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体癖という宿命:人生はロールプレイング(LARP)

心と体は,誰でも一つのものである.
心の要求がある方向に偏っていれば,体もその方向に偏って成長し,姿勢や行動の偏り習性として現れる.
このような体の癖を体癖(たいへき)という.

各人が,そういう生まれつきの体癖という宿命によって生きている.
したがって,人生とはそれぞれに与えられた役割を演じる RPG のようなものだ.

本記事では,心と体とを結びつける体癖論の研究を進める一助となるべく,用語の定義や体癖論の意義,具体的な人間観察の手法などについて——Wikipedia が,事実も意見もごっちゃにして魅力的な情報をかき集めただけの,無責任なまとめサイトに思えるくらい——厳密に述べる.


1. 序論

1.1 圧縮エネルギ

人間は,技術の進歩にともなう生活様式の改善により,日常生活において著しい体力の余剰をきたしている.
そのような余剰エネルギは,ほかの動物と違って体の労力を不要としている人間にあっては,肉体の発達や体力の充実にならない.

動物のすべては、環境に適応してその機能、形態を変えることによってその生存を全うしているのであるが、独り人間だけは環境を自分に都合のよいように変え改めて、環境を人間に適応させることによって生きているのである。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 22.

しかし人間もまた動物であり,環境に応化適応する能力をもつことには変わりない.
そのため,改善した環境に住めば,その環境に適応して体の機能や形態を変えることは当然である.
したがって,技術の進歩体の退歩となってあらわれ,また次の改善の必要に迫られることになる.

かくして人間の潜在活動力は,体の中で凝集して密度を増し,圧縮されてゆく.
ところが,生きものはエネルギの集散の平衡状態を保とうとするため,エネルギが鬱滞すれば鬱散要求が生じ,エネルギが不足すれば集注要求が生じる.
人間の場合,体内で鬱滞した圧縮エネルギは,体のかわりに頭の活動に変換されて煩悶の種となり,感情として噴出することになる.

しかし子供の場合は大人よりも,頭で考えるより体で感ずる方が速く,また生理的変動として率直に現しやすい.
危ないことをして遊んでいる子供に「いけません」と言って制すると,子供はそれを頭で理解できても,体は本能的に自由を欲している.
したがって,その窮屈を感じたことに対して鬱散を要求するようになり,放縦へと追いやられる.

元気な子供はエネルギーの鬱散に忙しく,他の注意をそう問題にしない.
ところが,弱い子供はこの逆の現象として,注意の要求が生ずるため,周囲から無関心で忘れられていることが何より嫌で,注意を得られることなら何でもやってしまう.
そうすると大人は叱ったり褒めたりするわけだが,その区分は大人の頭にだけある.
しかし子供の体はそれらを同じものとして受け止めてしまうから,叱られても褒められても親の注意を得られればそれでよく,子供はその集注する方向へ伸びる
それを理解できない大人は,褒めるより叱る方に集注するから,叱言(こごと)によってその行為を育てている
これは子供が人間性が悪いのではなく,明らかに大人の責任だ.

集注要求は犬にもあり,ご主人様の注意をひくためなら,飛びかかったり吠えたり,何でもする.
その結果ご主人様が喜ぼうが怒ろうが,犬は——言葉が通じずとも,感情は読み取れるとされているにも関わらず——どちらでも嬉しい.
これが,褒めて躾けるのは簡単なのに,叱って躾けるのが不可能といえるレベルで難しい理由であり,人間の子供についても同じだ.

ところで,集注要求が犬系なら,鬱散要求は猫系なのかということになるが,行動原理という点ではあながち間違いではない.
になったんだよな君,相手の注意を得るためというより,自分で自分の要求を満たすために行動しているから,自由奔放で関係もさっぱりしている.
すなわち,行動の起点ちゃんが自分にあるか相手にあるかというのが,平衡要求の二方向の違いといえる.


エネルギの流れがつかえていて凝集密度が高まると,自ずと圧縮もれ現象を生ずる.
ペットに愚痴をもらしたり,すぐふてくされたりするのがそれだ.
適度に圧縮もれが行われていれば,大きな噴出はない.
ところが,ルールや干渉などにより圧縮もれが閉ざされてしまうと,余剰エネルギの圧縮率が高まり,それが噴出速度の増大となって現れるから,つい行動が過激になる.

圧縮エネルギの昇華(噴出)方向には,

  1. 大脳昇華

  2. 行動昇華

  3. 本能的流出

があり,この相違が体構造の差をもたらす.
これらをもう少し細かく分類したのが,1.4 節に示す 6 型の偏り運動習性である.

しかし噴出様式だけが体癖理解の道ではない。
圧縮エネルギーの噴出は他人にとっては突発的、偶発的であり、騒々しくはた迷惑であることが多く、まことに困ったことであるが、しかし圧縮エネルギーが自噴するうちはまだ始末がよい。
これが噴出しないでうちに凝固してしまった凝縮エネルギーほど始末の悪いものはない。
好意でしてあげたことを悪意にとって絡むくらいは序の口、自分を悪い方へ悪い方へと走らせ、自己破壊で他人を困らせるようなことも珍らしくない。
陰鬱無言、不平不満、怨恨憎悪の塊りのようになって暮している人すら稀ではないのである。
凝固爆発の端的は破壊であり、自分を破壊に導くために、人をも傷つけるようなことが少なくない。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 21.

一見すると偶発的に思える,圧縮エネルギの 噴出・凝固 特性には,人によって一定のがある.
これは,2.2 節で述べる 12 種類の体癖として整理できる.
そして,この癖を決めるのが,種族や個体によって異なる「要求」の方向である.

1.2 要求の方向と感受性の偏り

生きものには皆,身体運動の特異性の習性(体癖の現象)が存在する.
生きものの生きものたるゆえんは,うちなる要求を果たすべく,その運動系を駆使して,自力で活発に動き続けることにある.

生きているものと生きていないものとは違う。その相違は、生きているものは成長し繁殖しかつ自らの力で動くということであります。
自動車も電車も動くが、生きているものの特色は自分の力で動く。
他の力ではない。
しかも、うちの要求を果たそうとして動く。

野口晴哉:『整体入門』(ちくま文庫,2002)pp. 73–74.

ここでいう要求は,頭で考えた後付けの理屈ではなく,産まれたときから体の中にあるものを指す.
要求のもとは生きようとすることであり,要求 = 生命 としても過言ではない.
外的要因は感受性に対する刺激として働くが,感受性そのものは内部的な理由,とくに要求によって左右される.
要求は,自分の生命と結びついて最も体に感ずるものに誘導される.

生きものの根本的な要求は,
(1) 種族保存の要求
(2) 成長の要求
(3) 自由行動の要求
の3つである.
生きものの動きの元には,必ずこれらの要求がある.
これらの要求を満たすことが生きものにとっての幸せだから,汲々として作られた娯楽を追い求めていても幸せにはなれない.

ただし,体構造が異なれば,要求の現れ方も変わる.

たとえば牛🐮✋は,母牛の母乳を飲んで育ったのだから,動物質のものを食べても不思議はないが,草しか食わない.
虎にとってのご馳走である羊肉になど,見向きもしない.
逆に虎は,野菜の山を見ても,食べ物があるとは思わず,野菜の倉庫でお腹を空かしている.

牛が草を食するのは,その気がおとなしいからではない.
虎が肉を食うのも,その性がすさんでいるからではない.
これは各の体構造により,体構造が違えば,体運動習性も,感受性も,要求の現れる方向も,みんな異なってくる

人間の行動もまた,もとを正せば,各人の体構造のもたらす体運動習性に他ならない.
ただし,人間の行動習性や生活習性は,ほかの動物よりはるかに複雑だ.

要求がある方向に偏ると感受性も偏って、感じ方の度合いも変わってくるのであります。

道に一万円札の紙幣が落ちていても、牛は平気でそれを踏んでゆくが、人間になるとそうはゆかない。
あたりを見廻してから、慌てて拾おうとしたり、見るが早いか素早く拾う人もある。拾ってから周りを見まわす人、ためらって横目で見て通り過ぎる人もいる。
一枚の紙幣が人間に色々な動作の相違を引き起こすような刺激物になるということは、人間の感受性がそういう方向に偏っており、その方向に体運動が行われていくということであります。

野口晴哉:『整体入門』(ちくま文庫,2002)p. 72.

ほかの動物は,要求がそのまま行動になっている.
しかし人間は,意識しない運動に加え,頭で考えたり感じたりして生じる,ある感受性を通した意識的な運動が動作の代表になっている.
したがって人間の運動は,立姿による大脳動作ということに特徴がある.

人間は二本足で立って手を使って生活している唯一の動物です。
したがって人間の身体運動の重点は立姿動作にありますが、この立姿動作を人間はどのように保っているのでしょうか。
その平衡を保つ働きを観察することが「体癖」を知る第一の鍵になります。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 76.

ここで述べる体癖論の研究対象は,「生きた人間」の体癖である.

1.3 体の波(体周期律)

反応の習性は人によって異なるが,同じ人が同じ状況にあっても,日が変われば違ってくる.
この違いを生むのは,その時の気分である.

人間には周期的に,その運動状況に

  • 緊張傾向が濃く現れる高潮期

  • 弛緩傾向が濃く現れる低潮期

がある.
これを体の波(体周期律,周期律特性)とよぶ.
体の波は体癖素質だから,心の動きに影響し,その時の気分をつくる.

たとえば,快感を覚える対象は

  • 高潮期:原色,大きな音,

  • 低潮期:淡色,小さい音,

と交互に繰り返される.
体癖的な傾向としては,

  • 高潮期:偶数体癖・腰の緊張傾向・躁・能動・陽,

  • 低潮期:奇数体癖・腰の弛緩傾向・鬱・受動・陰,

といった波となる.

私は,躁鬱は特殊な病気ではなく,誰にでもある体の波だと考える.
ただ,体の調整がつかないと,その波の程度が著しくなってくるのだと思う.
しかし,体の波を理解していれば,

  • 高潮期:少し気張ればやりすぎになるほどだから,積極的に活動し,

  • 低潮期:いくら気張っても仕事ははかどらないから,静かに休む,

というように柔軟に対処できる.
その波の移り変わる時が,体を修正する急所である.

ところが,社会人はいつも一定の仕事を要求される.
体を修正する暇もなく働き続けていれば,現代病と呼ばれる様々な心身の不調を呈するのも当然である.

誰の体にも無意識のうちに波が存在するが,その周期や程度は人によって異なる.
丈夫な人は高潮期が長く,小児は低潮期が短い.
寿命が少なくなるほど低潮の度は強まるが,最期の瞬間まで高低を繰り返す.
ただし,禁点に硬結ができると波は停止し,急に良く/悪くなったかのように見えるが,4日以内に4ぬという.

体の波は,文字どおり潮として,月の周期による影響を受けるようだ(Cf. 暦物語 5.1.3 節).

体内の水も、海の水と同じく、その高低の潮は月の影響によるものらしく、大高低の波は三年半また七年、中高低の波は八十週。小高低の波は四また八週で動く。
さらに小さな波は一日の間にもある、一週の間にもある。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 72.

このうち,

  • 1日または1週の波は食,

  • 月または年の波は性,

に関連している.
体の波は体勢とも関連しているため,体癖の変動から波を知ることもできる.
日記でもつけておけば,その波に気付けるだろう.
体の波を知っておけば,働ける時期や何もできない時期に見通しが立つため,予定しやすくなる.

何かやろうという意欲が生じたのに,何らかの都合でその時に終わらせないでいると,気が抜けてやる気を無くしてしまうのは,高潮期から低潮期に移ったためといえよう.
このように圧縮エネルギが噴出に至る許容量も人によって異なるし,その噴出速度が凝集密度に反して遅い人もいる.
さらに,定期的に波は乱れるが,その乱れ期間にも長短がある.

これらはいずれも体癖素質だから,周期律特性によって計 48 類に分けられるが,正確に分類しようとするとキリがない.
その上,体の波を判別しようとすると,長期的な観察が必要となる.
したがって,体癖素質としては,2.2 節で述べる計 12 種を考えた方がわかりやすく,実用上も十分である.

次章からは,体の波によって体癖が原型から変わってくることを前提として,計 12 種の体癖分類について論ずる.

2. 総論

2.1 体癖とは

体癖は,整体操法の開祖である体育家・野口晴哉はるちか)(1911–1976)がまとめた,個人ごとに異なる——生命の方向すなわち要求の方向にある——心身の偏り習性の関係をあらわす類型である.
野口については,下記で解説する.

野口は,毎日 100 人以上もの人への生活指導や整体指導を何十年も続けるうちに,風邪の経過には人によって一定の方向があることを見出した.
その個人の特性を分類しているうちに,風邪のコースと体の構造,体量配分,体の偏り運動習性,感受性の偏り反応習性,そしてそれらを左右する要求の方向が,みんな関係していることが明らかになった.

そこで,その人の運動の中で,どれが一番強く行われるか,これを偏り運動としてその方向を調べ出し,6 型 12 種の類型にわけたのが体癖研究のはじまりだったという.
すると,誰でも,体の中にある体癖素質がそのまま行動になっていることがわかった.
そこで野口は,無意識の行動を丁寧に観ていけば,その生命の在り方というものがわかるのではないかと考え,生涯を通じて体癖を追究しつづけた.

体癖とは、読んで字の如く、体の癖のことである。

野口晴哉:『整体入門』(ちくま文庫,2002)p. 72.

体の癖とは体癖現象を指し,感受性の偏り反応を左右する——体運動の偏り以前に生まれたばかりの赤ん坊にもある——要求の現れる方向の偏りである体癖素質とは区別する.
すなわち偏り運動習性は,体癖現象ではあるが体癖素質ではない.
単に「体癖」という場合には,体癖現象も体癖素質も含んでいる.

