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パン職人の修造 56話〜100話 江川と修造シリーズ

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パン職人の修造 江川と修造シリーズです。 長い長いお話なので1〜55話までで一旦区切ってこちらは56話からになります。 お話の内容 口数は少ないがパンにかける情熱は人一倍の田所修…
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2022年9月の記事一覧

パンの職人の修造76 江川と修造シリーズ  Annoying People

パンの職人の修造76 江川と修造シリーズ  Annoying People

有田はホルツやパンロンドと離れている瞬間を狙ってスカウトしに来ていた。



「俺、パンロンドで働いてるんです」

「存じております。ですが〜シェフの可能性を拡げる為にもですね、是非弊社で辣腕を奮って頂けたらと思っています」

「すみません、俺、そのうち独立する事は社長にも言ってあるので」

有田は修造の表情が固くなって来たのを見た。

「わかりました。今日はご挨拶に来ただけです。またそのうちに

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パンの職人の修造75 江川と修造シリーズ   Annoying People

パンの職人の修造75 江川と修造シリーズ  Annoying People

今日もまたグーググーグーグーっていう喉の奥から響く音が聞こえる。



江川は杉本と一緒にパンロンドの工場の奥で、生地の分割と丸めをしていて修造に背を向けていたが、例のハミングが聞こえてきたので修造の方を振り向いて確認したかった。

でも珍しいものをみる様な目で見たら失礼だし、、

江川はちょっとだけ振り向いてまたパッと元に戻った。

凄い嬉しそうな顔してる。



夏が終わり、修造の家族の律

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パン職人の修造73 江川と修造シリーズ One after another 江川

パン職人の修造73 江川と修造シリーズ One after another 江川

自転車でもなんでもそうだが始め到底無理だと思っていても、練習するうちになんとかなる。そして身につけば後は楽勝。





今日はホルツでの練習の日だ。

鷲羽と園部は大木に必ずここに帰ってくると約束してフランスに旅立った。

今頃は働きながら語学学校に通っている事だろう。

その為練習は修造と江川の2人きり。



江川は修造の立てた「大会前日のプラン」を練習し続けていた。

大会では前日に

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パン職人の修造72 江川と修造シリーズ A fulfilling day 修造

パン職人の修造72 江川と修造シリーズ A fulfilling day 修造

帰ると容子と律子が食事の用意をしていた。

「おかえりなさい」

「ただいまお母さん。パン買ってきたよ」

「沢山おまけして貰ったね、みっちゃん」

「うん」

しばらくして修造が帰って来た。

「先程は」

修造は巌にペコっと頭を下げた。

「うん」巌は一言だけ返した。

「修造おかえり。先にお風呂に入ってきて」

「うん、身体を洗ったら呼ぶから大地を連れてきて」

「はーい」

そんな会話を聞

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パン職人の修造71 江川と修造シリーズ A fulfilling day 修造

パン職人の修造71 江川と修造シリーズ A fulfilling day 修造

夕方
早速修造はスーパーで買って来たもので調理を始めた。

山賊焼きは長野県松本市近辺の名物で、ニンニクの効いた醤油ベースのタレに鶏もも肉を漬け込んで丸ごと揚げる旨いやつだ。

「美味しい」

カットした鶏肉を箸で摘んで噛むと、鶏皮のカリッとした美味い食感の後にジュワッとジューシー感、その後にタレの付いた鶏肉の味が広がる。

「だろ?律子!今日デザートもあるからね」

と言ってさっき作っていた牛乳

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パン職人の修造70  江川と修造シリーズ A fulfilling day 修造

パン職人の修造70 江川と修造シリーズ A fulfilling day 修造

「ねぇ?何か変な音が聞こえない?」

機械の故障だろうか?低い擦れる様な音がする。

グーググーグーグー

みたいな?

パンロンドの奥の工場で作業中

江川がキョロキョロしながらカスタードクリームを炊いている藤岡に言った。

「シッ。聞こえますよ本人に」

藤岡がホイッパーから手を放し、そっと指差した音の方を見て江川の大きな丸い目がもっと丸くなった。

修造の鼻歌の音だったのだ。

えっ

修造

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