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独身者の日常

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#日記

ほんの立ち話くらいのこと

ほんの立ち話くらいのこと

4月○日 気づいたらそんな仕事ばかり選んでいた

いよいよゴールデンウィークらしい。

なんだか他人事のようだが、じっさいのところまったくもって他人事である。

ふりかえれば、これまでいくつか仕事を変えているがゴールデンウィークに休んだという記憶がない。

ひとが楽しく時間をすごすための仕事ばかり好んで選んできたのだからそれも仕方のないことだ。とうの昔にあきらめている。

仕事は面倒くさいこともあ

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ほんの立ち話くらいのこと

ほんの立ち話くらいのこと

4月◯日 あらやだ!

新宿のSOMPO美術館で『北欧の神秘』展を観た。  

あまりなじみのないノルウェーやスウェーデン、それにフィンランドの画家たちの作品ばかりあつめた展覧会だが、自然や神話といったテーマごとにまとめて展示されているので予備知識がなくても十分楽しめる。

個人的に楽しみにしていたのは、スウェーデンのアウグスト・ストリンドバリの《街》という作品。  

去年の夏、国立西洋美術館の

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銀座で手紙を書く

銀座で手紙を書く

3月〇日 「異人たちとの夏」とすき焼き屋の晩餐

遅読にしてはめずらしく、図書館で借りてきた文庫本を一気読みした。山田太一の『異人たちの夏』という小説である。

ところで、浅草に行った話はこのあいだ書いた。

浅草は「塔の町」であり、「塔の町」というのはなにかしらひとを過去へと連れ戻すようなところがある、とそこには書いたのだった。

その浅草が、この『異人たちとの夏』の舞台である。しかも、主人公の

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孫の手を買うことは

孫の手を買うことは

孫の手は独身者にとって必需品だ。テレビをみていたら、出演していたひとりの男がそう口にした。

そういえば、家にはまだ孫の手がない。独身になってそろそろ七年が経つのだ。孫の手を手に入れるにはいい頃合いかもしれない。

孫の手を買うのは、つまり一人で生きてゆくという決心をみずから引き受けることでもある。