体癖現象は,体運動の偏る傾向のほか,臓器や心のはたらく傾向,感受性の偏り反応としてあらわれる.
体癖現象は修正できるうえ,2.3 節で述べる体癖の複合状態:複合体癖における体癖現象的なものは,エネルギが余ってくると消える

体癖素質は,感受性の偏り反応を左右する要求の方向に,なんでもかんでも結びつけてしまうというところにある.
偏り反応は過敏反応であり犯されやすいから,体質(体の性質)というよりむしろ素質(本来の性質)に相違ないというわけで,体癖素質と定義した.
体癖素質は生まれついて生涯変わらない素質であり,波のように強まったり弱まったりし続ける.
この体の波も体癖素質だから,心の動きに影響し,その時の気分をつくる.

さらに細かくいうと,体癖素質とは,

  • エネルギの分散の特徴

  • 反応の起こる特徴

  • 運動の特徴

  • 感じ方の特徴

  • 咄嗟の時に思わずしてしまう動作の特徴

であり,理性的な動作以外で行動するとき:

  • びっくりしたとき

  • 居直ったとき

  • 怒ったとき

  • 言い訳するとき

  • 負けたとき

  • 威張るとき

に丸出しになる.
喧嘩しても酔っても,同じ条件が重なれば同じ行動を繰り返すのが体癖である.
すなわち,体癖は無意識の癖であり,錐体路すいたいろという意識運動の経路を抜きにして意識せずに行う錐体外路系運動の偏り習性として表れる.

だから,何種体癖的な行為をしているか,どんな特徴があるかは,自分自身では絶対に気づかない.
そのため,体癖を自己評価すると,ありとあらゆる体癖素質があるように思ったり,ちっともあてはまるものがないように思ったりしてしまう.
しかし,思わずしてしまう誤魔化しようのない動きであるため,かえって周りの人は観察しやすく,遠い人ほどわかりやすい.

このように,客観的な観察によってのみ判別できるという点に,主観的な自己評価に基づく性格類型論との決定的な違いがある.
また野口の関心は「生きて生活している人間の体癖」であり,「生きた人間」の動きからすべてが出発している.
性格診断テストや血液型,手相のように,ある固定したパターンから簡単に人を判断しようとするものではない.

体癖のイメージをつかむためのやさしい解説は,多くのサイトで見られる.
ただし,分かりやすさと正確さとはトレードオフだ.
厳密な説明は,野口による原典を参照されたい.

2.2 体癖の分類

6 型 12 種の体癖分類を次に示す.

1.2 節で述べた,人間の最大の特徴である立姿運動は,次の6つの動作の重ね合わせとして表現できる.
なお 6 方向というのは,3 次元空間において剛体がとりうる動きの自由度:6DoF(位置 3 自由度 + 姿勢 3 自由度)に等しい.

  1. 上下

  2. 左右

  3. 前後

  4. 捻れ:半円回転,捻転

  5. 伸縮:伸び縮み,開閉

  6. 遅速:運動自体が速い/遅い,運動が行われる時間が短い/長い,敏鈍

一方,1.2 節で述べた,体構造の差をもたらす圧縮エネルギの昇華方向を細分化すると,上記の立姿運動と対応する次の 6 方向となる.

  1. 上下型

  2. 左右型

  3. 前後型

  4. 捻れ型

  5. 開閉型

  6. 剛柔型

これら 6 型が,個人によって割合の異なる偏り運動習性である.
ただし剛柔型は,体のある部分に独特な偏り運動習性があるわけではなく,生まれついてずっと変わらない体そのもののある状態という面で特異だ.

さらに各型は,圧縮エネルギの噴出速度によって次の 2 種類に分けられる.
なお偶奇は,感受性の方向からみると明らかに区別される.

  1. 鬱散要求体癖(奇数体癖):噴出が速い.

    • 高潮期の腰の緊張傾向と一緒に濃くなる.

    • ある一点を緊張させて動作する緊張原理動作.

    • 積極的な奇数種は,自発的に内から外に働きかけてエネルギーを分散してゆく.

  2. 集注要求体癖(偶数体癖):噴出が遅い.

    • 低潮期の腰の弛緩傾向と一緒に濃くなる.

    • ある一点を弛緩させて動作する弛緩原理動作.

    • 消極的な偶数種は,受け身になって周りからの刺激にすぐに応じて動いてゆく.

    • 常に対象を意識して,他者からの注意を要求して行動する.

    • 自ら表に発散せず,内攻的で凝固しやすい.

野口は,体癖素質の説明を奇数体癖で代表しており,「一種」が二種を表している場合があることに注意する.

偶数体癖は要求する方でないから,どこかを修正すれば変わってくるのですが、奇数の方は変わらない。
そこで体癖素質として奇数体癖の説明をいたしました。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 213.

また,偶数体癖は奇数体癖の低潮期における特徴と一致する面がある.
たとえば捻れ型において,勝とうとする七種と,負けまいとする八種とが,交互に濃くなる.

七種の体癖素質は行動型であり闘争型である。
だから二言目には”勝敗を度外視してことを為せ”と言う。
それだけいつも勝ち負けに関心がかかっている訳だが、面白いことには、その勝とうと思う時と、負けまいと思う時が、交互に来るということである。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 69.

したがって私は,偶数体癖は体の波における低潮期の状態であり,体癖素質として持っているのは偏り運動習性の型の方だと考える.
ただ,見えない体癖素質を追いかけてゆくより,見える体癖現象をつかまえた方がわかりやすいので,偶数体癖も含めて体癖と呼ぶ.
体癖は,圧縮エネルギの 噴出・凝固 特性によって,次の 12 種類に分かれる.

  1. 一種:大脳昇華

  2. 二種:間脳昇華

  3. 三種:感情鬱散

  4. 四種:太陽叢凝固

  5. 五種:行動鬱散

  6. 六種:胸部凝固

  7. 七種:闘争心昇華

  8. 八種:腰部凝固

  9. 九種:性欲昇華

  10. 十種:下腹部凝固

  11. 十一種:-

  12. 十二種:-

このうち圧縮エネルギの凝固速度が速いものは,九種 > 七種 > 六種.

ところで,九種体癖である野口は,九種体癖は人間の原型だと述べている.

生き物は勘で動く方が本当だし、咄嗟の動作でも普段の行動でも、裏にあるのは無意識の要求なのです。

ところが勘でパッと行動を決められるなら、考えて動作することはなかったろうと思うのです。

そういう本能的な傾向が鈍ってきてから、行動が考えというものと結びついたのだと思う。

だから九種は人間の原型だと思うのです。

そういう面は、強い弱いの違いはあっても、誰にでもある。

そういう素質が弱くなるところに、他の体癖素質が出てくる余地ができるのだと思っているのです。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 241.

この本能が弱まる原因となったのが,おそらく農耕の開始(新石器革命)にともなう分業による偏り運動だった.
今もなお分業は,職業として現代人の生活様式の基礎となっている.

誰でも、体の動きに偏り運動が無意識に行われます。その主なものは体癖です。
職業という分業が行われるようになって、偏り運動の繰り返しです。体のある部分が余分に使われ、また使われることが足りない部分があるということです。

野口晴哉:『整体入門』,(筑摩書房 ,2002),p. 218.

動物の体は,無意識の活元運動によって日々,整体される.
したがって原始人は,どんなに疲れ果てても,ぐっすり眠って体力を全回復するため,翌日に疲労を持ち越すことはなかったはずだ.

ところが,分業による偏り運動の繰り返しや,それにともなう体癖の多様化,さらには——何世代にもわたって食べ物に少量の有害物質を混入させてきたことなどによる——松果体しょうかたい)の石灰化で生じた第六感(直観)の退化など様々な要因で,人間は動物としての本能をほとんど失っている.
そのため不随意運動である活元運動が十分に行われなくなり,偏り疲労が蓄積し,結果的に不調や現代病としてあらわれている.

さて,野口は,原始人はみな野生の動物と同じように本能で動く開閉型だったが,分業が行われるようになってから,それ以外の体癖素質が生まれたと推論している.

昔々は、そういう集注力の強い野生の強いものと、弱いものとの二つしかなかったのではあるまいか、それがいろいろ偏ることによって、いろいろな体癖ができたのではないだろうかというようにも考えられるのです。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 239.

したがって,開閉型は最も原始的な体癖といえよう.
その体は種族保存に適するようにできているから非常に丈夫で,もっと言うと野蛮だ.
整体において,体が野蛮だというのは,心が天真爛漫だというのと同じで,最高の褒め言葉である.

また九種の特徴はしつこいという形で現れるが,子供は皆しつこい.
もちろん子供の頃はそのしつこさに無自覚だが,大人になると子供が「しつこい」と感じてしまう.
この理由について私は,誰もが人間の原型である九種的な特徴をもって生まれてくるが,家庭や社会に馴染むことで偏り発育が進み,大きくなるにつれてそれぞれ異なる複合体癖の体が固まってくるためだと考える.

さらに九種は非常に頑固で,TPO を弁えず自分の信念を貫き通すから,どうしても集団になじめない.

けれども九種はもともと強情なのです。
九種の人がいったん何か言いだすと、合理的でも不合理でも、その時と場所に合おうが合うまいが、どうしてもそれを通してしまう。
だから九種体類というのは始末が悪い。
本当は虎やライオンのように、ひとりで暮らすべきものなのです。
サルやキリンのように集団で暮らすのに合う性質ではないようです。
けれど人間の恰好をしているものだから人間の仲間に入っていますが……。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 244.

原始人がみな開閉型だったならば,人類は本来,集団で生活する生きものではなかった可能性がある.
定住して分業する農耕社会の前,移住する狩猟採集社会の生活様式は,たしかに大きな群れには適さないと推察できる.

また,九種は性欲昇華かつ孤立するので男性的,十種は骨盤の開傾向による性欲の愛情昇華なので母性的ともいえる.
では,原始時代には,九種の男が一人ないし数人で狩りを行いながら種をまきちらし,十種の女が採集と子どもの世話をしていたのだろうか?
開型十種は閉型九種と違い,自分の子だけでなく,抱え込んだ対象すべてに平等な愛をそそぐから,女は集団で子育てしていたのかもしれない.

一方で野口は,上下型を男性的,左右型を女性的な体癖素質だと説明している.
それらの体癖素質が生まれる前の原始時代には,閉型九種が男,開型十種が女というように分かれていたのだろうか?

同じ体癖・体量配分でも,男と女とでは違う面が出てくる.
特に複合体癖や開閉型の場合には差が顕著だという.
生殖器型は,骨盤の開閉に特色があるから,性差が大きいのも当然である.

しかし,開閉型以外の体癖にも男女差はある.
これは,男女が体の構造からいえば全く別の生きもので,体構造が違えば感受性を左右する要求の方向も変わってくるためだ.
男と女との違いについては,2.6 節で改めて述べる.

さて.次節で述べるように,体癖は両親のどちらかかその兼用を受け継ぐので,純粋な開閉型の両親から生まれた子もまた開閉型となる.
したがって狩猟採集社会では,誰もが愛憎を行動の原理としていたはずだ.

利害得失が先行する前後型に偏った現代社会でも,愛を基軸とする原始時代の名残を垣間見ることはできる.
近未来において,人類は生きものの存在意義が愛に帰着すると気付くかもしれないし,AI が愛を理解して新たな生命になるかもしれない.
これについては下記で論じている.

2.3 複合体癖

家族の風邪の型に着目すると,子供は両親の風邪の型のどちらかを引き継ぎ,1/5ぐらいが兼用だという.
風邪の型は体癖によって決まるから,子供の体癖は,両親のどちらかかその合いの子になる.

ところが,上下型一種の父 + 閉捻れの母 → 左右型三種の娘 というように,別の体癖の子が生まれることもある.
これは,潜在体癖が隔世遺伝のようにあらわれたり,両親の体癖素質が混じり合うことで別の体癖の体の形になったりするためだと理解できる.
このように,人は体癖の異なる男女から生まれるのだから,一人のなかに二つ以上の体癖が混ざった複合体癖となるのは珍しくない.

体癖論の初学者は,すべての人が 12 種類の体癖のどれかにピッタリ当てはまると勘違いしやすい.
しかし体癖は,互いに独立な類型ではなく,個人を形づくる原色的なものだ.
減法混色において,

  • 赤❤️(三種)+青💙(一種)=紫💜,

  • 青💙(一種)+黄💛(五種)=緑💚,

  • 全部の色が混ざると灰色🩶(九種),

となるように,混ざれば原色はなくなってしまう.
体癖と色との関係は,下記で改めて考察する.

体癖も色と同様に,複合すれば,原型とはぜんぜん違ったものに変わってくる.
したがって,体癖素質を類型的に見てきた知識が,そのままあてはまることはほとんどない.
そこで,実際に体癖の観察に入る前に,複合体癖という概念を導入する必要がある.

野口は,複合体癖を何型何種何種・何種という一組で説明している.
X を偏り運動習性,$${m}$$ と $${n}$$ とを自然数とおくと,複合体癖は次のように表せる.

〈X 型 $${n}$$ 種〉とは,体の恰好かっこうは X 型だが,感受性・動き・顔は $${n}$$ 種ということだ.
すなわち閉型九種のような原型だけでなく,開型三種や上下型五種など,形と動きとの組み合わせに制限はない.
一応は表に出て見えるもの,形に現われているものを前面に出す.
つづく $${n}$$ 種は,潜在体癖や後天的な体癖などいろいろだが,体癖現象的なものは,どこかを修正したりエネルギが余ってきたりすると消える.
$${n}$$ 種が応援している X 型だから,主体は X 型のまま変わらない.

