いコストでユーザーをサイトに誘導できています。」
高橋:「素晴らしい成果ですね。ROIはどうですか?」
田中:「ROI(投資利益率)は約250%です。つまり、広告にかけた費用に対して、2.5倍の利益を生み出しています。」
高橋:「それは素晴らしいROIですね。このキャンペーンを継続して進めましょう。効果的な広告戦略を展開できていますね。」

こちらのデジタル広告施策の事例では、CTR(クリック率)、CVR(コンバージョン率)、CPC(クリック単価)といったKPIが数字的にどのように改善されたのか示されているため、定量的な効果が把握しやすいです。


次は、「話す」スキルの後編に入っていきます!


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