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パン職人の修造 1〜55話 江川と修造シリーズ

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パン職人の修造 江川と修造シリーズです。 口数は少ないがパンにかける情熱は人一倍の田所修造と、明るくてみんなに好かれるが実は人一倍頑固者の江川卓也がパン作りに挑戦していきます。各… もっと読む
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2022年4月の記事一覧

パン職人の修造31 江川と修造シリーズ フォーチュンクッキーラブ 杉本Heart thief

パン職人の修造31 江川と修造シリーズ フォーチュンクッキーラブ 杉本Heart thief

「待てーーっ!」

商店街を駅と反対の方向に走っていく男を追いかけて行くと、30m程離れた所に停めてあった自転車に急いで乗って逃げ出した。

「準備してたのか?」

自転車はグレーともグリーンとも言えないくすんだ色合いで、荷台は黒い。

荷台はサドルの後ろに取り付けられた薄い板の様な形で、1番後ろに赤いライトが付いている。

杉本はその荷台の赤い丸を目掛けて商店街の中を倍の速さで走り出した。

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パン職人の修造30 江川と修造シリーズ フォーチュンクッキーラブ 杉本Heart thief

パン職人の修造30 江川と修造シリーズ フォーチュンクッキーラブ 杉本Heart thief

パンロンドの昼下がり

「いらっしゃいませ」

焼き立てのパンを店内に並べながら風花が言った。

そしてまたパンを並べ始めた。

丁度フランスパンの出来立てが並ぶ時間で、沢山の種類のパンをカゴに盛り、値札をつけていた。

その男はいつの間にか帰り、しばらく店でパンを並べるのに集中していた風花を見て奥さんが叫んだ。

「わ!風花ちゃん!背中どうしたの?!」

「えっ?」

風花は背中の事なので気が付

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パン職人の修造29 江川と修造シリーズ フォーチュンクッキーラブ 杉本Heart thief

パン職人の修造29 江川と修造シリーズ フォーチュンクッキーラブ 杉本Heart thief

秋浴衣に着替えた風花

友達と神社の前で待ち合わせて四人で歩き、色々な屋台を見てお祭りを楽しんでいるうちにふと子供の頃の心に帰り少し楽しい。

お祭りの屋台の黄色い灯りが揺れている横をみんなで歩き、ヨーヨー釣りをした。

みんなでユラユラポンポンとヨーヨーを持ち歩いている時、仕事帰りに自転車を押してお祭りを見始めた杉本と藤岡に会う。

「あ!風花!」

いつもの自分に向けられる厳しい表情と違い、ゆ

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パン職人の修造28 江川と修造シリーズ フォーチュンクッキーラブ 杉本Heart thief

パン職人の修造28 江川と修造シリーズ フォーチュンクッキーラブ 杉本Heart thief

今回はパンロンドのパン職人見習い杉本龍樹と店員さんの横山風花がフォーチュンクッキーを巡ってお話を展開します。

季節は秋、東南神社のお祭りで2人は仲良くなれるのでしょうか?

今日も平和な東南駅の西に続く商店街の途中にあるパン屋のパンロンド。

催事で頑張ってカレーパンを揚げた杉本は最近は親方に焼成を教わっていた。

成形後ホイロというパンを発酵させる機械の中から出てきたパンを焼く。

「タイマー

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パン職人の修造27   江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

パン職人の修造27 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

修造はADに腕を掴まれて「こちらです」と言われて台の前に座らされ、アイマスクをさせられた。

「何が始まるんだ?」

「さあ、それではこちらのクリームシチュー5皿の中から愛する奥様の手料理を当てて頂きます!」

修造の前に5皿のクリームシチューが置かれた。

マウンテンがクリームシチューの作り手を紹介した「一つは奥様の手料理です。そして名店【グリル篠沢】。コンビニのレトルト。スーパーの惣菜。そして

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パン職人の修造26 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

パン職人の修造26 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

「さあ!次は?」マウンテンはカンペを見た。

「ふんふん!はい!パン職人さんの日常!次はお二人で生地を分割して並べて頂きましょう!」

杉本がカッコつけてスケッパーで生地を分割している。

「普段と違いすぎるだろ」と言いながら藤岡が丸めて箱の中に並べていく。

「なるほど~こうやって生地が丸まっていくんですね、もっと早く出来るんですか?」
「はいできますよ」

「凄い!お願いします」

杉本は出来

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パン職人の修造25 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