〈$${2m-1}$$ 種・$${2n}$$ 種〉($${2m-1}$$ 種と $${2n}$$ 種との混じり)とは,高潮時に奇数 $${2m-1}$$ 種傾向を呈し,低潮時に偶数 $${2n}$$ 種傾向を呈するというように,体の波によって,異なる型の体癖傾向が交互に濃く現れるものをいう.
2つの体癖が交互に強まったり弱まったりする場合,それらは体癖素質であり,生涯変わらない.

高潮期に濃くなるのは、腰の緊張傾向と一緒に濃くなる体癖だから奇数種、低潮期の腰の弛緩と一緒に濃くなるのは偶数種なのです。
そこで、体癖が混り合う場合は、両方とも奇数種、両方とも偶数種ということはない。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),pp. 54–55.

両者の違いは,体の波によって,動きとして現れる偏り運動習性の型が変化するかどうかにある.

だから何型何種と言うのと、何種何種と言うのは、表現の違いではなくて実体が違うのです。
三種と二種の複合は、その体型は捻れ型になりますが、本来の捻れ型とは異なるのです。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 63.

ここでいう三種と二種の複合とは,三種・二種のことだ.
この複合状態の場合,捻れ型の四角い体になるが,七種や八種の体癖素質を両親から引き継いだわけではないから,本来の捻れ型とは異なる.しかし,体構造によって要求の方向が変わり,その方向に感受性も偏ってくるから,実際に捻れ的な感受性も持つことにはなるはずだ.
したがって,顔や動きには三種・二種が交互に濃く現れるが,体は生涯変わらず捻れ型だといえよう.
より細かくみてゆくと,次のように書き分けられるだろう.

  • 高潮期には捻れ型三種

  • 低潮期には捻れ型二種

  • 長期的には三種・二種

  • 併記すれば捻れ型三種・二種

次の場合には,一種・十種という体癖素質の複合によって,体が捻れ型になるということを併せて,捻れ型一種・十種と書ける.

それからもう一つ、開型に、捻れの加わった開型があります。これは余り多くないのですが、上下傾向と開傾向が重なると捻れる傾向になってきます。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 247.

野口は,簡単のため基本的には,複合体癖を2つまでしか明記していない.
しかし私は,体の形と体の波とをあわせて,〈X 型 $${2m-1}$$ 種・$${2n}$$ 種〉と表記した方が正確だと考える.

ここで注意しなければならないのが,野口は X 型 $${n}$$ 種と $${2m-1}$$ 種・$${2n}$$ 種との表記をごっちゃにしたり,偶数体癖を奇数体癖で表記したりすることがあるという点だ.
字面だけで考えると混乱してしまう.
たとえば,「五種七種の複合体癖」の節では次のように述べている.

高潮の時には五種がおもてにでて低潮の時には七種がおもてに出るという場合と、高潮だと七種になり、低潮だと五種になるという二つのタイプとがありますが、全然違ってしまうのです。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 125.

これを前述のルールにしたがって書き直すと,前者が五種・八種,後者が七種・六種となる.
どちらも体癖素質として前後型と捻れ型とを複合していることは共通しているが,主体が違えば複合体癖の結果として生ずる体癖行動や感受性も異なってくる.

また,次に示す「上下型三種」の節では,一種・四種の意味で上下三種と表現している.

一種(上下型)と三種(左右型)が混っている体癖を上下三種といっております。
一種は思索的です。
三種は感情的で、およそ理論的でないのだから、いろいろな理論をちゃんとわきまえていて、それが行動に現われないで「好きだわ、嫌いだわ」で決めてしまう。
この二つの性質が、周期的に濃くなったり薄くなったりするのです。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 194.

一方で,次に示す「一種・三種と三種・一種」の節では,

  1. 上下型三種の意味で一種・三種,

  2. 左右型一種の意味で三種・一種,

と表現している.

一種・三種というのは、一種の長方型の体に対して三種的な動きがあるということです。
三種が混じると、どこか穏やかなふんわりした感じが出てくるのです。
そこで一種・三種という場合には、突慳貪に見える体型の中に、少しほのかな暖かさがある。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 215.

ところが三種・一種というのは、三種の形をしていて、上下の頭の働きがあるということです。
或る時期は、それで人を吃驚させるようなことを言う。
柔らかい、いわゆる三種の形をしている人が、突然、理屈を言って、その理屈がよく通るのです。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 216.

このような反対の組み合わせでは,その特質も大きく異なるという.
三種を憎悪する九種の野口に言わせれば,上下型三種がそのよさを強調するのに対して,左右型一種はお化粧の代りに一種的な表現を使うため,両方の特質を低下させる.

このように表記が混在するため,複合体癖の解説は非常に難解だ.
また野口は,必ず奇数種と偶数種が組み合わせになるとか,対比できるような正反対の傾向を持つ体癖同士が一緒になる傾向があるとかいう意見を肯定はしていない.
ただし,複合体癖は少なくないという.

私が今まで見てきたところでは、一人の人の中に2つ3つの体癖が混っていることが少なくないことは事実です。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 89.

一方で,体癖は誰でも3つの組み合わせになると主張する体癖論者もいる.
これは,父・子・精霊の3つが一体であるとする三位一体に近い考え方だ.
しかし,分業により体癖が分かれたとする野口の見解とは異なる.

私も,体癖は3要素で表すのが妥当だと思うが,それらが異なる型とは限らないと考える.
体癖は体構造の差によって生ずる偏りだから,肉体に宿るエネルギ自体はみな同じはずだ.
そこで私は,集合的意識から分かれたエネルギが肉体に宿ることで魂となり,個々の体構造が異なることで,個人の意識もまったく異なる様相を呈することになるのだと推測する.
したがって体癖とは,ポテンシャルエネルギや電気エネルギといったエネルギの形態か,あるいは熱や仕事といったエネルギの伝達形式かの違いとも捉えられるだろう.

閑話休題.
結果として一人の中に3つの体癖があるように見える場合が多いなら,それは前述のように体の波をなす2つの体癖素質が複合することで,異なる体癖の恰好になることがあるためではないか?
それならば体癖は誰でも,体の波をなす2つの体癖素質 + 体の形,という3要素の複合体癖として表せるはずだ.

体癖素質が1つしかない場合,その偏り運動習性の型の中で,奇数種・偶数種の波があるという捉え方もできるだろう.
その場合,開閉型しかいなかった原始人の体癖も,

  1. 男:型九種・十種,

  2. 女:型九種・十種,

という複合体癖として表現できる.
実際,野口は開閉型について次のように述べている.

だから九種の圧縮もれ状態を十種だともいえるのですが、凝固度が弱い。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 240.

ところが,形で見分けのつかない上下型一種・二種体癖をどのように書き分けるかということになってしまうので,簡易的に

  1. 上型一種・二種 = 上下型一種,

  2. 下型一種・二種 = 上下型二種,

と書く方が,むしろどちらの体癖素質がより濃いのかが明確になる.
そこで,X 型 $${2m-1}$$ 種・$${2n}$$ 種という一般の複合体癖も,その割合に応じて,

  1. 高潮期が長く,奇数体癖の傾向が支配的なら X 型 $${2m-1}$$ 種,

  2. 低潮期が長く,偶数体癖の傾向が支配的なら X 型 $${2n}$$ 種,

  3. 体の波で偏り運動習性の型が変わるなら $${2m-1}$$ 種・$${2n}$$ 種,

と代表して表記した方が,本質を捉えられる場合がある.
野口も,複合体癖を2つの原色で説明している.

また遺伝する体癖素質は,偶奇を区別した 12 種類ではなく,偏り運動習性の 6 つの型だと考えることもできる.
X 型と Y 型とを同時に引き継いだ場合には,その塩基配列の順序にしたがって奇数種・偶数種に分かれ,体の波となるのかもしれない.
ところが体の形は,それらの体癖素質が複合した結果としてまた異なってくる場合があるということだろう.
そこで私は,閉型と開型というように偏り方向によって体型を二分しても,それは奇数体癖が偶数体癖かの差だから,やはり遺伝するのは開閉型というひとまとまりだと考える.
これは,親子で顔がそっくりでも,体格は異なる場合が多いことからも納得がゆく.

ここで,野口が定義した X 型 $${n}$$ 種について改めて考えよう.

前者の X 型は主体であり,生涯変わらない体の形だ.
したがって,開型十種体癖は偶数体癖だが,体の形として開型をもつ人は,どう修正しても体の形は開型のまま変わらないということになる.

一方,後者の $${n}$$ 種は顔に現れる,体の内の感受性や動きだ.

  1. 潜在体癖なら,体癖素質として生涯変わらない.

  2. 怪我や整形で後からできた体癖の場合,整体で修正できないようなら体癖素質に近い.

  3. 体癖現象なら,どこかを修正したりエネルギが余ってきたりすると消える.

そこで私は,複合体癖の一般形を次のように定義する:〈X 型 $${\sum (2m-1)}$$ 種・$${\sum 2n}$$ 種〉.
ただし,全てを表記しても逆に本質が見えにくくなるし,そもそも正確な見極めは難しい.
したがって結局は,野口のように濃い2要素で代表して,X 型 $${i}$$ 種と書いてしまった方がわかりやすい場合も多い.

体癖現象は消えるが,偶数体癖も修正すれば変わってくるという.
これは,低潮期に濃くなる偶数体癖が,体の要求する方でないためだ.
一方で,体の波は生涯変わらない体癖素質だから,偶数体癖がなくなっては波がなくなってしまう.
すると野口が「変わってくる」と言ったのは,整体によって高潮期を長くして偶数体癖のネガティブな面を抑えるという意味で,偶数体癖を存在ごと消し去れるわけではないのだろう.

複合体癖について,野口は次のように述べている.

十二種類がいろいろと混じって個人を作り、四十八類の動きによってその特性が生じているのでありますから、各自独特の個性を持ち、また、やりやすい技術あり、難しい体の使い方あり、その難しい使い方も他の人にとっては容易である等々、難しいことがたくさんあります故、これからもこの問題の追求には大変な努力が必要だと思いますが、私は少しも負担ではありません。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 287.

この言い方だと,十一種も十二種も複合体癖を形成するように思える.
しかし剛柔型は,生まれついて変わらない体のある状態という点に特色がある.
したがって私は剛柔型について,体の形として感受性の面から別の体癖の応援を受けることはあっても,体の波として別の体癖素質と交互に濃くなるように混じることはないと考える.
そのため剛柔型は遺伝しないのではないかとも思えるが,剛柔型の人を見つけること自体が難しいのでわからない.
少なくとも野口は,剛柔型の複合体癖について論じていない.

体の波で体癖の濃さが変わるとき,姿勢や体重の変化はあっても,骨格までは変わらないだろう.
したがって,変わらない体の形と,変わる体の波との両者を考慮にいれるべきだと思う.

野口は,次のようにも述べている.

しかし重要なことは、一人の人に種々の体癖がある場合には、それが二つ、三つというのでなくて、例えばえのぐの青と赤を混ぜると、ここまでが赤、ここまでが青というのではなく、やはりそれは紫という色になるというように、正反対の体癖が混ざったり、奇数とか偶数とかの反撥があったとしても、やはり混ざったものは二つの体癖の集まりではない。
その人の体癖そのものが総合的に紫であり、茶であり、グレーであるというように見るべきだと思っています。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 89.

すなわち,複合体癖はみんなそれぞれの異なる一色であり,多重人格なわけではない.
二重人格かと思うような性格の豹変も,体の波による周期的な変動であり,その波も含めて一つの人格なのである.
体癖の原色の中でどれとどれが濃く働いてこういう状態を作っているのか.
そこに男なり女なりをプラスすれば,体癖は読める.

実のところ,人間はすべての体癖素質を内蔵している.
ただし,その割合が人によって異なるために,十人十色の個性が生じる.
したがって,体癖を自己分析すると,ありとあらゆる体癖があるように思えるが,どれも本当だと言える.
ただ,その割合でどれが一番濃いか,どれとどれの体癖が濃く働いてこういう状態を作っているのか,その代表をつかまえて,何型何種とか何種・何種とかいう一組で考えた方がわかりやすいというだけだ.
なお,ある体癖素質が薄まることで,他の体癖とある割合で複合しているのだから,それらの総和は誰でも 1 となる.

この割合の視点は,整体の観点からも割合に重要だ.
日常生活における本能的な体の調整:整体を忘れ,技術や薬に依存している現代人にとって,熱中症や風邪が死活問題となっているのも当然だろう.

2.4 体癖の観察

複合体癖の相手の潜在体力を発揮する方向に体癖を活用するには,どの体癖にどのように働きかけるかが重要になる.
表に現われている体癖は,すぐ応える代りに,中に眠る力をよび覚ますことにはつながらない.
そこで,表の体癖の傾向を満足できる形で,裏の体癖素質に働きかけるようにしないと,潜在体癖の傾向を損ねることになる.

勝とう勝とうとして負けてしまい、体が硬張ってしまうのが人間です。
ビルからビルに三尺の板を渡して「渡れ」と言われても渡れないが、三尺の廊下なら平気で歩いている。
やろうと思うと知ってやれなくなってしまうのだから、下に潜んでいる体癖に呼びかけてゆけば潜在体力の喚び起こしができるのです。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 93.

ただし,体癖ごとに力を発揮できる方向は違うから,相手の複合体癖にかなうように力を誘導するには,潜在体癖の正確な見極めが不可欠である.
したがって,潜在体癖を観察することが,潜在体力の活用の第一歩となる.

体癖は心身の偏り習性の関係だから,その観察も心と体との両面から進めるのが本当だろう.
とくに複合体癖における潜在体癖などは,体の恰好を見ただけではわからないので,双方向の検証が必要となる.

ネットで体癖論を広めた精神科医・名越康文はよく,パッと見で「この人は何種」と鮮やかに断じているため,体癖というものが非常に単純に思えてしまう.
しかし,それはあくまでエンタメとしてのパフォーマンスであって,その場限りの関係だったり,フィクションのキャラクターだったりするからこそできる芸当だとみるべきだ.

