上下型1種・2種体癖:メンツで動く,思索的であがり症な首長族の仙人
本記事では,次に示す体癖の概論で簡単に述べた上下型 一種・二種 体癖の各論について,詳しく解説する.
体癖論を本格的に学びたい読者は,野口晴哉による原典も参照されたい.
ただし,野口の著書には難解な記述が多く,情報も各書のあちこちに点在している.
そこで本記事の目的は,体癖論を初学者でも理解・検索しやすいように,散らばった情報を体系だてて整理しながら,野口の体癖論に対して現代に即した解説・考察を加えることとした.
また本記事は,他の体癖の各論を執筆しながら並行して追記してゆくので,備忘録的に参照されたい.
1. 上下型の典型
男性的な体癖素質であり,男は多少なりとも上下型をもつ.
理屈っぽく,論理的に考えすぎて時に冷たさを感じさせる,一般的な男性のイメージ.
体量配分表や無意運動習性をみても,一種と二種との区別はつかない.
しかし,感受性の方向・潜在体力の動きからは,明らかに区別できる.
一種は積極的な,二種は消極的な上下型である.
上下型の濃い人はみな,面長で間のびした印象があり,口はいつも半開きでしまりがない.
常に考え事をして大脳を緊張させている代償として,体の方は無防備に弛緩しているのである.
これは本章で例示する人物にも,高潮期に一種体癖が濃くなる私にも共通する特徴である.
五種的な現代社会におけるスマートなイケメン像とは異なるため,「真面目そう」や「頭が良さそう」などと敬遠される人も多いだろう.
ところが左右型の目には,よくわからない神秘的な生きものとして,外見も言動もすべてが魅力的に映る.
逆もまたしかりで,上下型と左右型とは互いに相性が良いため,夫婦仲も良好だ.
以下に,私が上下型だと考える有名人の例を示す.
1.1 芥川龍之介
小説家・芥川龍之介は,上下型の典型といえよう.
『羅生門』や『鼻』など短編の傑作が多く知られている一方で,長編を完成させることはできなかった.
この理由は,飽き性という上下型の特徴として理解できる.
また第一高等学校(現:東大,千葉大)英文科への入試が免除されるほど成績がよく,英文学書を 1200~1300 ページ/日 は楽に読めるというほど語学・速読に秀でていたという.
これも,活字好きで勉強が得意な上下型の特徴と一致する.
外見も,まさに上下型の理想的な体型で,
顔も体も細長く,
首は太く長く,
頭は大きい.
首は体力の象徴である.
したがって芥川も寿命は長かったはずだが,35 歳で服毒自殺したといわれている.
分業制の現代では,誰もが複合体癖だと考えてよい.
その中の割合が高い体癖素質ほど,その傾向も強くなる.
芥川には上下型の特徴がかなり濃くみられるため,私は彼がほぼ純粋な上下型一種・二種体癖だったと考える.
ただし,自殺やその直前の衰弱に関する通説が真実ならば,それらの原因となったであろう低潮期に濃くなる裏の体癖は,四種や六種,八種だったかもしれない.
これについては,芥川ファンの読者諸賢からの情報提供に頼りたい.
1.2 藤井聡太
棋士・藤井聡太も,上下型の典型といえよう.
藤井聡太最強!であることは言うまでもないが,それを「天才」の一言で片付けるのは失礼だ.
彼の強さの秘訣は,自身の体癖を活かした修行にある.
藤井は「子どものころから長考派でじっくり考えるのが好きだった」と述べており,思索的でゆっくりしているという上下型の特徴がうまく長所になっている.
また対局中は「読みと形勢判断以外のものは基本的にいらない」と考えており,勘が悪い代わりに頭で考えて動くという上下型の感受性が濃くあらわれている.
長考派なら,持ち時間のなくなった終盤には弱いはずだ.
ところが藤井は,幼少期から詰将棋で培った正確な終盤力にも定評がある.
すなわち,詰将棋という終盤戦の修行を続けることにより,勘が悪く咄嗟の判断ができないという上下型の弱みを,膨大な知識量によってカバーしているということだ.
この点において,藤井は自身の体癖を克服したと言っても過言ではないだろう.
藤井は,自作 PC でディープラーニング系の将棋ソフトを用いて研究しているという.
自身の棋風にこだわりがないという点も,従順かつ飽き性という上下型の特徴を長所に昇華している.
読書家で,インタビューにおける語彙力や文章力も,若者離れしている.
