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【ビジョナリーカンパニー編16:始まりの終わり】


前回までの投稿を上記に入れています。

ある日、入社20年になる健は工場長の哲也に呼ばれ工場長室に行く。健はここ数年、全社が注目する新規事業の計画・プロセス立ち上げをこの工場で行ってきた。立ち上げが終わり、そのまま課長をするよう内示を受ける。それと同時に工場長からビジョナリーカンパニーについての解説・指導を受けます。1章でビジョナリーカンパニーの定義、2章で時計を作ることの大事さ、第3章で時計のための理念の重要性、AND思考重要性、そして、第4章でその理念をどう維持、進歩させていくか解説してきました。第二部として具体例を5-9章と解説してきましたが、今回は、最終章、第10章「始まりの終わり」を解説します。

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◆一貫性の力

🧒‍:おはようございます。

👨‍🦳‍:おはよう、いよいよ。10章だ。この章では最初にこれまで解説してきた中でも重要な概念である「一貫性」について言及されている。著者は、「一貫性」は下記のように定義している。

基本理念と目標とする進歩のために、会社の動きのすべての部分が協力し合っていること(基本理念と進歩をビジョンと言い換えてもいい。ビジョンとは、長期にわたって維持される基本理念と、将来の理想に向けた進歩の二つの組み合わせだとわたしたちは考えている)。

本章では、一貫性が特に保たれている企業が3社ほど記載されているが、ここでは、ヒューレットパッカードの例を記載する。

🧒‍:確かに、何度も言っているように、きれいな理念を作るだけでは全く意味がなくて、それを各種、行動や習慣に落とし込む必要があると。そのために重要な概念が一貫性ということですね。まさに組織として、積み上げていく力ですね。

👨‍🦳‍;その通りだ。ではHPの例へ行こう。彼らは、彼らの企業としての理想を「模範的な社会機関」と表現している。そして、同社の教育・指導原則を「四つの義務」と呼ばれる原理にまとめたんだ。

🧒‍:原則。なるほど。

👨‍🦳‍:下記だ。

第一に、収益性を高く保って成長を続けなければならない。
第二に、利益は技術の進歩への貢献によるものでなければならない。
第三に、従業員の人間としての価値を認め、従業員と会社の成功を共有できるようにしなければならない。
第四に、社会のなかで責任ある企業市民として活動しなければならない。

🧒‍:この辺の原則はこれまで見てきましたね。ただ、これが現実に落とし込む部分に難しさがあって、一貫性をどうHPが貫いてきたかということを知りたいですね。

👨‍🦳‍:その通りだ。二と三の具体例を下記に紹介しよう。まず第二の“利益は技術の進歩への貢献によるものでなければならない”についてだ。技術の進歩への貢献を重要視し、起業家精神を大切にするために、HPはさまざまな手段を使っている。1950年代以降、経験だけが人材ではなく、一流大学の工学部大学院を上位10パーセントの成績で卒業する若者だけを雇うようになった。将来への投資だ。そして、1990年には、過去三年間に発売した製品で売上高の50%を占めるようになっていたんだ。

🧒‍;50%が三年以内ってすごいですね。それも1990年に実現って、一貫して実施してきている証拠ですね。

👨‍🦳‍;そして、第三の“従業員の人間としての価値を認め、従業員と会社の成功を共有できるようにしなければならない”だ。同社には従業員を尊重する姿勢を、いくつもの具体的な方法によって示してきた伝統があるんだ。1940年代には、ボーナス制を導入し、さらに医療費保険制度も設けた。当時にしては異例だ。そして、1950年代に株式を上場したとき、対象条件はあるが、自社株を無条件で分配し、従業員持ち株制度をつくって、会社が補助を出すことにしている。大口の政府契約をとらない方針をとっていた、これは極端な仕事の増減でレイオフが起きることをさけるためだ。ほかにもアメリカ企業初のフレックス制の導入など多くの例がある。

🧒‍;これも継続して実行しているのがすごい。。一貫性があるといえる。

◆HPウェイ

👨‍🦳‍:その通りだ。そして、これらに継続性と一貫性を持たせるために、HPは、いわゆる「HPウエイ」の考え方に従業員が浸透させることに、大きな努力を払っている。ヒューレットとパッカードは1950年代に、管理職の全員を「ソノマ会議」という会議に集め、HPの基本原理と理想を記した文書をつくったんだ。「ある意味では合衆国憲法に似ており、基本的な理想を表明して、そのときどきに解釈し、改定できるものにした」といわれている。

🧒‍;憲法って、これまたすごい、まさにカルトのような文化ですね。

👨‍🦳‍;そう。そこから、HP人事考課について厳密に考え、さらに採用において「合っているかどうか、適合できるかどうか」を判断材料とした。そして、デーブ・パッカード下記のようにいっている。