複合体癖には矛盾した混り合いもあるから,人間の行動には矛盾が多い.
そういう意味でも,あの人は何種だからこうしておけばいい,と決めつけるのは危うい.

その人の生涯を見てこの人が何種だという見極めは易しい。
しかし、これから何をするかわからない人の一端をつかまえて、これは何種だと言い切るには、度胸がいる。
「厭よ」とスパッと言ったから九種だと言う人がありますが、そういう一面もあるが、そうでない面があったらどうするか、長い人生の中にはそういうこともあり得ます。
それを、”この人は三種だからご馳走すれば良い” などと決めてしまうのは、かなり乱暴なことだと思うのです。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),pp. 211–212.

そこで,他人の体癖に見当をつける場合は,まず体の恰好や偏り運動習性,顔の動きを眺める.
体の恰好には,体癖ごとに次のような特徴がある.

  1. 上下型:長いに特色あり

  2. 左右型:丸い上腹部に特色あり

  3. 前後型:角いに特色あり

  4. 捻れ型:厚いに特色あり

  5. 開閉型:疎密下腹仙骨部に特色あり

  6. 剛柔型:細い背部に特色あり

体癖が混ざっている場合は次のように,胴と顔とを足して考える.

  • 四角い胴に細長い顔がくっついていたら捻れ型一種/二種.

  • 細長い胴に丸い顔がくっついていたら上下型三種/四種.

  • 細長い胴に顎の張った三角形の顔がくっついていたら上下型五種/六種.

  • 横から見て骨盤の反った胴に四角い顔がくっついていたら閉型七種/八種(閉捻れ).

体の恰好は臓器の動きと直結し,顔の動きは感受性に直結する.
恰好と顔とに異なる体癖があらわれている場合,混ざったものは二つの体癖の集まりではなく,総合的にみて原型とは異なってくる.
したがって,12 種類の体癖のうちのどれに当てはまるかという考え方ではなく,むしろ複合体癖であるのが当然と思ってみてゆかなければ,見落としや矛盾が生ずる.

大雑把に二つ以上の体癖をもっているという場合を見るには、姿勢から観てゆくのが一番簡単ですからまずこれを研究して、少し慣れてから、同時に体癖的な行動特性を見、体癖的な感受性、要求の方向を観察なさるのがいいでしょう。
そして次に、どちらが潜在体癖なのか、それが出ているのは顔か体か、それもどちらの方が濃く現れているかということを観察していただきたいと思います。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),pp. 103–104.

ただし,姿勢というのは,外面的な体の恰好ではない.
生きものの姿勢は,形のないものの形としての現れだ.
「姿」は恰好だが,「勢」は勢いであり,気の動きが形として現れている.
だから,姿勢を正そうと無理に努力して背骨を伸ばしているのは滑稽で,背骨が自然に正しくなるような心や体の使い方が根本にある.

姿勢のうち,もっとも表面にあらわれている顔の表情を観察すれば,心の動きはほとんどわかる.
顔は体のうちの動きにしたがって絶えず変化しており,その時その人が見たのと同じ顔は二度とない
したがって,顔付きや顔色,顔の動きといったものを心の奥の表情として見得るように,相手の顔を注意深く観察する必要がある.
笑ったからといって,必ずしも楽しい・嬉しいとは限らず,お世辞笑いや馬鹿にした笑い,冷笑といったものと見分けられなければ意味がない.

姿勢を見るのに慣れたら,同時に体癖的な行動特性を観察する.
無意識の体癖行動として,次のようなものがわかりやすい.

  1. 上下型:踵をつけずに背伸びして歩く

  2. 左右型:何かを齧ったり紙を破ったりしながら考える

  3. 前後型:何かあると頭をかく/鼻をこする

  4. 捻れ型:すぐ「何を」とムキになる

  5. 開閉型:全体の動きが速い・遅い

  6. 剛柔型:何種だかさっぱりわからない

その人がどうあろうとして振る舞っているかということに注意して観察すれば,その人の体癖に見当がつく.
人間は自分にないものを求めるから,うらやましいと感じる他の体癖の言動を,意識的に真似してみることがある.
おつりを正確に数えてレシートもきっちり持って帰るという五種的な行動も,計算にうとい三種の,計算高い五種へのあこがれかもしれない.

パッと出た無意識の動きには体癖がむき出しになるけれども,落ち着いた状態の言動には意識した演技が混ざっている.
したがって,芸能人の体癖分析にはほとんど意味がない.

たとえば,天然や沼といったキャラクターは,日常のふとした動作に現れていれば体癖現象である.
しかし,人目のある状況でぶっ飛んだ言動をして笑いをとった際に,何が面白かったのかを自分で理解していたら,それは計算された名演技やビジネス沼であり,体癖ではない.
カメラに映るのは仮の姿で,裏話として後日,他人の口から語られる印象の方が本当の姿とみるべきだ.

これは,自他のどちらの体癖分析でも見逃しがちな落とし穴である.
しかも,体癖は無意識の偏り習性であるため,自分の体癖はどれだけ考えても正しく評価できない

たとえば,九種の特徴は集注の激しさにある.
ところが本人は,勉強していても興味のないものには一切やる気がわかず,すぐに別のことをやりだしてしまうことから,自分には集中力がないと思いこんでいる.
しかし,それは興味のあるもの,すなわち要求の方向に激しく集注しているためであり,集中力が強すぎて他に集注できないという真逆の状態なのである.

このように,自分に対してはどうしても客観的になりきるということが難しいので,自分が一番誤魔化しやすい.
ただ,生理的な変動は誤魔化しようもない.
したがって,主観が入りやすい自分や家族といった関係が近い人の体癖は,生理現象から観察するのが,できるだけ鋼兵公平かつ正確に判断するコツだ.

風邪をひいた後などは,生理的な特徴をみる絶好のチャンスだ.
体癖ごとの風邪の経過を次に示す.

  1. 上下型:いつでも鼻に残り,詰まったまま

  2. 左右型:「ちっとも食欲がない」と言い,下痢をするまで治らない

  3. 前後型:まず喉と鼻の中間(鼻の奥)からひき,一つは鼻へ,一つは喉(気管)へゆく

  4. 捻れ型:いつも喉から始まって,耳鼻を経て,その後で腎臓や膀胱へゆき異常を引き起こすため,必ず小便の出が悪くなる

  5. 開閉型:時に鼻に残るが,鼻から喉に落ちてくる

  6. 剛柔型

    1. 十一種:しょっちゅう風邪をひく

    2. 十二種:滅多に風邪をひかない

生理的な面から体癖に見当がついたら,次に体の恰好や体の要求,感受性をみてゆく.
ただし,やはり近くの人は後回しにして,遠くの人から観察した方がわかりやすい.


体癖の定量的な観察手法として,体量配分計による立姿動作での体重移動の測定がある.
体量配分計は本来,体癖ではなく心身の偏り状況をみるものだが,

  • 体の運動特性をみたり,

  • 体の運動特性を通じて心の働く特性をみたり,

  • 心の働く特性を通して体の現在の状態をみたり,

  • それらを通して変動の現在の状態,経過の速度,歪み具合などをみたり,

  • 今日の行動がスムーズだったか,疲れたか,感受性はどういう方向にあったのかもみることができる.

さらに,体量配分の長期測定により,体癖としての偏り運動習性にくわえ,体の波:体周期律も知ることができる.
ただ6個も体重計を用意するのは大変なので,同じ体重計を2つ並べたり,体重計と高さを合わせた台を用意したりして,簡易的に前後・左右の半分ずつ測るぐらいが現実的だろうか.
体量配分の特徴を次に示す.

  1. 上下型:弛緩立姿・挙上動作・前屈み動作で前が重い

  2. 左右型:一割どちらかに偏っていれば左右型の体癖素質があり,二割も偏っていれば完全に左右型

    1. 三種:右が重い

    2. 四種:左が重い

  3. 前後型:弛緩姿勢・挙上動作で前が重く,前屈み動作で後ろが重くなる

    1. 五種:高潮期になると前が重くなってくる

    2. 六種:低潮期になると前が重くなってくる

  4. 捻れ型:重心となる扁平足の側は後ろが重く,反対側は前が重い

    1. 七種:全体として前が重い

    2. 八種:全体として後ろが重く,前は外(小指)側に力がかかる

  5. 開閉型:前が半分以上重い

    1. 九種:前の内側に集注して緊張し,しゃがむと後ろに半分以上かかり,前の外側に少し残る

    2. 十種:前の外側に集注して弛緩し,しゃがむと後ろがほぼ0になるかしゃがめず内側が重くなるが,それ以外の全動作を通じて外側と後ろが重い

  6. 剛柔型:体量配分で見分けるのが最も難しく,長期測定を要する

    1. 十一種:測るたびに傾向が変わる

    2. 十二種:ちっとも変わらない

一般に,人間の緊張状態は体重が前に移動することによって表現され,逆に弛緩姿勢では体重が後ろへ移動する.
後ろでも,外側に重いほど不安定になり,内側にかかるほど安定する.
そこで,前の内側に力がかかるほど緊張する.

ところが,上下型や前後型は,立っているだけで前へ力がかかっている.
他の体癖の人はお辞儀をすると前が重くなるが,わずかでも前屈傾向のある人は後ろが重くなる.これは,ちょっとでも頭を下げると前につんのめりそうになり,代わりにお尻を後ろに突き出すためだ.
さらに前後型の濃い人は,お辞儀をしようとする心が働くと同時に,速やかに平衡運動でヨーッと反り返る.
挙上動作でも,普通は後ろが重くなるが,前屈傾向があると手を挙げる度合いが大きく,手が頭より後ろへ行くので前が重くなる.

分娩の直後は誰でも,腸骨が開いてひきしまる力が十分でないので,うまくしゃがめない.
ところが開型は,分娩にかかわらずしゃがめない;足を腸骨の幅に開き,踵をつけたまましゃがむと,後ろにひっくり返る.

片足立ちでフラフラする人は,足の外側が重い.
しかし,普通は一方でフラフラしても,重心のある側で立てば安定する.
両足とも不安定な人は,足に異常があるか,腸骨に変動があり片側だけ拡がっている可能性がある.

ハンドバッグをかかえる時は,重心のある方でかかえる
伸ばす時,さげる時は重心のない方でさげる
遠いものは重心のない方の手を伸ばしてとり,重いものは重心側で持つ

捻転動作において,捻れがなければ左右の配分は変わる.
どちらに捻っても変わらず一方の足が重い場合はその片足だけ扁平足で,その方向へ腰が捻れている;重心側へは楽に捻ることができ,後ろが重くなる.
その反対方向へは,緊張しなければ捻りにくいうえに十分には捻りきれず,前が重くなる.

たとえば,左に上体を捻った時に後ろが重くなり,右に捻ったら前が重くなるという人の腰は,左捻れ傾向があり,普段から下半身に対して上半身が左に向いている.
左捻れは,決断しようとしてもできず,受け身で不決断な状態を示す.
不決断のアベコベ(反対)は,決断しすぎる,決断が速い,考えないでやってしまうというもので,やるにしてもやめるにしても決断した時は重心が右側に帰り,右捻れになる.

そこで私は,積極的な七種は決断傾向の右捻れ型,消極的な八種は不決断傾向の左捻れ型,と分けられるのではないかと考える.
すなわち,捻れ方向は体の波によって変わり,高潮期に強まる捻れ型が七種,低潮期に強まる捻れ型が八種だといえる.


ここまでをまとめると,他人の体癖は,次の手順で観察してゆく.

  1. 姿勢

    1. 臓器の働きに直結する体の恰好

    2. 感受性の動きに直結する顔の動き

  2. 偏り習性:姿勢の観察に慣れてきたら,姿勢と同時に観察.その人がどうあろうとして振る舞っているかに注意.

    1. 体癖的な行動特性,偏り運動習性

    2. 体癖的な感受性,偏り反応習性

    3. 要求の方向:体が快いと感じる方向

  3. 潜在体癖

    1. どちらが潜在体癖か

    2. それが出ているのは顔か体か

    3. どちらの方が濃く現れているか

  4. 立姿運動における体量配分の長期測定

他人の体癖観察に慣れてきたら,自分や近い人に対しても,次の手順で観察してゆくとよい.

  1. 生理的な特徴:風邪の経過,緊張による反射

  2. 体の恰好

  3. 感受性

  4. 体の要求:体が快いと感じる動き

  5. 立姿運動における体量配分の長期測定

(リンク追記予定)

2.5 体癖の修正

人間の体も機械と同じく,その偏りを調節すれば長くもつ.
人間の場合,偏り運動に起因する,正常な状態からの偏り発育・偏り疲労によって,体の動きが歪み,姿勢も曲がってくる.
これを正すために野口は,体癖ごとの部分的偏り体操:整体体操を設計した.

野口は,体癖論のほかにも活元運動愉気法を体系化し,整体という言葉を世に広めた人物でもある.
野口の整体操法は,他人でなく自分が主役であるという点で,一般の施術所で受けるような整体とは根本から異なる.

『整体入門』を出版しましたら、読んだ人が抵抗と感じましたのは、自分で自分の体を正すとか、自分の体は自分で管理せよということに対することでした。多くの人は長い間、病気は他人に治してもらうもの、自分の体の管理は専門家に任せるものという考えに慣らされてきたからでしょう。

野口晴哉:『整体入門』,(筑摩書房 ,2002),p. 218.

さて,人間にはいろいろな癖があるが,次の3傾向に大別できる.

  1. 習癖:習慣となったくせ

  2. 性癖:性質上のかたより

  3. 体癖:体のくせ

いずれも同じことを無意識に繰り返すという点で共通しているが,正常なことの繰り返しを癖とは呼ばない.
偏ったり歪んだりしていることが意識できないというところに,「癖」と呼ぶ所以があるといえよう.
とくに体癖は,影響範囲が広い.

