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独身者の日常

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#銀座

銀座で手紙を書く

銀座で手紙を書く

3月〇日 「異人たちとの夏」とすき焼き屋の晩餐

遅読にしてはめずらしく、図書館で借りてきた文庫本を一気読みした。山田太一の『異人たちの夏』という小説である。

ところで、浅草に行った話はこのあいだ書いた。

浅草は「塔の町」であり、「塔の町」というのはなにかしらひとを過去へと連れ戻すようなところがある、とそこには書いたのだった。

その浅草が、この『異人たちとの夏』の舞台である。しかも、主人公の

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クリスマスあれこれ 北園克衛、レコード針、ハンドクリームと謎の箱

クリスマスあれこれ 北園克衛、レコード針、ハンドクリームと謎の箱

「白い箱」と題された北園克衛の掌編はこんな一節で始まる。

うん、さすがは戦前のモダニズム文学を代表する詩人。車体にきらびやかな街灯を映して走るタクシーの姿をリンゴに喩えるとはなんともすてきではないか。

そういえば、東京の街を行きかうタクシーも最近ではすっかり黒光りするロンドンタクシーが主流になった。

はたして凡人の目にもリンゴのように見えるだろうか? うーん、どうだろう? 

仕事じゃなけれ

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高笑いするような出来事が一度、二度起こる人生よりも

高笑いするような出来事が一度、二度起こる人生よりも

はかったようなタイミングの通り雨だった。仕事終わりに立ち寄った銀座で大粒の雨に見舞われたのだ。夕刻には青空さえ顔をのぞかせていたというのに。

突然の雨に、ふだんだったら顔をしかめるところだろう。しかし、今夜ばかりは「しめた!」と思った。銀座のはずれにひっそりたたずむハーマン・ミラーのストアをみつけて、雨の日に写真を撮りたいなとかんがえたのがつい数日前のことだったからだ。まさに絶妙なタイミング。

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