「当社ではごく初期から、第一線の責任者を教化し、基本理念に適応するようにすることが重要だと気づいていた。……ほとんどの人たちにとって、第一線の責任者こそが、会社を代表しているからである」

とね。

🧒‍;洗脳といってはいけいないですが、浸透させる意識がすごいですね。

◆一貫性の達成のために

👨‍🦳‍;ヒューレットとパッカードがそうしたように、自社の基本理念について話し合うために、社外で会議を開くのは、すばらしい方法だ。そして、自社のために高い理想を掲げることも重要である。自社の指導理念を文書にするのも重要である。ただ、これだけでは、ビジョナリーカンパニーの一貫性を達成できない。著者は最後にいくつかの指針をあげているんだ。

◆全体像を描く

👨‍🦳‍:ビジョナリー・カンパニーは基本理念を維持し、進歩を促すために、ひとつの制度、ひとつの戦略、ひとつの戦術、ひとつの仕組み、ひとつの文化規範など、単発のものに頼ったりはしない。重要なのは、これらすべてを繰り返すことである。

🧒‍;繰り返しですね。なるほど。

👨‍🦳‍。そして、重要なのは、驚くほどの長期にわたってこれを保っていくことである。ビジョナリー・カンパニーになるには、圧倒的な数の行動によって、常に基本理念を強化し、進歩を促していくことが必要である。一つ一つの小さな行動は、ささいなことであり、何か一つがビジョナリーカンパニーになる要因だとはとても言えない。しかし、数百にも及ぶ行動と事実と組み合わせたとき、一貫した全体像ができあがるんだ。

🧒‍:積み上げですね。一貫性をもって、理念を行動で示すという。

👨‍🦳‍;ただ、これまでも述べてきたように、基本理念だけでもだめだし、社運を賭けた大胆な目標(BHAG)だけでもだめ。自主性と起業家精神による進化だけでもだめ。

🧒‍;生え抜きの経営陣にするだけでもだめ、カルトのような文化だけでも、決して満足しない精神だけでもだめというわけですね。

👨‍🦳‍;そう。これらがすべて、揃うというか、かみ合って、全体的な効果となる。そし重要なのは、大きな部分だけではない。ほんのちょっとした細部の行動の積み重ねが重要となるのだ。

🧒‍;まさに、「神は細部に宿る」ですね。

◆小さなことにこだわる

👨‍🦳‍;ここで細部にこだわるについて、もう少し言及しよう。従業員の日々の仕事は、ごくごく小さなものだ。だからこそ、小さな行動に理念や進歩を落とし込むことが重要になる。大きな全体像が役に立たないと言うのではないが。ちなみにウォルマートはいちばん下のレベルの従業員にも部門の財務報告書をわたしている

🧒‍;なるほど、確かに小さなことですが、従業員は会社のパートナーであり、小さな部門の積み上げが全体になるわけですし、各々が小さな事業だと考えて経営するようにすることが重要ですからね。

👨‍🦳‍;君もわかるだろう、現場メンバーと同じだ。彼らは小さなことを見逃さない。小さいことでもリーダーの言動であったり考え方は意識している。

🧒‍:だから小さなことにこだわる必要があるのですね。

◆下手な鉄砲ではなく、集中砲火を浴びせる

👨‍🦳‍:そして、ビジョナリー・カンパニーはいくつもの仕組みや過程をばらばらにつくっているわけではないんだ。仕組みや要素が相乗効果を持ち、連携し合うようにしているんだ。

🧒‍;どういうことでしょうか?

👨‍🦳‍;たとえば、フォードは、統計的品質管理の手法を従業員参加制度で強化し、それを参加型経営の研修制度で強化し、それを参加型経営の能力に基づく昇進基準によって強化していると本書に書いてある。

🧒‍;なるほど、学習と実践と評価を同時にやってしまうのですね。

👨‍🦳‍;そう。そして、これらを同時に行うことで、いっせいに一貫したメッセージを従業員い流し続けることになる。教わって、実践して、そして評価を受けるからね。


◆流行に逆らっても、自分自身の流れに従う

👨‍🦳‍;ビジョナリーカンパニーでは、流行に逆らう時がある。例えば、ボーイングは航空機の設計にあたって、競争相手よりはるかに厳しい安全基準を設けているんだ。それは、市場の要求に沿うのではなく、同社の基本理念に従ったからなんだ。