ともかく体癖が体にいろいろの影響を生ずるということは確かであるが、その体癖は体の歪みや、使い方の偏りから発生しているのであるから、個々の体癖に適う体の調律を行なう必要がある。
性癖とか習癖とかの大部は体癖現象であることが多いので、意志的努力で矯正出来ないことが多い。
しかし体癖を修正すると消失してしまう性癖や習癖が沢山あるのは、そのためである。

病気だと思っているもののうちにも体癖現象である場合がある。
便秘とか喘息とか糖尿病とかいうものから、アレルギー素質というようなものまで、数えたらどれくらいあるか分らないが、そういうものが難病とか慢性病とか言われているのは当然かも知れない。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 8.

体の偏りを修正しきれずに強まった体癖現象は,アレルギー慢性病に化け,強い薬による対症療法でしのぐことしかできない難病・現代病として扱われている.
私は,製薬利権・医産複合体によって,そう仕立て上げられているものと考える.

ここで大事なのは,体癖現象は修正できるということだ.
すなわち,整体体操を行うことで,難病と呼ばれる現象は抜ける.
体癖現象が消えれば,性格まで変わる.
体の要求から逸れた体癖現象を修正すれば,複合体癖の特性を失うが,健康になることは確かだ.

たとえば,閉型九種体癖を左右型が応援した閉型三種には特殊能力があるが,その代償として体を悪くしている人もいる.

九・三種はよくそういう超能力的な働きをするのですが、その九種が欠けてしまったら頭のない三種だけになってしまうし、その三種が欠けてしまったら種族保存的に働くだけで、どちらが欠けても超能力的な働きはなくなるのです。
そのどちらかが体現象的なものであれば、活元運動をやれば当然、その面は薄くなっていくし、そうなれば体は丈夫になります。
やはり自然に生きている方が保ちはいいのです。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),p. 242.

これらは,作用・反作用の法則や,薬の作用・副作用のように,トレードオフの関係にある.
特性をとるか健康をとるかは自由な選択だが,それとて本当に自由なのかはわからない.
また活元運動で修正するというのは,体癖論を学んでいなければ多くの人がとれない選択だろう.

なお野口は,体癖の修正は可能だが,矯正はできないと述べているようだ.

体癖自体は矯正できないが、偏り度合いが激しい場合は度合いを少なくする、修正することはできます。それから体癖が二つ以上重なっている場合は潜在体癖を呼び起こすことはできます。

季刊全生

2.6 体癖論の意義

1.1 節で述べたように,現代人の体力の余剰は圧縮エネルギとなり,圧縮率を増すほどその噴出・凝固の速度も増大するため,ときに破壊行動となって人を傷つける.
このような惨事を防止する唯一の方法は,法律の整備でも監視社会の強化でもなく,各自が余力を残さないよう全力を発揮して生活することである.
ただし,誰もが単に運動したり長時間労働したりすれば良いわけではない.
2.4 節でも述べたように,体力を発揮できる方向は体癖によって異なり,しかも潜在体癖の方に働きかけないと潜在体力は出てこない.

みんなは体力発揮というと、御馳走を食べたらよいとか、スポーツをやればよいとか、何か健康法をやればよいとか考えるのですが、そういうのは何も知らない人の言うことで、上下型の人なら楽しいことを空想し、理想を追求するように計画していると全力が発揮できる。
九種なら恋愛の対象になる人のことを一生懸命考えている時には全力を発揮できる。
五種なら利害得失のことに一生懸命になっていると全力発揮できる。
それと同じように十種なら、傾け得る愛情の対象を得れば、食べなくても、金がなくとも、全力は発揮できる。人の世話をすると何か消耗だと思ってしまうのは間違いです。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 164.

なお,九種の説明で「恋愛対象」という言葉が出てくるが,これは性欲昇華傾向の九種が濃い野口(閉捻れ)の言うことだから,「性愛対象」と捉えた方が正確だろうか?
開閉型の感受性の中心は愛憎だが,「恋愛」には左右型の感受性である好き嫌いのニュアンスが強いためだ.
しかし私も閉型の恰好をしているから,これについての客観的な考察はできない.


幸せの閾値とよく言うが,金に物を言わせてどれだけの贅沢をつくしても,それぞれの体の要求が満たされない限り幸せは感じられない.
要求の方向に沿って行動すれば全力を発揮でき,それに一生懸命になっているときを超える幸せはない.
あえて言語化すると,興奮が腹の底からぐつぐつと湧きあがってきて,腹に力が入り,笑顔になるのを抑えきれない,といった感じだ.

子供のうちは,それが非常に明瞭に現れる.
どんな時に笑顔が漏れて黄色い悲鳴を上げているかを観察すれば,その遊びや食べ物に,要求の方向があるはずだ.
高潮期に一種が濃い私なら,家や部屋に向かいながら,

  • 帰ったらあれについて記事を書こう,

  • 明日はあれを終わらせよう,

  • 次にポケモンの縛りプレイをする時は,こういう縛りで,旅パにはあいつを加えよう,

と頭の中で計画しているときに,そういう感覚が生じる.
ところが,計画があって行動がないのが上下型の特徴だから,私がその通りに実行して完了することはまずない.

学生時代は,暇さえあればポケモンの構築を考えて,いざ鎌倉と対戦しても勝てないからすぐに飽きてしまい,しばらくしてまた構築からやりなおす,というサイクルを繰り返していたが,やはりこれも体の波による.

この例で言いたいのは,人のつくった娯楽に価値があるということではない.
ただ自発的に取り組んだことならば,必ずその人なりのやり方や意義を見出せるというのが,体癖の面白さなのである.

同じように生活しているようでも感じ方は人によって異なり,それがその人に個有の生活様式なのである.
だから,左右的な感受性を持っているから芸術家になろうとか,上下的な感受性を持っているから学者になろうとかいうのは,上下的な分類方法で,上下型の人だけがそう考える.
どんな仕事をしても,$${n}$$ 種は $${n}$$ 種的な感じ方でやるのだから,体癖によって無意識的に職業が偏ることはあっても,体癖によって意識的に将来の選択肢を狭める必要はない.
したがって,自分の体癖を分析して,その才能や長所を活かすというより,自分が快く感じる方向へ動いていった方が本当だ.

潜在意識の無意識の動きの方向は,体によって決まる.
その人が次に何を連想するのかも,体をみればわかる.
すなわち,人間の考え方やそれを表現する方法は,体癖によって決まっている.
この点,体癖論は非常に決定論的だ.

そのようにお乳の出方から、どういう時に茶碗を投げるか、理屈を言うかということまで総てが体癖で決まっているのです。
人間にはいろいろなものがあって、遠くのものを知る力もあれば、行ったことのない道を迷わず歩くこともできれば、これから雨が降ることを予感することもできる。

野口晴哉:『体癖 <第2巻>』,(全生社,1985),pp. 246–247.

したがって,体癖の相性によって,非の打ち所がないように思える相手もいれば,すべてが嫌でたまらない相手もいる.
イケメンや美人というのも主観的な感覚だから,配置が整っているという定量的な評価はできるが,どの体癖の人にも魅力的な人は存在しない.
顔のパーツが整っている人がモテるのは,DNA の損傷が少ない子孫を残すための本能——近親相姦を避けるのと同様の原理——として理解できるが,相手の顔が魅力的に映るかどうかは自分の体癖による.
野口が三種に色白の美人が多いと言っているのは,そう仕立て上げないと誰も自分を三種だと認めないためであり,何も三種だけが美人なわけではない.

しかし,これらはあくまで体癖の相性の問題であり,どの体癖にも良いところと悪いところは五分五分だ.
どの体癖にも特色はあるが,それは長所と短所という別々のものではなく,まったく同じもの:長所 = 短所 なのである.
その同じ特色を,体癖の相性によって,良く思う人もいれば悪く思う人もいる,ただそれだけ

たとえば,見えないところを嗅いでいく九種は,見えるところを飾っていこうとする三種に合わない.
九種と三種の夫婦は,じっと黙っていて,隙があったら飛びかかろうとしているという.
実際,野口による三種の説明の紙背からは,強い憎しみを感じる.

ところが一種の人なら,三種が見せる理解不能な王者のふるまいに憧れて,三種くらい魅力のある女/男はいないと書く.
また三種にとっても,一種の言っているわけのわからない理屈がたまらない魅力であり,ときには神秘にさえ感じられる.
一種と三種の夫婦は,お互いにわけのわからないことを後悔しながら,またわからないという魅力に引かれ,一生ごたごたしているという.

人は自分にないものを求めるから,ないもの同士が結婚するとうまくいく
男女というまったく異なる生きものが一緒に暮らし,しかも子を産み育てていくという,人生でもっとも困難な過程においては,互いの欠けたところを補い合うような感受性の違いが重要なのである.

いずれにせよ,体癖の相性が存在することは確かだ.
しかも,当人同士の感情問題には帰結せず,その影響は後世にまで及ぶ.
野口は,体癖の相性を優先して結婚することで整体的に優れた子が生まれ,それを繰り返すことで世の中はよくなってゆくと述べている.

体癖のよく釣り合った男女が結婚すると、両者よりも秀れた子が生まれる。
その子が、やはり体癖の似合った相手と結婚すると、さらによい子が生まれる。
そうした結婚と出産を積み重ねてゆくと、それによって社会は次第に理想的な人間によって満たされてくる……と。

野口晴哉:『整体入門』,(筑摩書房 ,2002),p. 225.

ところが,破局の原因として最も多いのも「価値観の違い」だ.
2.1 節でも述べたように,同じ体癖でも男女で違いがあるのだから,価値観が同じ相手と結婚している人などいないだろう.
まあしかし,相手(を好きになった自分)を守る便利な言い訳ではある.

その点,価値観が同じ同性と遊ぶのは楽しいが,メディアはそれを同性愛だと誤認させるような多様性のエコーチェンバーを形成している.
そのような性の倒錯は,世界的エリートたちによる小児性愛の正当化に利用されるおそれがある.

野口も,気の合う同性のコンビと男女の結婚とを区別している.

男と女とは、元来、体の構造は全く異なる。その感ずることも動くことも異なる。
一方は月に何箇かの卵をつくるだけなのに、一方は日に何億という精子を産む。
似ているのは運動系の構造ぐらいのもので、体構造の全体からいえば、女は人間の男より、虎の牝の方に近い。
しかも育った環境も違えば、ものの考え方も違うのですから、気の合った同士でコンビをつくるということにくらべると、結婚ということはスムーズにゆく可能性はズーッと少ないのです。

先日も、女は人間の男より、虎の牝にくらべる方がズーッと構造的には似ていると話したら、「虎の牝にくらべるとは何事です!」と五十ぐらいのおばさんから叱られましたが、その声は虎に似ていた。
もっとも蜘蛛の牝にくらべたってよいのですが、脊椎動物だから、馬とか鹿とかにくらべたらもっと苦情をいわれると思ったから虎にくらべたまでで、男には、女を虎というような猛獣用語で表わす方が、感じからいえば本当に近い。

野口晴哉:『整体入門』(ちくま文庫,2002)pp. 202–203.

この虎のたとえは,男からしたら実に共感できる😂
現代なら間違いなく X で炎上させられるだろうが,そういう抑圧や検閲は,しばしば真実を覆い隠している.
男女の差については,下記で述べている.

このように,開閉型の直観が薄れた大衆は,体よりもメディアを信頼するようになり,社会に大きなひずみが生じている.
体との信頼関係を築き,洗脳から解放されるということも,体癖や整体について学ぶ意義だと思う.


普通の性格診断なら,自分が当たってると思えないと価値がない.
一方で体癖論は,当たる当たらないの話ではなく,各人の体ごとに反応の傾向が決まっていることを述べている.
周りには筒抜けなのに,当人はそれに気づけない.
うまく本性を隠したつもりが,頭隠して尻隠さずになっている.
したがって,「あ,これ私に当てはまってるカモ!」などと自身の性格を類型に当てはめていくものではない.

その感受性があることに当人は無自覚なのだから,当てはまると思うのは,むしろ自分に欠けた体癖やあこがれている体癖だと考えるべきだ.
前後型は利害得失の感受性によって動くといっても,無意識にそういう動きをしているのだから,当人にそんなつもりはない.
逆に自分はいつも損得を考えて動いていると思うなら,意識的にそう考えようとしているということだから,それは憧れであって体癖素質ではない.
したがって,生理的な特徴や体の特徴は当てはまるのに,その感受性の特徴には全く納得いかないのであれば,正確な体癖分析ができたといえよう.

このように,体癖論は占いでもテストでもない.
自分の性格診断に使うと間違えるし,無意識の習性は変わらない.
相手の感受性を理解し,その体癖になりきって考えることに使う.
誰かに嫌なことをされた時にも,怒る前に「この人がこんなことをするのは,この感受性のためだろうか?」と,一呼吸おいて冷静に分析できるはずだ.

しかし体癖は生まれつきのものですから、それから逃れようとしても逃れられないのです。
人間の行動にもいろいろあって、反射的に無意識にそうやる行動の特性があるのだと言うことを、まず心得て人間を観ないと、間違うことがある。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 164.

したがって私は,体癖論を学ぶ最大の意義は,相手の行動の原理をメタ的に理解して人間関係のストレスを軽減できるようになることだと考える.

3. 各論

本章では,各体癖の特徴を簡単にまとめる.
詳細は野口による原典を参照されたいが,分散した情報を整理して,型ごとに記事を改める予定である.

3.1 上下型: 一種, 二種

ここでは,上下型 一種・二種 体癖——メンツで動く,思索的であがり症な首長族の仙人——について簡単にまとめる.
なお,詳細な説明は記事を改める.

