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パン職人の修造59 江川と修造シリーズ broken knitting
修造が各ブースを練り歩いていた時
職人選抜選考会2日目は
高校生パンコンテストが開催中だった。
その会場の中には前日修造達選手が作った作品が
ディスプレイされていた。
江川はそれをひとつひとつ丹念に見ていって
そして最後に修造のディスプレイを見て
しみじみと言った。
「うん、どれも凄いけど僕たちのが1番凄いな」
その後ろでは高校生達が各ブースに分かれて
パン作りをしていた。
江川はとてもレベルの高い高校生達の
パン作りに驚いて大きな目を皿の様にして見ていた。
「あの子達凄ーい」
すると
「江川君」とお洒落な女性が声をかけてきた。
「ほんと田所さんも佐々木さんも技術が高いわね。江川君もお疲れ様だったわね」
「あっBBベーグルの田中さん、その節はありがとうございました」
「いえ、良いのよ。あの時は優勝して良かったわね」
「はい、おかげさまで」
「今日はうちのパン教室の生徒さんが出てるから応援に来たの」
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店に料理番組にパン教室か、田中さんも手広いな。
と思ったその時、父兄の団体が到着したのか
その一帯が人でいっぱいになり田中とは距離が空いた。
「またね」と手を振って田中が消えたので
江川もその場から立ち去って、朝は一緒に来たのに
それ以降全然会わない修造を探した。
———
通路を四つ辻ごとにキョロキョロ探していると
鷲羽と園部が見えた。そしてその手前に
ひとりの青年が立っている。
年の頃なら自分ぐらいだろうか。
知り合いかな?話しかけないのかな?
「ねぇ鷲羽君、園部君、修造さん見なかった?」
「ごめんね、見なかったよ」
「自分で探せよ!」
うわ!園部君に比べて鷲羽君の言い方腹立つな。
そう思ってそれ以上近寄らず角を曲がって立ち去った。
江川も色々見て回ったが、コンテストの会場は
人でいっぱいだし、どこにも修造はいないし。。
寂しくなって会場の外のベンチに座り
パンフレットで場内の地図や参加店を見出した。
へぇ、去年来たのと同じ感じだけど、懐かしいな。
ここに来て修造さんは世界大会に出る決心をしたんだ。
僕始め世界大会って空手の事だと思ってた。
江川は思い出して照れ笑いした。
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「おい、何を笑ってるんだ」
「あ、大木シェフ。休憩ですか?3日間大変ですね審査とか進行とか」
「そうだな、若い力を育ててパン業界を盛り上げるのが使命みたいなもんだよ。おい、お前もそのうち手伝うんだぞ」
「はい、僕今日何もすることが無くて困ったので手伝った方が良いです」
「今日の夕方は前日準備だな!鷲羽は手強いぞ、それに他の3人もな」
「残りの3人ってどんな人ですか?さっき鷲羽君をじっと見てた人がいたけどその人かな?」
「1人は福岡のSS料理学校のパンコースの沢田茉莉花、1人は関西のT調理師養成学校のパンコース龜井戸孝志、そしてブーランジェリー檜山で働いている木綿彩葉だ」
「きっと技術が高いんでしょうね」
「そうだな、成績の良い若者ばかりだよ。江川、帰ってちょっと休め、夕方の準備をイメトレしとけよ」
「はい」
江川は言われた通りにホテルに戻りまた夕方駐車場に行き、車から自分の資材を運んだ。
ブースの前の空間で
4人が輪になって立っていて江川を見ている。
「遅かったな」
「あ、ごめん鷲羽君」
大木がやって来た。
「では各自挨拶してから前日準備を始める様に」
皆に挨拶してから江川は思った。
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あ、昼間鷲羽君を見てたのはこの人たちじゃ無いんだ。
「鷲羽君、今日知り合いの人が来てたみたいだけど会えた?」
「知らなかったな」
「そうなの?わかった」
修造はすでに江川のブースで忘れ物がないか確認に来ていた。
「さ、始めて江川」
「はい。僕緊張して手が震えてきました」
「大丈夫だよ、リラックスして。計量は間違えない様に」
「はい」
選手の与えられたブースは4メートルに区切られていて、その中にミキサー、パイローラー、オーブン、ドゥコンなどが設置されている。
先に始める生地の材料や必要なのものからブースの中に入れて、その他の後でやるものは次々出していく計算だ。
明日は修造があれこれ手前から注意してくれたり必要なものは後ろから用意してくれるからその点は安心だ。
種を作った後、ホッとして「修造さん、明日はよろしくお願いします」と言った。
つづく
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