マガジンのカバー画像

イギリスの都市計画制度

10
イギリスの都市計画について、歴史や背景、法律や仕組みなどをわかりやすくまとめました。これでイギリスの都市計画制度についての基本的な知識が身に付きます。
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事
イギリスの都市計画制度

イギリスの都市計画制度

共有財産としての景観をみんなで守る

イギリスでは新築はもちろん、建物の増築、改築、また用途変更のときにもいちいち都市計画許可を取らなければなりません。たとえば、勝手に衛星放送のアンテナとか看板をつけることができないし、それまで住居として使っていた建物をお店として使うときにも許可が必要です。

自分の所有物なのだから勝手に変えてもいいのではないかとも思いがちですが、どうしてそんなに規制が厳しいので

もっとみる
イギリスの住宅街:新しい袋小路にできた広場で遊ぶ子供たち

イギリスの住宅街:新しい袋小路にできた広場で遊ぶ子供たち

近所にあった病院の跡地が住宅地として再開発されていたのですが、どうなっているのかと気になっていました。通り抜け道路に面した住宅はよく見ていたのですが、袋小路になったところには足を踏み入れたことがなかったのです。好奇心に駆られて散歩の途中に寄ってみると、新たな発見が。

病院跡地の住宅開発

イギリスの我が家は市街地に向かう幹線道路から横道に入った住宅街にあって、建物のほとんどが普通の一戸建て住宅で

もっとみる
イギリスの都市計画:保存地区 Conservation Area と歴史建造物 Listed Building

イギリスの都市計画:保存地区 Conservation Area と歴史建造物 Listed Building

イギリスの都市計画について語るのに歴史的重要建築保存のシステムについて触れないことはできません。これには2種類あって、ひとつは1軒ずつの建物を保護するListed Building、もうひとつは建物や空間で構成された地区・地域を保護するConservation Area です。

リスティッド・ビルディング(Listed Building)

歴史的、建築的に重要な建物を1件ずつ指定して保護する仕

もっとみる
世界遺産登録を抹消されたリヴァプール再訪

世界遺産登録を抹消されたリヴァプール再訪

2021年7月にイギリスのリヴァプールがユネスコ世界遺産登録から抹消されることが決まりました。リヴァプールにはしばらく行っていなかったので、世界遺産登録エリアがどうなっているのか気になり、久しぶりに再訪することにしました。その日は10月9日ですが、これは何の日か知っていますか?(答えは最後に)

ユネスコ世界遺産登録抹消

リヴァプールは18世紀以降国際的な港湾都市として栄えた街で、当時の海運倉庫

もっとみる
イギリス都市計画法106条開発義務(Planning Obligation)

イギリス都市計画法106条開発義務(Planning Obligation)

イギリスの都市計画法には、「Planning Obligation」という、開発者がコミュニティに対して負う義務が定められています。「セクション106 Agreement」とも呼ばれる、この取り決めについて、近所にできた散歩道を例にしてお話しします。

新しい散歩道

夏のイギリスは毎日いい天気が続く散歩日和ですが、最近家の近くに新しい散歩道ができて、毎朝の散歩によく使っています。住宅街のはずれに

もっとみる
リチャード・ロジャースの都市ルネッサンス政策

リチャード・ロジャースの都市ルネッサンス政策

イギリスの有名建築家リチャード・ロジャースが88歳で亡くなりました。ロジャースといえば、ポンピドゥーセンターやロイズビルディングなど、前衛的な大規模作品が有名ですが、イギリスでは「アーバンルネッサンス」を提唱し、都市計画政策においても大きな影響を与えました。

リチャード・ロジャース

ロジャースはイタリア生まれですが、ロンドンと米国イエール大学で建築を学びました。英国に戻ってからは、ノーマン・フ

もっとみる
フロントガーデンはセミパブリック空間

フロントガーデンはセミパブリック空間

イギリスで、毎朝散歩に行く習慣ができました。この散歩の楽しみの一つに、よそんちのフロントガーデン(前庭)をのぞくことがあります。

散歩の行先は歩いて15分くらいの野原や町はずれにある公園などさまざま。住宅街に住んでいるので、そういうところに行きつくまでに様々な「普通の」生活道を通ります。私はこういう住宅地にあるフロントガーデンをのぞき見しながら歩くのが好きなのです。

散歩道で見るフロントガーデ

もっとみる
イギリスの都市計画④:開発に反対する方法

イギリスの都市計画④:開発に反対する方法

前の記事でイギリスでの景観を守るための法律また都市計画申請のプロセスについて書きました。

今回はイギリスで開発予定があると知ったとき、それに反対したかったらどうするかについて説明します。

開発に反対する権利イギリスで都市計画許可の申請がなされたとき、その開発について都市計画課は「広告」をします。具体的な方法としては、近所に張り紙をしたり、ローカル紙に通知を掲載したり、近所の住民に手紙で知らせた

もっとみる
イギリスの都市計画③:都市計画申請

イギリスの都市計画③:都市計画申請

前にイギリスの都市計画制度について書きました。

今回はイギリスでどうやって都市計画許可を申請するのかを具体的に説明します。自分の家にサンルームを作りたいとか、おうちカフェをオープンしたい時に必要となる制度です。

都市計画許可申請 Planning Applicationまず、建てたいサンルームが小さいものなら許可が要らないかもしれません。増築の場合、小さい規模のものなら通常の場合、許可を申請し

もっとみる
イギリスの都市計画②:歴史的背景

イギリスの都市計画②:歴史的背景

イギリスの都市計画制度はどのようにしてできたのでしょうか。ここでは、その歴史的背景について説明します。

イギリスの都市計画:産業革命とその影響イギリスでは産業革命が起こった18世紀半ばから19世紀にかけて、農村から都市部への人口流入が急激に増えました。たとえば、ロンドンは19世紀のはじめに人口が80万人を超え、19世紀半ばには180万人にふくれ上がったのです。

またロンドン以外でも、イギリス各

もっとみる