男性的な体癖素質であり,男は多少なりとも上下型をもつ.
論理的に考えすぎて,時に冷たさを感じさせる,一般的な男性のイメージ.

体量配分表や無意運動習性をみても,一種と二種との区別はつかない.
しかし,感受性の方向・潜在体力の動きからは,明らかに区別できる.

小説家・芥川龍之介は,上下型の典型といえよう.
羅生門』や『』など短編ばかり書いて,長編を完成できなかった理由は,飽き性という上下型の特徴として理解できる.
成績も優秀で,英文学書を 1300 ページ/日 も読めるほど語学に秀でていたという点も,活字好きで勉強が得意な上下型の特徴と一致する.
外見をみても,顔も体も細長く,首は太く長く,頭は大きいという,まさに上下型の理想的な体型だ.

https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/224/

次に,上下型の原色的な特徴を列挙する.

  1. 偏り運動習性:上下型(上がり型,大脳型,観念型,思索型)

    1. 一種:上型

    2. 二種:下型

  2. 偏り運動の焦点:第 1 腰椎(L1)

  3. 運動焦点の感受性特性:毀誉褒貶(きよほうへん);メンツ,ほめる/けなす

  4. 生理的感受性の中心:

  5. 圧縮エネルギの 噴出・凝固 特性

    1. 一種:大脳昇華;体の働き・性欲を大脳の働きに転換

    2. 二種:間脳昇華;頭の働きがたかまることを,体の変動として感ずる

  6. エネルギ余剰時の特徴

    1. 一種:思考に変わり,かえって行動しなくなる

    2. 二種:大脳反射傾向が過敏になる

  7. 緊張による反射:何かあると大脳が緊張

    1. 一種:頭の働きとして感ずる

    2. 二種:大脳緊張が,すばやく肉体上の変化・運動を引き起こす

  8. 過敏反応(緊張で硬直し,引っ掻いたり温めたりするとすぐ赤くなる):背骨の両側

    1. 一種:頸椎筋;首の後ろ

    2. 二種:胸鎖乳突筋;首の横

  9. 偏り疲労時の特徴

    1. 一種:首が緊張し,考えても考えても考え足りない

    2. 二種:首が弛緩し,頭の疲れを感ずる前に体の異常感覚として感ずる

  10. 風邪の経過:頭へゆき,いつでも鼻に残り詰まったまま

  11. 病気

    1. 一種:病気だと思い込むだけで,実際に体にその症状をつくる

    2. 二種:何を心配しようと,心臓や胃袋(胃潰瘍,胃下垂)に現れ,だんだん病気を重くしてゆく

  12. 老化:体力があって長生き;首は体力の象徴

  13. 健康指導:「かくかくすることを,このごとく繰り返す」

    1. 一種:「こうしない方がいい」と奨めるのではなく,「かくかくの理由で,かくの如きことをしなくてはならぬ,かくあらねばならぬ」「かくすべし,かくすべからず」と断固として放り込む

    2. 二種:価値観の転換・打破が必要条件;「この本の何ページを読みなさい」と活字を与え,「かくかくする限り,かくなるべし」を先入観として入れる

  14. 体力発揮の方向:楽しいことを空想し,理想を追求するように計画

  15. 潜在体力の誘導:メンツのため;「他人に見られたらどうする」

    1. 一種:精神指導,暗示

    2. 二種:他人のため/責任

  16. 褒め方:名誉だと思わせる

  17. 叱り方:感情的にならない

    1. 一種:自分で考えるよう手短に言う

    2. 二種:叱言をいつまでも気にして病気になるので,叱らない

  18. タブー:名誉毀損

    1. 一種:睡眠妨害;ともかく眠らなければ大変

    2. 二種:「君の考え通りにやりなさい」;自己責任だと何もできない

  19. 苦手:臨機応変

  20. 能力:秀才;論理的に考え,活字に強いため,勉強が全般的に得意

    1. 一種:頭で信じたままに,頭のはたらきで体を動かすことができるため,信じたことを繰り返していれば非常に長寿

    2. 二種:毒も薬もなく,外部から頭の中の価値観を転換させるだけで,体が変化する

  21. 形容:あがり症,上がりや

    1. 一種:上空院;考えているうちは何をいっても上の空で聞き流して聞こえない

    2. 二種:八方美人;人に憎まれる事は絶対に言えない

  22. 男女差:男性的な体癖素質

    • 男には多少なりとも上下型の素質がある

    • 女でも,女性的な体つきにはならない(貧乳)

  23. 体型:長い

    • 長方形

    • に特色あり:太く長い

    • 頭が大きい

  24. 姿勢:首から前屈

  25. 弛緩姿勢:足を上げる

  26. 体量配分:弛緩立姿・挙上動作・前屈み動作で前が重い

  27. 無意動作:踵をつけず背伸びして歩く

  28. 考える時の特徴:寝そべったり口を開けて天井を見たりして,じっと静かに考える

  29. 行動:「こうしなさい」「この通りにやればいい」と教わると,すぐその通りにする

    1. 一種:頭の中で積極的に空想しているだけで気が済んで,行動しない

    2. 二種:自分で考えたら最後,何もできなくなる

  30. 香典:立派な袋に相応の額を包む

  31. 仕事:自身の感受性に適した職業に就こうと考える

  32. 生涯:自分の頭で考えるから,飽きて同じことを続けられない

  33. 先天的な先入主:睡眠欲;眠りだけには弱みをもつが,それ以外には強い

  34. 信念,信仰:百は一にしかず;意識よりも空想に敏感

  35. 主張:食べ合わせ

  36. 口癖

    1. 一種:「あした学校/仕事だから(早く寝なきゃいけない)」

    2. 二種:「誰々が言ってた」

  37. 音楽で関心をもつ要素:メロディ

  38. 好む色:青💙

  39. 夢のみかた:形と事柄とを克明に覚えている

    1. 一種:飛んだり追いかけたりする積極的な動き

    2. 二種:落ちたり追われたりする消極的な動き;サーッとお腹の中が硬くなる

3.2 左右型: 三種, 四種

ここでは,左右型 三種・四種 体癖——好き嫌いで動く,感情的でカラフルな丸顔の食いしん坊——について簡単にまとめる.
なお,詳細な説明は記事を改める.

女性的な体癖素質であり,女は多少なりとも左右型をもつ.
女の勘があり,感情的で温かみを感じる,一般的な女性のイメージ.

シンガーソングライター・aiko は,左右型の典型といえよう.
ものごとを芸術的に受け止め,輪郭が丸く,色白で美人(愛嬌がある).
色彩感覚が vivid で色のまとまりはないが,赤が似合う.
好き嫌いの感受性で動くから,昔から好きなうんこちゃんもこう先生と写真を撮れてはしゃいで——しかもふぉいの刺青もばっこり写ったまま——,自分のデメリットなど考えずにその写真をあげるのも,計算できない感情型の特徴と合致する.

次に,左右型の原色的な特徴を列挙する.

  1. 偏り運動習性:左右型(消化器型,本能型,感情型)

    1. 三種:右型

    2. 四種:左型

  2. 偏り運動の焦点:第 2 腰椎(L2)

  3. 運動焦点の感受性特性:好き嫌い

  4. 生理的感受性の中心:消化器

  5. 圧縮エネルギの 噴出・凝固 特性

    1. 三種:感情鬱散;感情の苛立ちとして感じ,感情そのものがたかまって分散

    2. 四種:太陽叢(たいようそう)凝固;感情の苛立ちを感じすぎて凝固し,体の機能の鈍りをきたす

  6. エネルギ余剰時の特徴

    1. 三種:ありもしない憶測が呼び起こした感情をもてあます

    2. 四種:心窩しんか(みぞおち)の左が硬くなる

  7. 緊張による反射:何かあると胃袋が緊張

    1. 三種:刺激を消化器系で受け止める

    2. 四種:内外の変動を消化器系の負担として受け止める

  8. 過敏反応:自律神経

    1. 三種: 交感神経(心臓のはたらきを鼓舞)

    2. 四種:副交感神経(心臓のはたらきを抑制)

  9. 偏り疲労時の特徴:肩こり

    1. 三種:左肩が上がる

    2. 四種:下痢

  10. 風邪の経過:大便がフッとゆるむと治る

    1. 三種:高熱でも(他の体癖の人から見て)食欲がある

    2. 四種:風邪をひくが早いか下痢をする

  11. 病気:胃袋が働かないと心臓へ行く

    1. 三種:糖尿病・腎臓病;胃袋の調節

    2. 四種:胃

  12. 老化:食欲を背負って歩いているように背中が丸くなる

  13. 健康指導:体操や散歩をしても,動いているうちは力が偏るから,体は疲れるだけ

    1. 三種:消化器の調節

    2. 四種:大脳の緊張の原因をとり除く

  14. 体力発揮の方向:好きなこと/もの

  15. 潜在体力の誘導:感情に訴える

  16. 褒め方:整然とした言葉を,声の調子だけ優しくして言うと,わからないのに感激して一生懸命にやり出す

  17. 叱り方:理屈でわからせようとしない

    1. 三種:言葉は通じない

    2. 四種:泣き声の色と大きさとを聞き,いつ叱るのを止めるか判断する

  18. タブー:散らかしているものを勝手に片付ける

  19. 苦手:整理整頓

  20. 才能:感受性豊か;芸術的な感性をもち,色彩感覚が緻密

  21. 形容:女の勘

    1. 三種:感情的

    2. 四種:M(マゾヒスト)

  22. 男女差:女性的な体癖素質

    • 女には多少なりとも左右型の素質がある

    • 清濁併せ呑む:男は親分肌,女は自己中(自分勝手)になる

  23. 体型:丸い

    • 円形:三種は曲線的だが,四種が濃いほど直線的になり上下型に似る

    • 上腹部に特色あり:豊満

    • 柳腰:くびれがあり,ボンキュッボンと形容される女性的な体つき

  24. 姿勢:背中の真ん中から前屈みして丸くなる

    1. 三種:右肩が上がる

    2. 四種:左肩が上がる

  25. 弛緩姿勢:重心側の脚を,逆側の膝に乗せる

  26. 体量配分:一割どちらかに偏っていれば左右型の体癖素質があり,二割も偏っていれば完全に左右型

    1. 三種:右が重い

    2. 四種:左が重い

  27. 無意動作:手が伸ばしにくい重心側にハンドバッグを抱える

  28. 考える時の特徴:何かを齧ったり,紙を千切ったりする

  29. 行動:せっせと料理をつくるが,片付けない

    1. 三種:お腹が空くとイライラし,「私とても癪に障ったの」と言いながらうんと食べ,お腹が満たされるとおさまる

    2. 四種:他人が責めてくれないと,自分で自分を責める

  30. 香典:大きな袋にきちんとした字を書いているのに,中身は少ない

  31. 仕事:どうやったら楽に・愉快に生きられるかで職業を選ぼうとする

  32. 生涯:いくつになっても料理を作ることばかり考えていて,食べ物を貰えば嬉しい

  33. 先天的な先入主:食欲,自己保存の要求

  34. 信念,信仰:空想の中に住み,無意識に空想に動かされ,感情以外に価値を認めない

  35. 主張:自分では考えず,読んだ批評をそのまま暗記して,自分の意見として振りかざす

  36. 口癖:「肩が凝った」

    1. 三種:「そのときはそのようにやるわ」

    2. 四種:「こういうものがうまい」

  37. 音楽で関心をもつ要素:音色

  38. 好む色:赤❤️

  39. 夢のみかた:色を見る

3.3 前後型: 五種, 六種

ここでは,前後型 五種・六種 体癖——損得勘定で動く,行動的で生涯不安症な君としゃくれ顎の現代人——について簡単にまとめる.
なお,詳細な説明は記事を改める.

前後型は行動型であり,上半身で動くスポーツ選手や俳優に多い.
スーツが似合って仕事ができる,理想的なサラリーマンも前後型だ.

女優のキャサリン・ヘプバーンは,前後型の典型といえよう.
前後型の感受性は,このパシッと張った顎にあらわれる.

投手・佐々木朗希も,前後型の典型といえよう.
手足が長く胴が短い活動型の体で,体も顔も逆三角形,顎も張っている.
見せかけの筋肥大のためのウエイトトレーニングが嫌いというのが事実なら,最小のエネルギで最大の球速を出すための合理的な投球フォームは,まさに前後型の感受性の賜物だろう.
体癖論とは関係ないが,佐々木朗希も大谷翔平も,背番号は 17 = Q だ.

佐々木のグローブは黄色だが,やはり五種は黄色を好む.
金本位制の時代から,お金には金色のイメージがあるということからも,利害得失で動く五種が黄色を好むことには納得がいく.

また,生きものの中では黄色いのが一番強い;虎も蜘蛛も蜂も,黄色いものほど強い.
ピカチュウとかいう電気ねずみが,ただの誰でも癒せる愛嬌マスコット!?でなく,最強の相棒として人気を博したのも,黄色が強さの象徴だからだろう.
ポケモンが世界一のコンテンツに上りつめたのも,ひとえに黄色くて強いピカチュウが,前後型に偏った現代社会にマッチしたためといえる.

次に,前後型の原色的な特徴を列挙する.