また脳内将棋盤で駒を動かすのではなく,符号が浮かんでくるという.
これらは,左脳型で文字に強い上下型の特徴と合致する.
体型も芥川と同様,首が太く長く,頭の大きい理想的な上下型だ.
藤井とよく似た上下型の研究者がいる.
彼も非常に活字に強くて頭が良く,興味深いことに喋り声までそっくりだ.拝啓ドッペルゲンガー君は,体癖が共通しているはずだから,見た目だけでなく感受性もそっくりだと予想できる.
さて,上下型が主体の藤井だが,幼少期には負けるたびに号泣していたというほどの負けず嫌いな性格は,上下型だけでは説明できない.
そのような「尋常ではない勝負への執着」は,間違いなく捻れ型の感受性であり,特に負けまいとする方向に動くのは八種体癖だ.
八種は,捻れ型のうち低潮期に濃くなる集注要求体癖だから,誰もが集注要求の強い,幼少期の負けず嫌いな性格は,八種を複合しているとして理解できる.
将棋も勝負の世界だから,捻れ型の勝ち負けの感受性は有利に働く.
しかし,それも才能というより,幼少期に負けん気を十分に発揮するように,逃げずに対局を重ねてきた努力の結晶である.
体の面では,短距離走が得意で,クラスの女子から「足が速くて運動神経がいい」と評判だったという.
これについて私は,足のない幽霊のごとき上下型に捻れが加わることで,下肢の筋肉が発達して,瞬発力を生んでいると考える.
また唾液が多い喋り方も,小便の出が悪い泌尿器型八種の特徴と合致する.
これらの傾向は実際,閉型一種・八種体癖を自認する私の体にもある.
したがって私は,藤井聡太が上下型一種・八種体癖——高潮期に上下型が濃くなり低潮期に捻れ型が濃くなる上下型——だと考える.
1.3 おにや
ネット上の有名人なら,配信者・おにやがわかりやすい.
面長で首がしっかりしていて,体も細長い.
よく推敲して,ひねった言葉遊びのある小粋な文章を考えるのは,上下型の特徴と合致する.
理屈っぽくて,話し始めると止まらず,めっちゃ早口で言ってそう.
相手の反応など目もくれず,一方的に喋るだけで会話にならない.
しかも客観的な着地点が見えないまま,話が収束してしまう.
これらも上下型の特徴ではあるが,おにやの場合,その理屈が正しかったためしがない.
むしろ,理屈が好きでとなえているが,借り物の言葉を自分の考えかのように言う,三種・二種的な状態かもしれない.
ロングスリーパーなのも,上下型の低潮期(スランプ)の特徴である.
ただし,一種の高潮期には体がひきしまって眠りが短くなる.
いつでも大谷より長く眠れるなら,彼の上下型は二種だということになる.
周期的に,配信もせずブクブク太ってくる時期を繰り返す.
これは上下型の低潮期の特徴だ.
その間は,ギャンブルかサウナに常駐しているらしい.
その行動の原理が好きという感情なら,左右型の感受性だ.
一方で,賭けにハマるのは,捻れ型や前後型に思える.
勝ち負けにこだわってムキになる様子はないので,捻れ型は少ないだろう.
裏ではアナリティクスの話ばかりするという点で,利害得失の前後型の感受性はありそうだが,それがどれだけ濃いかについては考察の余地がある.
国際線の飛行機の搭乗時刻ギリギリになって突然メシを食いに行き,あわや大迷惑というエピソードがある.
これは完全に左右型の感受性だから,少なくとも左右型と上下型とが複合している.
ゴミ屋敷も,片付けが大嫌いな左右型の特徴だ.
以上より,おにやは,しょせん半分の残念な上下型といわざるをえない.
体型は上下型だから,おそらく両方の特質を低下させる複合体癖:上下型三種・二種体癖だろう.
あるいは,上下型にみえる体型は,二種と見分けのつかない四種の直線的な傾向が濃く表れている状態で,左右型一種・四種体癖かもしれない.
詳しい体癖の複合状態は,(万が一,需要があれば)改めて考察する.
1.4 その他
以前,下記の投稿がバズった.
上下型は文字に現実感があるから,暇さえあれば何かを読んでいる.
ゲームをしても,テキストを飛ばせないので適当に周回することができない.
ただし上下型は飽きるから,成分表や取説のような定型文ばかり読み続けることはないはずだ.
そういう収集癖は,むしろ九種的な集注とみるべきだろう.
