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パン職人の修造 56話〜100話 江川と修造シリーズ

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パン職人の修造 江川と修造シリーズです。 長い長いお話なので1〜55話までで一旦区切ってこちらは56話からになります。 お話の内容 口数は少ないがパンにかける情熱は人一倍の田所修…
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2022年7月の記事一覧

パン職人の修造62 江川と修造シリーズ バゲットジャンキー

パン職人の修造62 江川と修造シリーズ バゲットジャンキー

「修造さん」

選考会が終わった後
北麦パンの佐々木が声をかけてきた。

「俺、絶対勝ちたかったんですよ」

「すみません、、あの、店を休んで特訓してたって聞きました」

「そこまでやって勝てなかったなんて悔しいな。先生にもついて貰ってたのに。ま、結局は俺の実力不足かな」

佐々木はやや自嘲気味な言い方をした。

「こんな事俺が言うことじゃないけど是非次回頑張って下さい」

2人は握手した。

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パン職人の修造61 江川と修造シリーズ broken knitting

パン職人の修造61 江川と修造シリーズ broken knitting

「おや」

興善フーズにいた背の高い男は
走っている3人の男に随分先から気がついた。



ブースの中から見ていると先頭を走る男が近づいてきたので、それ目掛けて2段構えの台車の下を「ポン」と蹴った。

「うわ!」

先頭の男が台車に片足をぶつけて勢いよく転けた。

「あ、ごめんね」と言って素早く隠れて見ていると、園部と修造が追いついた。

「修造さんこいつがテーブルを倒したのを見ました」

「な

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パン職人の修造60 江川と修造シリーズ broken knitting

パン職人の修造60 江川と修造シリーズ broken knitting

次の日

若手コンテストも早朝から始まった。

皆、緊張の面持ちでスタートした。

鷲羽と江川は隣同士ではなく、間に沢田茉莉花がいたのでお互いの気配は全くわからない。

緊張してなにかの工程を飛ばさない様に気をつけてスケジュール通りに慎重に。

修造は江川の体調が心配だったが、もうこの場においては頑張って貰うしかない。

江川!お前は個性的な奴だ。
その個性とセンスを最大限に生かしてはじけるんだ。

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パン職人の修造59 江川と修造シリーズ broken knitting

パン職人の修造59 江川と修造シリーズ broken knitting

修造が各ブースを練り歩いていた時

職人選抜選考会2日目は
高校生パンコンテストが開催中だった。

その会場の中には前日修造達選手が作った作品が
ディスプレイされていた。

江川はそれをひとつひとつ丹念に見ていって
そして最後に修造のディスプレイを見て
しみじみと言った。
「うん、どれも凄いけど僕たちのが1番凄いな」

その後ろでは高校生達が各ブースに分かれて
パン作りをしていた。

江川はとても

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パン職人の修造58 江川と修造シリーズ Mountain View

パン職人の修造58 江川と修造シリーズ Mountain View

パン職人選抜選考会もいよいよ終盤

修造のパンデコレは編み込みの旋盤に花を施した紫が主体のもので
「和」と言うのにふさわしいものだった。

審査員のシェフ達は一糸乱れぬ網目と美しく仕上げた繊細な花々を見て
「ホゥ」と言った。

一方その頃、隣の北麦パンの佐々木は
修造がパンデコレに取り掛かってから追いかける様に始めた。

パン王座選手権で佐々木と修造に負けて
北麦パンに戻ってから真剣にパン作りにつ

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パン職人の修造57    江川と修造シリーズ Mountain View

パン職人の修造57 江川と修造シリーズ Mountain View

選考会の前日

修造達は会場の大きな駐車場に車を付けて荷物を運び込んだ。

搬入の車でごった返していて殆どが機械や什器備品を積んだトラックだった。

館内で、自分達が使うブースを教えてもらい荷物を置いていると、大木がやってきて「今から選考会全体の挨拶があるから」と皆に声を掛けて集めて行った。

会を牛耳るメンバーは皆とてもキャリアの豊富な凄腕のシェフばかりでそれを見ていて修造は興奮してきた。「凄い

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パン職人の修造56 江川と修造シリーズ Mountain View

パン職人の修造56 江川と修造シリーズ Mountain View

※このお話はフイクションです。実在する人物、団体とは何ら関係ありません。

Mountain View



「修造、用意はできたの?」
選考会の前々日親方が聞いて来た。

「はい、大体は。実は荷物は送ろうと思ってましたが意外と多くて、俺と江川、鷲羽と園部の二手に分かれて車で行くことにしました。これから江川とホルツに行って自分で持っていく荷物を再点検して準備して出発します」

「そうか、大荷物だ

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