マガジンのカバー画像

小説:剣と弓と本

27
セド、ナスノ、ライが「冒険」をするお話。2024/05/26第一部完。さて第二部は?
運営しているクリエイター

2024年3月の記事一覧

小説:剣・弓・本017「反出生主義」

小説:剣・弓・本017「反出生主義」

前話

【アンゲアティック帝国第二部隊長・ゲルステル】

「ネルケバよ。お前の術はサイコーだな!!」
 オレは帝国領[邪術の部屋]のソファに深々と腰掛けている。セド・マァンに右手首を切り落とされたものの邪術士ネルケバにより邪手術を施された。
 今ではこの右手首の先から意のままに3つの武器を繰り出すことができる。

・斧
・剣
・鉄球付き棍棒

「ネルケバよ。反出生主義を知っているか?」
「はい。存

もっとみる
小説:剣・弓・本016「ライの手紙」

小説:剣・弓・本016「ライの手紙」

【ライ】
 のどかな一日でした。
 僕は宿から出ず、読みかけの『応用地質学(下)』を読み耽ることができました。セドさん、ネネさんは剣の稽古。そして、ナスノさんは散歩に出ていたようです。

 今夜も記術します。先生に届くといいな。

  ……星になった先生に……

 今日の話し合いにより、次の目的地は『睡りの塔』に決まりました。ダンジョン内の地図が隠されているとのことです。さてと明日に備えて早く寝な

もっとみる
小説:剣・弓・本015「弓を使わない弓術士」

小説:剣・弓・本015「弓を使わない弓術士」

【セド】

「ナスノ、お前は弓を引いてねえ。
 三つ言いたい!」
 俺はそう言って、テーブルに置かれた水を飲む。

「一つ! お前は弓術士の体格じゃねぇんだ。その小さい尻、細長い脚、それは弓を引く人間にはありえねえ」
「ん? 体格で分かるんですか?」
 とライが真っ直ぐに訊ねてくる。職業と体格の関係なんて本に書かれないかもな。
「なぁ、ライ。弓での攻撃で最も大切なことは何だ?」
「命中精度、でしょ

もっとみる
小説:剣・弓・本014「交換条件」

小説:剣・弓・本014「交換条件」

【ライ】

「おはよう! ってか腹減ったなー。あ、もう昼か」
 セドさんが入室してきました。ボサボサの髪を掻きむしっています。
「セドさん、安静にしてないと……」
「なあ、ライ、やっぱり採れたての薬草は効くなー。この通りだ」
 と言って包帯を引き剥がします。オトスイにつけられた裂傷の跡こそ残っているものの、出血はもうありません。確かに乾燥薬草よりは効能がありますが、それにしてもおかしいです。昨日あ

もっとみる
小説:剣・弓・本013「隠者」

小説:剣・弓・本013「隠者」

【セド】

 陽の光が俺の瞼を叩く。眩しい。体をベッドに横たわらせたまま、目は窓外にやる。太陽がかなり高い。こりゃ昼だな。だいぶ眠っちまったらしい。
 それにしてもライの生薬草は効くなー。何せ採れたてだもんな。どこでも売ってる乾燥薬草とは違う。包帯ももう要らねぇな。

 ライ達の話し声が聞こえる。隣室にいるようだ。ベッドに横たわったまま寝たふりをして聞き耳を立てる。

ライ:「休息日としましょう。

もっとみる
小説:剣・弓・本012「二泊目」

小説:剣・弓・本012「二泊目」

【ナスノ】

 今日という時間がまた消えます。今日の消失は明日の誕生を意味しますか? 本当に明日は来るのでしょうか?

 夜とは日没後の闇ではなく、個人に与えられた黒いカーテンです。ひとりひとりにそれぞれの時間を与えてくれます。
 この宿屋も二泊目ですね。さあ、振り返りの時間にしましょうか。今日を、詩という筆で書き留めておきましょう。

 嗚呼、これもまた駄作ですね。またあなたに笑われてしまう。

もっとみる