🧒‍:簡単な道を選ばず、あくまでも理念の維持と進歩なのですね。

👨‍🦳‍:3Mも急成長している小企業ならひとつの事業に集中すべきだという経営の常識に従わず、多角化をしていった。

🧒‍:それでは、3Mが望んでいた企業にはならないからですね。自分たちが望む方向にもっていってしまうエネルギーがありますね。

👨‍🦳‍:ここで肝心な点は、「よいか悪いか」ということではなく、「この方法はその会社に合っているのか、当社の基本理念と理想に合っているのか」なんだ。

◆矛盾をなくす

👨‍🦳‍:たぶん、今うちの会社を見渡してみると、基本理念との一貫性がとれていないものが多く見つかるはずだ。それが普通だ。ただ、それを常に意識し改善をしていかなければならない。一貫性を達成するには、新しいものを加えていけばいいわけではなく、同時に、基本理念からの乖離をもたらしたり、進歩を妨げたりする矛盾を見つけ出し、ねばり強く改めていく終わりのない努力が必要である。

🧒‍:なるほど、戦略が基本理念と矛盾しているのなら、戦略を変える。組織構造が進歩への障害になっているのなら、組織構造を変える。 常に改めて行く必要があるのですね。

◆一般的な原則を維持しながら、新しい方法を編み出す

👨‍🦳‍:ビジョナリー・カンパニーになるためには、当然、基本理念がなくてはならないのはもうわかるんだ。

🧒‍;はい。そして常に進歩が必要です。

👨‍🦳‍:そして、もうひとつ、基本理念を維持し、進歩を促すために、すべての要素に一貫性がとれた組織でなければならない。これら三点は、どのビジョナリー・カンパニーにも言える一般的な原則である。まさに基礎となる指針だ。そして、それらを支える。BHAG(社運を賭けた大胆な目標)、カルトのような文化、実験による進化、生え抜きの経営陣、不断の改善どは、ある程度証明された必要な行動である。

🧒‍:でも、これが絶対というか、これ以外にないわけではないですよね。これらの方法は効果が実証されてきていますが、今後もこれらの方法を補完する新たな方法が考案される可能性はあると思いますね。時代が変わるので。

👨‍🦳‍;そう。まさにそこを探るのが君たち世代の仕事なんだよ。特に今や5Gの時代だ。情報革命の第一フェーズが終わりかかっている。なんでもできるのはよくわかっていると思う。自分の立場が起業家であろうと、中間管理職であろうと、社長であろうと、取締役であろうと、コンサルタントであろうと、なんだっていいのだが組織を導き、全員の励みになる基本理念を維持するために、考えられるかぎりすべての方法を実行するべきなんだ。

🧒‍;は、はい・・。

👨‍🦳‍;そして、現状への不安感をつくり出し、進歩を求める精神を広める仕組みを考え出さなければいけない。著者も、「基本理念を維持するための仕組みで、本書に書かれていないことを考えついたのであれば、是非ともそれを実行に移すべきだ。進歩を促す強力な仕組みを編み出せたのであれば、是非とも試してみるべきだ。定評のある方法を使い、新しい方法を考え出す。どちらもやるべきである。これは終わりではない」と記載している。そして、この本を読んで、今後のビジネスに活かすために4つの概念だけは覚えておいてほしいと最後に下記書いている。

一     時を告げる予言者になるな。時計をつくる設計者になれ。
二 「ANDの才能」を重視しよう。
三      基本理念を維持し、進歩を促す。
四      一貫性を追求しよう。

🧒‍;わかります。ビジョナリー・カンパニーをつくりあげた人たちは、ビジネスについて、単純な方法をとっているんですよね。 もちろん、それが安易さを意味するわけではないです。この部分は、私にとってすごく意味があります。カリスマはいらないんです。凡人でいいんです。でも、今回学んだことを考え抜いて、一貫性をもって実行し続けないといけない。ビジョナリーカンパニーを作ることを目指すということ自体が重要であるということがわかります。今回までの10章でそのことを学びました。最後の答えは本当にシンプルに思います。

👨‍🦳‍;そこまで、わかればこれまでやってきた甲斐があったな。この解説はまさに始まりの終わりでしかないんだ。

🧒‍;はい。早速、自組織の理念について考え始めてみます。もちろんそれを行動でみせていき浸透を図りたいと思います。

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今回は、最終長10章を解説しました。非常に長く連載してきましたが、結論は非常にシンプルでした。ただ、だからこそ深く重いのだと思います。本書はシンプルなことを言うために、深く調べいくつもの事例を解説してきました。それだけ、難しさであり、覚悟の必要性を伝えたかったのだと思います。次回、本書のまとめを記載しこのマガジンを終了したいと思います。その後は、まさにこのANDの才能を体現する両利きの経営について解説していきたいと思いますので、フォロー、スキよろしくお願いいたします。

また、下記にこれまで作成した別マガジンを記載します。ぜひ覗いてみてください。

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