サスティナブルとは名ばかり-中東に向かう家畜船の悲劇と食の倫理
温室効果ガスの排出量を抑えるために家畜の飼育環境や
牛のゲップから出るメタンガスを減らす餌の開発まで
様々な環境改善が話題に取り上げられている中、
「サスティナブルな家畜」と称して中東ではオーストラリア白羊の
養殖に力を入れています。
サスティナブルと言えば
根拠もなくポジティブなイメージを抱きがちですが、
よくよく考えてみると、
「我々の食生活は何一つ変えずに
メタンガスが少なめな食肉を申し訳程度に探しておこうか」
これがいわゆる備蓄的な発想の【サスティナブ】の本心なんじゃないのか?
と言う疑念が私の中で止まらないのです。
もちろん正しくサスティナブルに向き合っておられる方々や
新興企業はたくさんあります。
けれどもその言葉(サスティナブル)の通りに
人の意識に気づきを与えられるのは、
他でもなく自分自身なわけで
それが個人レベルの経験にまできちんと落とし込まれていないと
10年後の未来も結局今のまま、
同じ物を食べ続けて一生を終える人がほとんどだと私は思っています。
倫理観が動物の命を救う
さて羊の話に少し集中すると、
湾岸諸国に輸入される羊の量は世界で最も多く
2021年ではサウジアラビアが世界の輸入の29%
(4億9,400万ドル)、
オマーンが6.3%(2億7,800万ドル)、
ヨルダンが12%(2億300万ドル)、
カタールが6.93%(1 億 1,700 万ドル)でした。
これらの羊の多くは西オーストラリアから家畜船に詰め込まれ
約3週間の長旅を経て中東諸国の市場に供給されています。
現在は夏の動物輸送は禁止されていますが、
2017年には60,000頭の羊のうち2,400頭が熱のストレスにより
家畜船の中で死亡しています。
さらに中東に輸出される多くの羊は
現地で売れ残った過剰在庫の羊と言うのですから
最初から生き物に対する法的な権利や道徳のかけらもないわけです。
こう言った動物に対する倫理的な問題を踏まえて
オーストラリア政府では、
段階的に生きた動物の輸出を廃止する方向で検討しているとのことです。
この法律には少し安心しました…
参考データ
輸入品に頼る国の行末
中東は”その暑さゆえ”に食物がうまく育たない環境が何よりも致命的。
食品の8割以上を輸入に頼る国に対して
生きた動物を輸出しないと言う厳しい法律の縛りは
将来的に中東の食卓の景色をガラリと変える
大きなきっかけになるかもしれません。
サスティナブルな養殖羊も
打開策としてはありなのかもしれないけれど、
人間の食生活やライフスタイル全体の変化なしには
本来の持続可能な社会はいつまでたっても
実態のある姿を映し出してくれません。
例えば肉を食べるのを止めるとか
週に一度、いや月に一度に減らすとか。
植物性のタンパク質について自分の体と相談しながら、
新しい食生活をプランニングしてみるとか。
牛・豚・鶏がダメなら”羊でも”いいか。
ではなくて、
そんなに肉を食べる必要が最初から必要なのか?
と言う気づきの部分に学びがあるのではないでしょうか。
世界一の羊の輸入国であり
そして世界一、
1人当たりの食品廃棄物の量が多い中東。
人の食事とは本来、
節度を持って体に栄養を循環させて行く行為であることをすっかり忘れて
食べたい物を食べたい時に好きなだけ食べて捨てるを繰り返す
この弁(わきまえ)えのなさが、
現在の温暖化やあらゆる社会問題、
そして食糧危機などを招いているのではないでしょうか。
そして先進国や新興国とカテゴライズされる国で
”このような事態”が起きているのも事実で、
暮らしの利便性や物質に対する煩悩のようなものが
根深く人の思考や行動を司っているようにも見えます。
サスティナブルは”持続ではなく止める”と言う意味
サスティナブルと言う言葉が一人歩きをし始めて
不思議なカタカナ言葉やキャンペーンなどが乱列する世の中ですが
結局の所、人間界においては「止める、終える、自助自立」以外の行動で
サスティナブルの意義を頭で理解するのは不可能なんだろうなと
改めて考えさせられました。
食肉の問題は肉を食べ続ける限り
自分自身もそれに加担している当事者であることを
都合よく忘れずに、
人間だって生物多様性の一部に過ぎないのだと
他の生き物を労る気持ちで幸福のバランスを取りながら
今日のそして明日の食べ物の事を考えたいですね。
オルタナティブ(代替え案や代替え肉など)ではなくて
きっぱりと止める、終える。
そして自助自立の精神で生きてみると全く違った可能性や
出会いがあるものです。
サスティナブルは持続可能な未来のために
常識を見直して止める、終えること。
そこから派生するダイバーシティーとは
多様な在り方を認め合う社会ではなくて
あなたも私もただの地球人である基本を
忘れないでいると言う意味です。
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