  1. 偏り運動習性:前後型(呼吸器型,上肢行動型,行動型)

    1. 五種:前型

    2. 六種:後型

  2. 偏り運動の焦点:第 5 腰椎(L5)

  3. 運動焦点の感受性特性:利害得失(損得)

  4. 生理的感受性の中心:呼吸器

  5. 圧縮エネルギの 噴出・凝固 特性

    1. 五種:行動鬱散・運動昇華;千言万句しゃべっても気が済まず,行動しないと落ち着かない

    2. 六種:胸部凝固;何かしたいという要求があっても動かず,感情のたかまりを無意識に抑圧してしまう

  6. エネルギ余剰時の特徴

    1. 五種:ソワソワして,何かしないではいられなくなる

    2. 六種:凝固度の増加とともに,肩が前に出て感情を抑圧する

  7. 緊張による反射:頭が緊張すると,お腹が緊張して小さくなる

  8. 過敏反応:肩

  9. 偏り疲労時の特徴:迷い,焦り

    1. 五種:膝が飛び出してくる

    2. 六種:すぐハーハーと息切れする

  10. 風邪の経過:喉と鼻の中間(鼻の奥)からひき,一つは鼻へ,一つは喉(気管)へゆく

  11. 病気:呼吸器が余分に働きだす;喘息,結核,肺炎

    1. 五種:呼吸器が丈夫

    2. 六種:呼吸器が弱く,大食しているうちは丈夫にならない

  12. 老化:死に際まで理性がはっきりしている

  13. 健康指導:無駄遣い

    1. 五種:体の筋肉を積極的に動かす

    2. 六種:減食,断食

  14. 体力発揮の方向:賭け;利害得失を追求

  15. 潜在体力の誘導:「受け身な態度だ」などともらして,不安や心配,煩悶を注ぎ込む

  16. 褒め方:「自分が中心になりたい」という要求を満足すべく褒める

  17. 叱り方:個別・具体的な面からの帰納的な説明がよくわかる

  18. タブー:安閑とした地位に置き,なやみのタネをとり除く

  19. 苦手:計算を度外視した人情

  20. 能力:頭脳明晰;常に綿密な計算ができる

    1. 五種:呼吸器がよく働く

    2. 六種:呼吸器が弱い

  21. 形容:冷静;あまりに冷静に計算して動くため,人の感情が動くということがわからず,人間的な暖かさが全くない

    1. 五種:万事に現代的;合理的に計算し,行動し,考え,実行する,理想的な現代人

    2. 六種:没我的;主義や信仰に殉じ,「一命を賭して」申し訳に死ぬ

  22. 男女差:スマートな美男美女が多い

  23. 体型:角い

    • 逆三角形

    • に特色あり:肩で表情をつくる

    • 手足が長い

  24. 姿勢:から前屈;前屈みの習性

    1. 五種:肩パッドを入れた洋服を着たように,肩が張って筋肉が緊張

    2. 六種:肩が前に落ちたまま固まって丸まり,肩が張らず筋肉が弛緩

  25. 弛緩姿勢:肩の力が抜けて筋肉がゆるんだ六種的な姿勢

  26. 体量配分:弛緩立姿・挙上動作で前が重く,前屈み動作で後ろが重くなる

    1. 五種:高潮期になると前が重くなってくる

    2. 六種:低潮期になると前が重くなってくる

  27. 無意動作:何かあるとウンウンと頷き,首の前後動作がすばやい

    1. 五種:ソワソワ,ガヤガヤ,ざわ…ざわ…している

    2. 六種:意識とは反対に,体で返事してしまう

  28. 考える時の特徴:ロダンの「考える人

    1. 五種:行動しないと頭が働かない,ながら族

    2. 六種:座って物音を消さないと勉強できない,逆ながら族

  29. 行動:頭の中では絶えず計算しているのに,人前では気張って奢る

    1. 五種:自分の中にある不安・心痛・煩悶を乗り切るために,

    2. 六種:むしゃぶりつくように真剣に食べる

  30. 香典:婚礼の御進物のように立派に台にでも乗せ,中身も相応

  31. 仕事:儲かることならどんどんやり,利用できないことは考えもしない

  32. 生涯:冒険の本能;危険を克服できると認識しないと不安だから,危険でなくなるよう計算し,順序づけて実行する

  33. 先天的な先入主:絶え間ない不安よな。 松本 動きます。 

  34. 信念,信仰:実利が主体;大義名分や感情にとらわれず,自分の立場を有利にできることならすぐやる

  35. 主張:計算で動けない人を軽蔑する;自分が強いために,他人が弱くみえる

  36. 口癖:「こっちの方が儲かるぞ」

    1. 五種:「おいコラ!」

    2. 六種:「結構です」

  37. 音楽で関心をもつ要素:リズム

  38. 好む色:黄💛

  39. 夢のみかた:-

3.4 捻れ型: 七種, 八種

ここでは,捻れ型 七種・八種 体癖——勝ち負けで動く,闘争的でやりすぎな寸胴の体育会系——について簡単にまとめる.
なお,詳細な説明は記事を改める.

捻れ型は闘争型であり,勝負の世界に生き,下半身で動く武道家や893に多い.
武道は体を捻って技を出すという点で共通しているから,道場の師範はみんな,ぶ厚くて声がデカい.
歌手にも多く,高音や大声を出す時には,顔や体を捻る.
太鼓を叩くのも捻れ動作で,その音に集まる野次馬にも捻れ型が多い.

ビートたけしは,捻れ型の典型といえよう.
若い頃のカタギとは思えない気迫は,捻れ型の圧迫感で,下記のインタビューに濃く現れている.
そのくせ人より早く歳をとるから,頑固で強情だったのに,たちまち好々爺のコメンテーターになったというのも,捻れ型のひからび現象だろう.

長州力ドナルド・トランプも捻れ型で,見た目もそっくりだ.
長州力が唯一フォローしていた人がトランプだったのも面白い.

トランプといえばゴルフのイメージが強い.
ゴルフは捻れの偏りを修正するのに最適な運動だ.
体が快く感じる動きだから,趣味として続くのだろう.

次に,捻れ型の原色的な特徴を列挙する.

  1. 偏り運動習性:捻れ型(泌尿器型,下肢行動型,闘争型)

    1. 七種:右捻れ型

    2. 八種:左捻れ型

  2. 偏り運動の焦点:第 3 腰椎(L3)

  3. 運動焦点の感受性特性:勝ち負け

  4. 生理的感受性の中心:泌尿器

  5. 圧縮エネルギの 噴出・凝固 特性

    • 七種:闘争心昇華;何かあればムラムラと闘争心が湧く

    • 八種:腰部凝固;内心に闘争心が硬直

  6. エネルギ余剰時の特徴

    1. 七種:激しさが出てくる

    2. 八種:腰が硬くなる

  7. 緊張による反射:何かあると泌尿器が緊張し,尿意をもよおす

  8. 過敏反応:腰の捻れている方向と逆側の咽喉

  9. 偏り疲労時の特徴

    • 七種:腰は捻れず,肩が捻れる

    • 八種:肩は捻れず,腰が捻れる

  10. 風邪の経過:扁桃炎などから始まり,耳鼻を経た後に腎臓や膀胱の異常を起こすため,必ず小便の出が悪くなる

  11. 病気:体の異常を感じるのが遅く,かなりひどくなってから気づく

    • 帯状疱疹

    • 神経痛

    • リウマチ

  12. 老化:早く年をとる

    • 好々爺:昔は頑固だったのが,たちまち人がよくなる

    • ひからび(ゴツゴツ)現象:捻れていると出産の経過が不自然で,膣の筋肉がたるみ情愛もなくなる

  13. 健康指導:寝る前に重心側の足首を振る

  14. 体力発揮の方向:勝っている間は絶対的に強い

  15. 潜在体力の誘導:信賞必罰「それができたらこれをあげる,できなかったらあげない」「勝ったら褒美をやる,是が非でも勝て」

    1. 七種:見物人がいると強い

    2. 八種:「誰々はすごいな」「誰々ではできないな」

  16. 褒め方:「誰々よりよくやった」

  17. 叱り方:前もって空想を使って教えるのでなく,実際に失敗した時に「急ぐからそうなるんだ,気をつけなさい」と行動に結びつけて求心的に教える

  18. タブー:病気に対して頑張らせる

    1. 七種:相手が強い負け戦

    2. 八種:現存の誰かを競争の対象とする対立煽り

  19. 苦手:土壇場

  20. 能力:困難に真正面から立ち向かい,克服しようと頑張る頼もしさ

  21. 形容:衝動的;無意識に手が出てしまうため,闘争的なやりすぎは社会的に損

    1. 七種:脳筋,パワー系

    2. 八種:虚言癖;ハッタリが強く,話を盛って何度も話すうちに,自分でもそうだと思い込む

  22. 男女差:八種的な誇張の方向が異なる

    1. 男:話を盛って他者の競争心を煽るため,対立者を生み自身もムキになるが,働き者

    2. 女:声量やお化粧を盛るだけで言動にはつながらず,指摘されるとふてくされるため,怠け者

  23. 体型:厚い

    • r がついて角のとれた四角形

    • に特色あり:太く頑丈な寸胴

    • 片足だけ扁平足

  24. 姿勢:扁平足の側に上体が捻れ,片側だけ前屈

  25. 弛緩姿勢:-

  26. 体量配分:重心となる扁平足の側は後ろが重く,反対側は前が重い

    1. 七種:全体として前が重い

    2. 八種:全体として後ろが重く,前は外(小指)側に力がかかる

  27. 無意動作:尻か肩を振って歩く

  28. 考える時の特徴:座ったままでは考えられず,動作する

  29. 行動:すぐ「何を」とムキになって衝動的にやりすぎ,次の瞬間には後悔する

    1. 七種:勝とうとして行動

    2. 八種:負けまいとして,後から強がる

  30. 香典:-

  31. 仕事:逆張りして,自分の体癖ではそういないだろうと思う職業に就こうと考える

  32. 生涯:体育会系;強者には弱くぺこぺこし,弱者には強く威張る

  33. 先天的な先入主:お猿の闘志(猿的闘志)

  34. 信念,信仰:闘争や破壊が得意なため,信仰と結びつくと俄然つよくなり,信念を曲げない

  35. 主張:いつも他者に対して気張っているため,対象・見物人が必要

  36. 口癖:「勝敗は抜きにして」

    1. 七種:引き止められるのを期待して,「それなら出て行く」とすねて飛び出す

    2. 八種:男「いや,こんなにだ」,女「めんどくさい」

  37. 音楽で関心をもつ要素:音量

  38. 好む色:-

  39. 夢のみかた:-

3.5 開閉型: 九種, 十種

ここでは,開閉型 九種・十種 体癖——愛憎で動く,本能的で過保護な出っ尻・安産型の原始人——について簡単にまとめる.
なお,詳細な説明は記事を改める.

開閉型は,体の局所ではなく全体の,筋肉の収縮/エネルギの集注 の速度が,非常に速い・遅いという特徴をもつ体癖素質である.
他の体癖と比べて,骨盤の開閉の度合いが大きいため,男女差が著しい.

ADHD自閉症(アスペ),社会不適合者のレッテルを貼られるような人には,開閉型の体癖素質があると考えてよい.
学者には上下型も多いが,一生あきずに同じ研究に没頭するのは九種的だ.
野口自身は閉捻れで,名越康文も九種を自認している.
2.2  節で述べたように,野口は原始人がみな開閉型だったと考えていた.

加藤純一(うんこちゃん)も,九種的な感受性が濃い.
さらに同じく本能型である左右型を複合していることで,超能力のような強い直観が生じているようだ.
一度集注すると寝食も忘れて同じことをズーッとやり続けるというのが九種的な集中力であり,(義務でない)突発的な長時間配信が多く,「まだやってて草」とコメントされるようなストリーマーには,少なからず九種的な体癖素質があるだろう.

下記はまさに九種の弛緩姿勢で,頭がよく働く体勢でもある.
逆に十種なら,しゃがめず後ろにひっくり返る.

膝下が短く,顔のパーツが中央に寄っている ( ∵ ) のも九種の特徴だ.

次に,開閉型の原色的な特徴を列挙する.

  1. 偏り運動習性:開閉型(下がり型,生殖器型,直観型,本能型)

    1. 九種:閉型

    2. 十種:開型

  2. 偏り運動の焦点:第 4 腰椎(L4)

