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Sicilian Ghost Story

 この前も子供を育てることについて少し書いたけれども、夫とはたまに子供をどこで育てようという話になる。私は鼻息を荒くして日本の学校に通わせたくないの一点張りで、たぶん私のことをちょっとイタリアかぶれだと思っている夫は、「けど、イタリアの学校も別によくないよ」となだめる。

>>過去の参考記事


 イタリアの学校は、もちろん地域によって全く異なると思うのだけれども、日本の学校のように全体主義、不自然な平等主義ではないし、子供たちがわりと楽観的なような気がする。(日本のうちの近所の学校などは、例えば劇などをやっても生徒たちに格差をつけないために、主役を作らずみんなで同じような役をやるという。例えば、ミヒャエル・ヘンデの「モモ」のモモがいない、時間泥棒だらけの劇とか)

 しかしやっぱり私もイタリアの学校に子供を行かせるのは躊躇する。身近に犯罪の臭いがするからだ。子供たちを大人が犯罪に巻き込む。例えばローマとかは通学路の薬局近くにたくさん注射器が落ちていたり、麻薬の売人が最初はただでドラッグを小学生に配って、そうするとだんだんと子供たちはお金を盗んだりしてドラッグを買いに来るようになるという。もうこの話は吐き気がするほど憂鬱になる。

 この映画も憂鬱になって吐き気がした。「シシリアン・ゴースト・ストーリー」。2017年、ファビオ・グラッサドニア&アントニオ・ピアッツァ監督。シチリアのマフィアによる実際に起きた誘拐事件を題材にしたストーリーである。その事件とは、1993年11月、当時13歳だったジュゼッペ・ディ・マッテーオが彼の通う馬術場で警察に変装した男たちに誘拐された。彼の父親が元マフィアの一員で、司法当局にマフィアの情報をリークすることで協力したからだ。街の人たちはこのジュゼッペ失踪事件の真相にだいたい検討がついているものの、誰も積極的に探そうとしない。なぜならシチリアにはマフィアに関する事件には目を瞑るよう「オメルタ」という沈黙の掟があるからだ。みんなマフィアによって街が成り立っていることを知っている。ジュゼッペの実の父さえも助けに行かず、779日間ジュゼッペは鎖をつけられ監禁され、最後は衰弱して30kgぐらいの体になってもう生きる気力もなく、マフィアももう今更どうすることもできず彼を絞殺した後、酢酸で溶かしたので、彼の遺体は跡形も無くなってしまった。

 本当になんと胸糞悪い話だろう。この史実に少しジュゼッペの恋愛エッセンスを加えたのが本作品だ。ジュゼッペに恋するルナという女の子がたった一人で、そのオメルタを遵守する村人たちに楯を突く。このような恋愛物語を並行して流すことによってこの息苦しい事件が、少し幻想的で寓話的、そして命に対して希望を少し持てるような、そんな作品に仕上がっている。

 この作品のずっと薄暗い、ずっと朝焼けみたいな暗さはまた効果的で、主人公の心情を表すようで、現実なのか夢なのかよくわからない感覚を残す。それから、足だけを映し出すローアングルがやたらと目に付く映画である。低くて斜めだったり、その場所がどんな場所なのかよくわからなくなることがある。(事件としては胸糞悪いのですが、映像はとても綺麗です。是非みてください)

本事件の首謀者は、かの有名なファルコーネ判事爆殺を指示したジョヴァンニ・ブルスカというマフィアのボスである。本当にこんなについ最近まで、シチリアの人々が「マフィアなんていない」と建前上言っていたそんな異様な世間体が存在していたなんて信じがたい。(ファルコーネ判事爆殺事件を題材にした映画もたくさんあるので、またいつか紹介したい)

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↑これはなぜか2000円と表示されますが、500円です。


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 昨日はこの映画に関連して、それに無農薬の美味しそうなナスが手に入ったので、シチリア風Timballo(ティンバッロ)も作りました。ナスの美味しい季節になりましたね。ちょっとご紹介。ティンバッロってこういう太鼓(Tamburo)みたいな形をしている料理で、これも地域で色々あるけれど、揚げナスで包むのはいかにもシチリアっぽいと思ってしまう。(地域によって家庭によって、パン生地で包んだり中の詰め物がパスタだったり、米だったり卵だったりお肉だったり、本当に様々)本当は結婚パーティとかお祝い事などに食べられるものだそう。焼きたてよりもむしろしばらくおいた方が美味しい。なので作り置きできるので、うちの食卓には度々登場する。時間がふっとできた時に作れるし、シンプルな料理なので。型を私はボウルを使ったが、もちろん穴が開いているケーキの型などで作ってもOKです。

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◉レシピ Ricetta

Timballo di melanzane alla siciliana(ナスのシチリア風ティンバッロ)

材料:

・ナス6本

・パスタ(私は今回リガトーニを使用しました)200g

・トマト 5−6個(塩少々と煮詰める)

・パン粉(できたら硬くなったパンをフードプロセッサーで粉々にしたもの)

・牛乳、バター、薄力粉(でベシャメルソースを準備しておく。ベシャメルソースの作り方は以下記事を参照)

<作り方>

1. ナスをスライスし軽く塩揉みしてアクを抜き、薄くしいたオイルで軽く揚げる。

2. パスタを茹で、煮詰めたトマトとベシャメルソースであえておく。(乾燥パスタの茹で方は以下記事参照)


3. ボウルにオリーブオイルを薄く塗ってパン粉を敷き、揚げナスを敷き詰める

4. その上にあえておいたパスタをのせ、その上をまたナスで閉じる

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5. 鍋にお湯を入れ、ボウルを入れて湯煎しながらオーブンで220度ぐらいで20分ほど焼く

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6. ボウルからお皿にひっくり返して型を外して出来上がり。少しおいて味をなじませてから食べましょう。

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Buon appetito!

>>ちなみにこれもシチリアのレシピです










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