パン職人の修造25 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

「はい!みんな~!これ着て!」

その頃パンロンドでは、店の奥さんがみんなにお揃いの帽子を渡して新しいコックコートに着替えさせていた。

いつもTシャツの親方は着るのは嫌だと抵抗したが奥さんには逆らえない。

「テレビが来るからみんな張り切ってね」

「そろそろ時間なのに遅いですね」

「そうだな」

「さっき電話があって前のロケが押してて遅れるそうよ」

「今のうちに仕事片付けとこうよ」

みん

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パン職人の修造24 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

パン職人の修造24 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

会場の1番奥ではコンテストが行われている最中だった。

パン職人選抜選考会と看板に大きく書いてあり、かなり大きなコンテストの様だ。

「あれは?」

「今は25歳以上のシェフが世界大会に出る為の選考会が行われているんだよ。その横では若手コンテストと言って21歳以下の若い職人が競い合ってるんだ」

見ると、4メートル毎に四つに仕切られたブースの中にはパン作りに必要なミキサー、オーブン、ドウコン、パイ

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パン職人の修造23 江川と修造シリーズ   背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

パン職人の修造23 江川と修造シリーズ 背の高い挑戦者 江川Flapping to the future

はじめに

このお話はフイクションです。実在する人物、団体とはなんら関係ありません。

今日は修造の休みの日。

アパートの部屋のグリーンのソファに寝転んで修造は大あくびをした。

「ふぁーーーっ」

「律子と緑は友達の誕生日会に行ってるし、久しぶりにゴロゴロしてテレビでも見るか」

修造はテレビをつけた。

バラエティ番組が流れている。

ボーッと見ていると子供が3皿の料理を順番に一口ずつ食べて

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パン職人の修造22 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

パン職人の修造22 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

「え〜!ひどい!」

「それから暗いのとか物音とかすごく怖くなってしまって」

「それで前のとこ辞めたんだ」いつの間にか戻ってきた修造がそれを聞いて言った。

「修造さん!元の職場の人達が藤岡君に後で公園に来いって言ってました!」

「へぇ。じゃあさっさと片付けて会いに行こうよ」修造と杉本が2人でやる気を出してきた。

「藤岡君、俺達車に荷物を全部仕舞いに行ってくるから蒲浦さんが来たらもう帰るって

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パン職人の修造21 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

パン職人の修造21 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

「あの〜、おじさんはここのオーナーの人ですか?」

「あー隣の子だね?そうだよ」

「このあんぱん、すごく美味しかったです。どんな所に拘ってるんですか?」

「これはね十勝産の小豆から作ってる極上餡(あん)なんだよ。うちのあんパンはね、豆本来の甘味を存分に堪能できる餡が包んであるんだ。豆の選別は重要だし、渋きりで渋をよく取ったり、味がさっぱりとしてキレがいい様にザラメを使ったり。生地は国産小麦に米

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パン職人の修造20 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

パン職人の修造20 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

2台の車は開始時間に遅れて催事場に着いた。

蒲浦が慌てて来て修造に「いや〜無事で良かったですね!準備お願いします」と言った。

「蒲浦さん、すみません遅れて」

荷物を運びながら他の店を見ると結構沢山の人が並んでパンを買っている。

「出遅れたな。とりあえず持ってきた生地をなんとかしないと。失敗するとカレーが破裂するからな」

公園には合計30軒ほどのパン屋がいて、各ブースに設置されたテーブルに

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パン職人の修造19 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

パン職人の修造19 江川と修造シリーズ 催事だよ!全員集合! 江川Small progress

「藤岡恭介(ふじおかきょうすけ)です。よろしくお願いします。僕レストランで働いていました」

藤岡はシュッとしたイケメンで、手先が器用ですぐに仕込みの手順を覚えた。なんならもう杉本より早い。

親方はうちには個性的な面々が多いが藤岡って色々とスマートな奴だな〜と思っていた。

修造は藤岡に色々教えながら

「藤岡君って仕事覚えるの早いよね」と言った。

「ありがとうございます」藤岡はキリッとした表

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