  3. 運動焦点の感受性特性:愛憎

  4. 生理的感受性の中心:生殖器

  5. 圧縮エネルギの 噴出・凝固 特性

    1. 九種:性欲昇華;エネルギの集注速度と集注度が高いため分散が激しく,集注の持続が長い

    2. 十種:下腹部凝固;エネルギの分散がスムーズなために,集注があって凝固・分散・爆発が弱い,九種の圧縮もれ状態

  6. エネルギ余剰時の特徴

    1. 九種:集注が限度を超すとスパッとやる

    2. 十種:自分が空っぽになっても他人のために動く

  7. 緊張による反射:何かあると生殖器が緊張

  8. 過敏反応:骨盤の開閉運動が激しい

    1. 九種:筋肉の収縮

    2. 十種:筋肉の弛緩

  9. 偏り疲労時の特徴

    1. 九種:口やかましくなる

    2. 十種:普段より余計に,サッと世話を焼く

  10. 風邪の経過:時に鼻に残るが,鼻から喉に落ちてくる

  11. 病気:腸骨の開閉調整だけで全異常が経過する

    1. 九種:腸骨を開く

    2. 十種:腸骨をひきしめる

  12. 老化:いつまでも年をとらず,ひからび現象もない

  13. 健康指導:下に落ちている椎骨を上に持ち上げる

    1. 九種:どんなに太っていても,腸骨をひきしめると迅速に痩せる

    2. 十種:ゆっくり構えて経過する

  14. 体力発揮の方向:抱え込んだ対象のため

    1. 九種:自分の子・恋愛対象のことを考える

    2. 十種:傾け得る愛情の対象(血縁関係のない他人でも動物でも何でもいい)のため

  15. 潜在体力の誘導

    1. 九種:飽きるまでやらせておく

    2. 十種:全責任を負わせて世話させ,自分では何もやらない

  16. 褒め方

    1. 九種:当人のこだわりに的中しないと逆効果

    2. 十種:さらに責任を背負わせて負担をかける

  17. 叱り方

    1. 九種:叱る心を言葉より強く感じる勘のよさと,空想の中へ自分を発展させる性質を活用して,言いかけてピタリと止める

    2. 十種:真正面からの叱言だけが良くきくので,余分な言いまわしはせず,言い過ぎても気にしない

  18. タブー

    1. 九種:納得するのを待たずに強制する;納得できないものが心の中に溜まっていき,凝固して内攻する

    2. 十種:世話をぜんぶ任せきらずに,自分で骨折って何かする

  19. 苦手:自分のために利害得失を計算

    1. 九種:人間関係;強情で始末が悪いため,集団に属さずひとりで暮らすべきもの

    2. 十種:他人を疑う;窮鳥懐に入れば猟師も殺さず,抱え込んだら清も濁もなく信頼する

  20. 能力:体が野蛮;種族保存に適する丈夫ナカラダヲモチ,安産

    1. 九種:天才;考えるより直観が鋭く,勘でパッと行動を決められる

    2. 十種:心が天真爛漫;俗世的な頭のはたらきがないため,いくつになっても若くて人相がよく,目はいつも輝いている

  21. 形容:人間の原型

    1. 九種:All or Nothing(全か無か,一か八か),百年の恨み

    2. 十種:母性的;すこぶる親切で,自分が空っぽになっても抱え込んだ相手のために動く

  22. 男女差:骨盤の開閉が大きいため,男女で非常な差

  23. 体型

    • 疎密

      1. 九種:細いが密度が高く,脱ぐと筋肉がついて立派

      2. 十種:若い頃は細くて九種と似ているが,更年期/出産を機に太りすぎ,痩せない

    • 下腹仙骨部に特色あり

      1. 九種:出っ尻;骨盤が縮んで上がり,横から見ると,骨盤の反り(S 字カーブ)が強く,尻が後ろにつき出て丸い

      2. 十種:安産型;骨盤が開いて下がり,後ろから見ると腰の横幅は広いが,横から見ると平ら

    • 両足とも扁平足

  24. 姿勢

    1. 九種:サッと腰を下げて下腹に力を入れて身構える

    2. 十種:筋肉の収縮が非常に遅い,九種の弛緩状態

  25. 弛緩姿勢

    1. 九種:しゃがみ姿勢(うんこ座り)が弛緩姿勢

    2. 十種:腸骨のひきしまる力がないため,腸骨の幅に足を開くと踵をつけてしゃがめず,後ろにひっくり返る

  26. 体量配分:前が半分以上重い

    1. 九種:前の内側に集注して緊張し,しゃがむと後ろに半分以上かかり,前の外側に少し残る

    2. 十種:前の外側に集注して弛緩し,しゃがむと後ろがほぼ0になるかしゃがめず内側が重くなるが,それ以外の全動作を通じて外側と後ろが重い

  27. 無意動作

    1. 九種:一瞬のうちに〈相手がなぜそうしたか〉を一通り考え,納得しないと反応できない

    2. 十種:何をやってもゆっくりで,本題に入るまでが長い

  28. 考える時の特徴

    1. 九種:しゃがんでいると頭がよく働くため,長々と和式便所で考える

    2. 十種:考える頭がない

  29. 行動

    1. 九種:しつこい;集注の持続が長く,同じことを飽きずに何度でも繰り返し,一つを完全に済まさないと次に取りかかれない

    2. 十種:俗な考えをもたず,純真に動く

  30. 香典

    1. 九種:小さなクシャクシャの茶封筒に「お香典」と書いて,高額をひょいと置いていく

    2. 十種:言い回しが長い

  31. 仕事

    1. 九種:関心をもち興味のあることをどこまでも掘り下げ,一生やり続ける

    2. 十種:頭が純真で,俗世的にこまごまと働けない

  32. 生涯:にぎやか

    1. 九種:家にその人がいないだけで,火が消えたようにしずまる

    2. 十種:動物でも植物でも,片っ端から拾ってきて世話している

  33. 先天的な先入主:種族保存の要求

    1. 九種:性欲;骨盤が締まっているため,性エネルギが性欲の形をとり,自分の子だけがかわいい

    2. 十種:愛情;骨盤が広がっているため,性エネルギが頭に昇華し,頭の中で種族保存のはたらきが強く行われて愛情の形をとり,自分の懐に入ったものは何でも庇う

  34. 信念,信仰:自分よりも,自分の子・抱え込んだ対象のため

  35. 主張

    1. 九種:すこぶる厳しい

    2. 十種:すこぶる親切

  36. 口癖

    1. 九種:「なんで?」;納得しないと動けない

    2. 十種:「はいはい」;亭主も子供として抱え込む

  37. 音楽で関心をもつ要素:間;音楽のない余白に快感

  38. 好む色:灰🩶

  39. 夢のみかた:九種は空想を次々に連想して現実感をなくすため,夢と現実との区別がつかずに取り違える

3.6 剛柔型:十一種,十二種

ここでは,剛柔型 十一種・十二種 体癖——偏り習性のない,生まれつき病的に反応が遅速な体の状態——について簡単にまとめる.
なお,詳細な説明は記事を改める.

剛柔型は,他の 10 種類の体癖と違って独特な偏り運動習性をもたない代わり,反応が極端に敏感・鈍感という体そのもののある状態を示す.
その状態が生まれつき,ずっと体の中にあるため,野口はこれも体癖に分類した.
体量配分や言動から見分けることは困難で,観察していても何種だかさっぱり分からないような体癖だ.

次に,剛柔型の原色的な特徴を列挙する.

  1. 偏り運動習性:剛柔型(硬軟型,遅速型,敏鈍型)

    1. 十一種:柔型,軟型,敏型,速型,反応過敏型

    2. 十二種:剛型,硬型,鈍型,遅型,反応遅鈍型

  2. 偏り運動の焦点:-

  3. 運動焦点の感受性特性:-

  4. 生理的感受性の中心:-

  5. 圧縮エネルギの 噴出・凝固 特性

    1. 十一種:一般の感受性が過敏

    2. 十二種:一般の感受性が遅鈍

  6. エネルギ余剰時の特徴:-

  7. 緊張による反射

    1. 十一種:心理的に緊張すると,必ず鳩尾に球が出てきて病気を引き起こす

    2. 十二種:体中が逆反射するため,「ゆるめてください」と言われて力を抜こうと思うと,いよいよ力が入って体が硬くなる

  8. 過敏反応

    1. 十一種:心の変動が,体に過敏反応する

    2. 十二種:刺激に対する反応がない鋼の肉体をもつが,くたびれやすい

  9. 偏り疲労時の特徴:-

  10. 風邪の経過

    1. 十一種:しょっちゅう風邪をひく

    2. 十二種:めったに風邪をひかないが,一旦ひくと非常に長くかかる

  11. 病気

    1. 十一種:病人病

    2. 十二種:無病病

  12. 老化:-

  13. 健康指導

    1. 十一種:病気に懲りて二度と繰り返さないよう,治りかけに絶対安静を強いる

    2. 十二種:逆の内容を指示する

  14. 体力発揮の方向:-

  15. 潜在体力の誘導:-

  16. 褒め方:-

  17. 叱り方:-

  18. タブー

    1. 十一種:病気のときだけ親切に面倒をみる

    2. 十二種:潜伏期間が長く異常を感じないため,健康だと誤解する

  19. 苦手:-

  20. 能力:-

  21. 形容

    1. 十一種:ヒステリック,統合失調症

    2. 十二種:短気

  22. 男女差:-

  23. 体型:細い

    • 背部に特色あり

      1. 十一種:椎骨を触るとすぐに過敏反応,肩に力がない,顔が小さい

      2. 十二種:椎骨を触ってもどこも何も感じない,肩の力が抜けない,顔が大きい

    • 顔の大きさ

      1. 十一種:顔が小さい

      2. 十二種:顔が大きい

  24. 姿勢

    • 十一種:肩に力が入らない

    • 十二種:肩に力が入ったままゆるまず,衣紋掛けにかけた羽織のよう

  25. 弛緩姿勢:-

  26. 体量配分:体量配分で見分けるのが最も難しく,長期測定を要する

    1. 十一種:測るたびに傾向が変わる

    2. 十二種:ちっとも変わらない

  27. 無意動作

  28. 考える時の特徴:-

  29. 行動:観察しても何種だかわからない

  30. 香典:-

  31. 仕事:-

  32. 生涯

    1. 十一種:心理的な変動で起こした病気で死ぬ

    2. 十二種:太く短く

  33. 先天的な先入主:-

  34. 信念,信仰:-

  35. 主張:-

  36. 口癖:-

  37. 音楽で関心をもつ要素:-

  38. 好む色:-

  39. 夢のみかた:-

4. 結論

本記事の内容は,体癖論のほんの触りにすぎない.
それでも,体癖による根本的な感受性の違いが,とても「話せばわかる」ような薄っぺらいものでないことは伝わると思う.
同じものを見たり考えたりしているようで,反応する部分が異なるのだから,体癖の異なる人と話が通じないのは当たり前じゃねえからな、この状況!だ.

一方で,マスメディアによる「多様性」を認めろというエコーチェンバーは,それ自体が感受性の多様性を否定しており,見事なまでの自家撞着に陥っている.
他者の外見や思想,性的嗜好を歓迎するも拒絶するも,その人の感受性しだいで,社会が押し付けてよいものではない.
しかもその感受性は生涯不変であり,他者を論破して自分の感受性に染め上げることなど土台,不可能だ.
この先天的な感受性の違いを,「人それぞれ」という超科学的な極論で片付けず,心と体との関係として整理したのが体癖論である.

体癖論を活用するうえで,体癖の知識にもとづく人間観察が第一段階なら,第二段階は相手の体癖になりきること:自身と異なる体癖へのロールプレイングだろう.
これは,プレイヤーが自身の意思により現実世界で行動する RPG: LARP (Live Action Role Playing game) といえる.

シミュレーション仮説として知られるように,この世界が GPU 上の計算で,しかもそれがマトリョーシカのように幾重もの入れ子になっていたとしても,中から外の状態は確認できない.
したがって,この世界を MMORPG の一つと捉えても矛盾はない.
その世界で,それぞれが体癖という役割を担って生きているのだから,まさに「人生はロールプレイング」だ.

ただし,これは人生が定まったルートをなぞるだけのつまらないものだという意味ではない.

この世界がシミュレーションだとしても,それを実行している進歩した生命にとっても結果は未知のはずだ.
もし何が起きるかを知っていたら,わざわざ計算する必要がないのだから.

そういう意味で体癖は,生まれる前から定まっている宿命に近い.

人間は各々のそういう宿命というか、体癖によって生きているのですから、お互いにそれを理解し合っていけば、もう少し人間社会の中のゴタゴタは少なくなると思うのです。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 164.

しかし体癖は生まれつきのものですから、それから逃れようとしても逃れられないのです。
人間の行動にもいろいろあって、反射的に無意識にそうやる行動の特性があるのだと言うことを、まず心得て人間を観ないと、間違うことがある。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 164.

一方で野口は,人格を高めることで体癖を克服できるとも考えていた.

師野口晴哉は、すべての体癖において(どの人においても)、修養により自分の体癖を超えることができた場合、自分という枠の外に出ることができることを示唆していました。

近藤佐和子:「(補)捻れ型の「勝ち負け」の世界」.

これはまるで,仏教における悟り——迷いを去って真理を知ること——のようだ.
そこまで至った人が釈迦 (fps_shaka) 以外にいたかは疑問だが,体癖論を学べば,誰でも他の体癖になりきって考えることはできる.
また偏りすぎれば,体にとって不自然な体癖の状態を,自力で修正することもできる.

したがって私は,社会で最も重要な体癖論の意義は,意識的にほかの体癖に LARP することで,感受性の違いによって生じるさまざまな人間関係のいざこざを回避することだと考える.

開閉型のように直観によって行動できる人は,わざわざ体癖論を勉強する必要もないかもしれない.
しかし人類は何世代にもわたって,松果体が関連するとされる直観を退化させられてきたため,集合的意識あるいは集合的無意識へアクセスできなくなっている.
そうして生み出された——動物としての本能もなければ自由意志で考えることもできない,まさにこの世界という集合的 LARP における NPC (Non Playable Characters) である——羊のような大衆 (sheeple) にとって体癖論は,自身のコントローラーを握りなおして PC (Playable Characters) 自由意思で歩みだすきっかけになると思う.
あるいは,直観のない NPC には体癖論を理解して自分の知恵として活用することができないため,体癖論の研究者には九種が多いのだろうか?

西洋医学における健康法には,一時の体の変動を防ぐために対症療法で感覚をごまかし,その無病状態を健康だと誤認している場合が多い.
しかし,それは明らかに病気の一種である.
原因を改善しないかぎり,病状は悪化の一途をたどり,治療を継続する資金が尽きればポックリ倒れてしまう.
野口は,このような医療が十二種的な体をつくると考えていた.

けれども、現在の衛生方法は、病気にならないように予防するとか、なっても痛みを感じないように麻痺させるとかいう方向で治療をするので、ともすると十二種的な体を作る方向に行きがちなように思われます。
その結果、癌とか脳溢血が多くなってきたともいえる。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),pp. 283–284.

健康とは,薬や治療,健康食品によって得られるものではない.

健康に至る唯一の方法は,全力を出しきって自発的に行動し,ぐっすり眠ることだ.
自分から動かなくては,健康になどなれない.

何もしなくても健康で丈夫なように,人間はできている。
楽しく快く生きることこそ人間の丈夫になる自然の道である。
守られ庇われ、やりたいことをやれず、言いたいことを言えず、動きたいのに動かないで暮らしていることは決して健康への道ではない。

野口晴哉:『体癖』,(筑摩書房 ,2013),p. 34.

体癖各論は,次のマガジンにまとめる予定だ.


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