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絵本『木を植えた男』を読んでは独り言

環境について考える

環境と言っても
地球環境ではなく
生活環境のことだ

日頃

薬局で働く中で
たくさんの方とお話しする機会がある

中には

一見すると偏屈そうな人や
無愛想な方もいたり

一人一人の個性や人柄に思いを寄せ
その方達の生活環境に想いを馳せる

どんな生活をしているのだろうか

どんな毎日を過ごされているのだろうかと

ゆるりゆるりと
本を読み続ける中で
人は環境によって
こうも変わるのかと
考えるようになった

その結果

目の前の人の行動や思想は
きっと生活環境の影響を
受けているのではないかと
考えるようにもなった

不安の多い方は
不安に駆られる何かが
その生活環境の中にあるのだろう

きっとその何かは
探してもわからない無意識のものかもしれない

そんなことを考えられるようになると
目の前の人の言動に
あまり動揺しなくなってきた

いや嘘だ

動揺はする

目の前の人からぶつけられる感情に
私の心は波打ち
動揺は心拍を早め
手先に震えが起こることもある

自分の体に起こっていることを認識し
相手の言動が何に対してのものなのか
冷静に眺めてみる

私に対してぶつけられたものではなく
もっと大きな存在に対して向けられる激情

それを認識し語りかける

そうした振る舞いにより
相手の心も落ち着き
私の心にもそよ風が吹き始める

そんなことを思い出しながら

今日もまた

読んだんだか読んでいないんだか
積んだんだか積んでいないんだか
といった本達の中から一冊紹介し
心の琴線に触れた一節を取り上げ
ゆるりと書き記していきたい

今回はこちらの本を読んでは独り言

図書館で借りてきた絵本

いつものように直感的に
手に取ってみたが
心や精神について
考えさせられた

冒頭に私の書いた話は
最近マイナンバーカードの
オンライン資格確認について
患者さんに説明する際のエピソードを
思い浮かべている

患者さんの反応は様々だ

中には政府に対する不満を
感情たっぷりに爆発させる方もいる

私に向けられるというよりは
政府に対して向けられているのだが
目の前で激情に身を任せて荒ぶる言葉は
ふと間違えると私の心に突き刺さる

自然と体は防衛反応を示す

そんな体験の中

相手の言動を
まずちゃんと聴くことがに注力し
その後には
自分の心の声を
まずちゃんと聴くことに努める

そんな日々を思い出し
心身の繋がりを考えるのであった

さてさて

いつものように
引用する必要があるんだかないんだか
引用の定義を考えては
自己ツッコミを入れつつ
noteの引用機能を用いて
引用させていただきたい

その夜、わたしが泊まることを、男はとうに承知していた。
そこからいちばん近い村でも、歩いて1日半はかかるので。
そのあたりの四つか五つの村々は、
車もかよわぬ山腹に、点在し、孤立していた。
村人は、きこりと炭焼きで暮らしていたが、生活は楽ではなかった。
冬も夏も気候はきびしく、家々はきゅうくつに軒を接して、
人びとはいがみあい、角をつきあわせて暮らしていた。
かれらの願いはただ一つ、なんとかして、その地をぬけだすことだった。

男たちは、焼いた炭を二輪車で
都会に売りに出かけては、またとって返すのくりかえし。
まるで、水とお湯のシャワーを交互に浴びるようなもので、
どんなに堅い良心も、いつしかひびいってしまおうというもの。
女たちは、お互いへの恨みのスープを、ぐっつぐっつと煮えたぎらせて、
どんなことにもめらめらと、競争心の心を燃やす。
炭の売上をめぐっても、教会の陣どりをめぐっても、
争いのたえぬありさま。

おまけに吹きすさぶ強い風が、
たえず神経をいらだたせ、
自殺と心の病いとが、
はやりとなって、
多くの命をうばいさる。

(中略)

1913年ごろ、村には、11、2軒の家があったが、
住んでいたのは、たった3人だけだった。
みな、粗野な人間で、それぞれがいがみあいながら、生活をしていた。

未来への夢もなく、
気品や美徳を育むような環境でもなく、
かれらはただ、死を迎えるために生きていた。

いまはすっかり変わっていた。空気までが変わっていた。
かつてわたしにおそいかかった、ほこりまみれの疾風のかわりに、
甘い香りのそよ風が、あたりをやわらかくつつんでいた。
山のほうからは、水のせせらぎにも似た音が聞こえてきたが、
それは、森からそよぎくる、木々のさざめく声だった。
いや、水場に落ちるような水の音も、どこからか聞こえてくる。
いってみると、なみなみと水をたたえた噴水がつくられていた。
さらに驚いたことには、そのすぐそばに、1本の菩提樹が立っている。
葉の茂りぐあいからすると、芽生えて4年になるだろう。
それはまさしく、この地の再生を象徴するものだった。

(中略)

わずか8年を経ただけなのに、生気とやすらぎが
あたりの村々にみちあふれていた。

(中略)

一つ、また一つと、村々が再興されていった。
平地に住んでいた人たちが、高く売れる土地をひきはらって移り住み、
このいったいに、若さと冒険心をもたらした。
道々のいたるところで、若い男女が笑い、陽気な声をあげている。
かつての村人たちにくらべたら、見ちがえるほどなごやかな心で、
人びとは生活を楽しんでいる。

ジャン・ジオノ フレデリック・バック 寺岡襄. 木を植えた男. あずなろ書房, 1989, 11p

目の前の人の背後には
どんな生活環境があるのだろうか

それは

住んでいる家なのかもしれない
家の周辺の環境なのかもしれない
一緒に過ごす人の存在なのかもしれない
普段の生活で何を見ているかということなのかもしれない

そんなあれこれが

目の前の人の心に
何らかの影響を与えている

そう思いながら

自分の心が安らかに保たれているのは
家族や職場の人たちをはじめ
私に関わってくれる全ての人が
良い影響を与えてくれているのだなぁ

そんなことを教えてくれた絵本体験であった

全ての物に感謝の念を持ち続けたい

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