下記の投稿における「ある程度以上の偏差値をとってしまう生徒」も上下型を指している.
ただし上下型の成績がいいのは,彼らの読解力が高いからであり,教科書の完成度が異常だからではない.
眼光紙背に徹する上下型は,むしろ教科書は情報量が少なくて証明も省略されているから不親切だと思っている.
ところで投稿者は,何が「残念」で,なぜ「とってしまう」と否定的なのか?
これについて私は,上下型を貶すだけでは飽き足らず他の体癖をも見下しているという点から,自分が強すぎて周りが弱く見える前後型か,他人にすこぶる厳しい九種的な感受性が濃いと考える.
私も,首から上が長いため,上下型の感受性をもつ.
特に,高潮期に上下傾向が濃くなるから,一種体癖を複合していると考える.
私の一種的な特徴は次のとおり.
睡眠時間の確保が最優先だから,定時で帰るし,飲み会のような誘いは全て断る
いくらでも眠れる時期と,睡眠が短くても眠くならない時期とが交互にくる
高潮期で筆が進むときも,上から下へと一気呵成に書き上げることはできず,あっちをちょこちょこ,こっちをちょこちょこ,別の記事も並行していったりきたりしながら執筆する
うつ伏せに寝っ転がって本を読む時は,膝を曲げて足を上げる
空を飛ぶ夢をよく見る
座学で苦手な科目がない
ポケモンのニックネームをつけるときなど,既存の言葉ではなく,ひとひねり加えた名前にしないと気が済まず,命名に莫大な時間がかかる
ポケモンの種族名は,——「ポリゴン」のようなド直球の名前もあるが——「ファイアロー」のようにモチーフから連想した単語をうまく組み合わせた名前が多い.
ストーリーがしっかり練られているという点にも,上下的な感受性が見てとれる.
下記では,一種を「名づけ者」命名しているが,それ自体も一種的な感受性といえよう.
しかも,一種だけ突出して,詳細かつ魅力的に説明している.
おそらく筆者の体癖だろうから,客観性には疑問が残るが,名づけに莫大なエネルギをつかうことには禿同激しく同意する.
2. 体癖各論
次に,上下型の原色的な特徴を列挙し,詳しく解説する.
2.1 偏り運動
立姿における偏り運動習性は上下方向で,圧縮エネルギの昇華方向も同様である.
このような習性を上下型と定義する.
野口は,上下型の特性を次のように表現している.
上がり型
大脳型
観念型
思索型
上下型の偏り運動の焦点は,第 1 腰椎(L1)である.
他の体癖なら,歩くときは L3 に力がかかる.
ところが上がりやの上下型は,踵をつけずに歩くから L1 に力が入る.
そのため L1 が飛び出して,可動性が鈍くなる.
そこで一種的な緊張を緩めるには,上がった L1 を下ろすように,腸骨櫛(腸骨稜,骨盤の上縁)を指で押し下げるか,もっと積極的に足を上げる.
逆に,一種的な感受性をたかめたければ,L1 が飛び出す体形にして,暗示を与えればよい.
偏り運動焦点の感受性特性は,毀誉褒貶(きよほうへん).
すなわち,褒める/貶す ことが感受性の中心である.
同時に,メンツ・面目を立てることが行動の原理となる.
上下型の人と仲良くなりたければ,メンツが立つよう的確に褒めること.
くどくど言いすぎるぐらい褒めてよい.
お食事(左右型)とか,儲け話(前後型)とか,ご褒美(捻れ型)とか,実利的なものに対する反応は薄い.
逆に,冗談でも貶すようなことを言えば嫌な思いをする.
「面目丸潰れ」というのは,上下型の言葉だろう.
2.2 圧縮エネルギの集散
L1 への偏心により生ずる,生理的感受性の中心となる臓器は脳である.
したがって,体力の余剰により生じた圧縮エネルギは,脳で処理される.
圧縮エネルギの噴出速度によって,上下型は次の 2 種類の体癖素質に分けられる.
一種:上型
二種:下型
ただし,噴出の遅い偶数体癖は体の要求する方でないから,野口は体癖素質の説明を奇数体癖で代表している.
したがって野口の言う「一種」は,二種を表している場合があるということに注意.
圧縮エネルギの 噴出・凝固 特性は,それぞれ次のとおり.
