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絵本『これがぼくらにぴったり!』を読んでは独り言

探し物をしているとき

探し物と言っても
失くした物を探す訳ではなく

例えば

新しい洋服
新しい車
新しい家
新しい仕事

といった具合に
これから自分の人生に迎え入れる
探し物を見つけようとしているときのことだ

そんなとき

自分に合う物はどれか?

と考えるのではないだろうか

自分に合っている洋服
自分に合っている車
自分に合っている家
自分に合っている仕事

考える内に
その対象に対する期待は
どんどんどんどん膨らんでいく

まだ手にしてもいないのに

そして実際に手に入れた際に
期待の大きさに反して
がっかりしてしまうことがある

何とも勝手なものだ

勝手に期待して
勝手に失望する

探し物に限らず
それこそ人間関係においても
勝手に期待して勝手に失望したりする

期待してしまうのはなぜか

最初は妄想や想像だったものが
まるで現実のものに無意識に置き換わり
その内からじわじわと存在感を主張する期待

そんな感じなのかもしれないし
そうではないのかもしれない

そんなことを考えながら

今日もまた

読んだんだか読んでいないんだか
積んだんだか積んでいないんだか
といった本達の中から一冊紹介し
心の琴線に触れた一節を取り上げ
ゆるりと書き記していきたい

今回はこちらの本を読んでは独り言

いつものように
タイトルと翻訳絵本というだけで
図書館にて直感的に選んできた絵本である

以前にも書いたことがあるが
翻訳絵本を手に取ろうとするのは
日本以外の場所で作られた絵本には
日本以外の文化や歴史や価値観が眠っていると思われ
それに触れるのを楽しみにしているからである

決して日本人作家の絵本が云々
という訳ではないので悪しからず

ちなみにここから
絵本の内容のネタバレが
含まれているので
これまた悪しからず

・・・・・・

この絵本は
主人公のロンソンさんが
切れた靴紐を買うことから始まる

新しい靴紐と
履き潰す寸前のような靴を対比し
何だか落ち着かなくなったロンソンさんは

靴を買い替え
服を買い替え
妻の服も買い替え
住んでいた家も買い替え
家の中の家具も買い替え

どんどん買い替えていく
借金をしながら

やがて
持っていたお金も
借金も無くなったロンソンさん夫婦のもとに
お金を返せと貸した人達が押しかけて…

さてさて

そんなお話の中から
最後の数頁を

いつものように
引用する必要があるんだかないんだか
引用の意味を考えては
自己ツッコミを入れながら
noteの引用機能を用いて
引用させていただきたい

こうして、
ふたりの もっていた おかねと、
かりた おかねは、
すっかり なくなってしまいました。
やがて、おかねを かした ひとたちが、
はやく かえせと おしかけてきました。
でも、ロンソンさんたちに かえす おかねは、
もう まったく のこっていません。

そこで おかねを かした ひとたちは、
かわりに ロンソンさんたちが かったものを もっていってしまいました。

あたらしい ベッド、じゅうたん、いす、
それから おやしきまで、なにもかも ぜーんぶ。

あたらしい ようふくだって
もっていかれて しまったのです。

いまや、ロンソンさんたちのところには、
あたらしいものは、なに ひとつ
のこっていませんでした。
あの あたらしい くつひも さえも。

そこで ふたりは、こわれそうな いすや
ぼろきれのような じゅうたんなどを せおって、
もとの ふるい いえに かえっていきました。
ロンソンさんが だんろに ひを おこすと、
ひは、きもちよく ぱちぱちと もえました。
ロンソンさんのおくさんが だんろの ひで
スープを つくると、スープは、ことことと
いいにおいを ただよわせました。
すると じきに、ちいさな ふるい いえは、
あたたかくて、ここちよい いえに なりました。

「このいえに あるものは、どれも ふるくて こじんまりと しているが、
 なんだか おちつくねぇ。ぼくらに ぴったりじゃないか」
と、ロンソンさんが いいました。
「ええ。じぶんたちが ぴったりと おもえば、それが ぴったりなんですね」
ロンソンさんのおくさんは そういって、しあわせそうに ゆりいすを ゆらしました。

アン・ローズ アーノルド・ローベル こみやゆう. これが ぼくらに ぴったり!. 好学社, 2020, 22p

自分にぴったりの物は何か

探し物をする際に
ぶち当たる問いのひとつだ

ぴったりの物を探したがるが
探し物が見つかったと思いきや
その対象に自分を合わせてしまう

そんなものなのかもしれない

そういった意味では
既に長年寄り添った物達は
その人にとって
代えのきかない物なのかもしれない

既にぴったりになっている

そう認識できるかどうか

そこが鍵なのかもしれない

そうは言っても様々な都合で
新しい物を探さなくてはならないこともある

その際には

ぴったりの物を探して
期待を膨らませすぎるのではなく
ある程度のところで探すことはやめて
自分が対象にぴったりだと思えるかどうか
それが大切なのかもしれない

そんなことを考えさせられた絵本体験であった

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