一種:大脳昇華
エネルギが余ると,思考に変わる
頭ばかり働き,空想が無闇に湧く
頭の中の運動になり,かえって行動しなくなる
体の働きを大脳の働きに転換
性欲がたかまると難しい本が読みたくなり,読めば体の要求は
ヌかずに抜ける体の要求は感じずに議論したくなる時期が周期的にある
二種:間脳昇華
エネルギが余ると,大脳反射傾向が過敏になる
頭の働きがたかまることを,体の異常感覚として感ずる
いつも頭の中で一人相撲して,色々と考えていると頭の中が一杯になってまとまらない
まとまらずに頭が疲れると,食欲がなくなったり胃が痛んだりする
心理的な緊張による反射はいつも脳に起こる.
何かあると大脳が緊張するという点では,一種も二種も共通している.
しかし次に示すように,その感じ方が異なる.
一種:頭の働きとして感ずる
二種:大脳緊張が,すばやく肉体上の変化・運動を引き起こす
間脳反射が速い
頭で驚く前に,顔や手足がこわばる
何を心配しようと,間脳過敏状態に現れる
迷走神経系統の支配する臓器が敏感に反応
心臓
心悸亢進
脈拍の増減
脈拍の乱れ
胃袋
胃酸過多
下痢
食欲不振
汚いものを見ると,すぐ吐き気がする
頭の中で運動会さえ開けば,すぐ胃が痛む
過敏反応部位は背骨の両側で,緊張するとすぐに硬くなる.
次の箇所も同様で,引っ掻いたり温めたりしたときにどちらが赤くなりやすいかを見れば,一種と二種とを判別できる.
一種:頸椎筋(首の後ろ)
二種:胸鎖乳突筋(首の横)
2.3 偏り疲労
上下型は偏り運動焦点が L1 だから,偏り疲労の中心も L1 に偏する.
偏り疲労の蓄積により生ずる,身体的な特徴は次のとおり.
一種
首が緊張
顎が緊張
第 5 胸椎(T5)が上がり,たくましく見える
L1 が硬直
二種
首が弛緩
恥骨が出る
前側の肋骨が下がり,T5 が下がる
L5 が硬直
同時に,感受性の面では次のような傾向が濃くなる.
一種
一言で片付けられず,頭が働きっぱなしになり,顎の緊張によって頭が疲れる
考えても考えても,考え尽したという気がしない
現実感が薄れて,抽象の世界へ埋没してゆく
言外のことが分らなくなる
二種
体の異常として感ずる
頭を集中的に使っていろいろ考えていると,頭の中がいっぱいになってまとまらずくたびれるが,頭の疲れを感ずる前に体がだるくなる
不快の理由を見つけて,感情を頭で処理するが,体の働きに残って疲れる
吐き気
胃が痛み,最終的に胃潰瘍になる
大事と小事の区別がつかなくなり,全てが大事に感じる
八方美人になり,変な妥協をする
偏り疲労が限度を超すと,体は風邪をひいて偏りを修正する.
風邪の経過の特徴は次のとおり.
頭へゆき,いつでも鼻に残り詰まったまま
四月には,腹が痛み便秘する上下下痢(春の大掃除)をする
ところが,風邪の経過を乱したり,体が鈍って風邪をひけなかったりすると,偏り疲労がほかの病気に化ける.
特徴的な病気は次のとおり.
一種
胃が悪くなると,胸椎 6 番(T6)が——他の体癖では下がるのに——上がる
上がった背骨を下ろすと,機嫌が良くなる
放っておくと,なんでもないことに心配したり苦情をいったりする状態が 10 日間つづく
観念だけで体まで自在に壊す
病気だと思い込むと,ノイローゼだけでは終わらず,実際に体にその症状をつくる
潜在意識の中にある圧縮された塊が破壊されないと,どんな病気にでもなるから,得体の知れない病気が多い
二種
何を心配しようと,その影響は間脳過敏状態による胃袋や心臓の変動として現れる
胃潰瘍,胃下垂:首の胸鎖乳突筋を愉気しながら押さえれば治るという面で特殊
心理的な甘えが原因となって乗り物で酔う:二種,四種,十一種の特徴
だんだん病気を重くしてゆく
重くないと来てくれない,徹夜してくれない,騒いでくれない,放っておかれる,寂しい,不安
二種や十一種に多い
2.4 潜在体力
首は体力の象徴である.
赤ちゃん好きぃ?も,体力がある子ほど首が早くすわる.
したがって老化という面では,上下型は体力があって長生きできる.
整体の最終目標である全生に至るために行うとよい,具体的な健康指導は次のとおり.
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