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朝井リョウさん

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【読書】『武道館』朝井リョウ【選んだ選択肢を正解にしていこう】

【読書】『武道館』朝井リョウ【選んだ選択肢を正解にしていこう】

新しい年、何らかの決断や選択をしなくてはならない場面を迎える方も少なくないと思います。今回紹介する『武道館』(朝井リョウ 著)は、タイトルからもわかるようにアイドルのお話ですが、アイドルにあまり興味のない方にもおすすめしたい、「何かを選び取ること」についての物語です。

アイドルグループ”NEXT YOU”

小さい頃から歌って踊ることが大好きだった高校生の愛子は、アイドルグループ”NEXT YO

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【読書】『ままならないから私とあなた』朝井リョウ【合理性と人間らしさ】

【読書】『ままならないから私とあなた』朝井リョウ【合理性と人間らしさ】

今年好きになった作家さんの一人である朝井リョウさん。その作品を一つずつ読み進めています。

今回は、『ままならないから私とあなた』について、書いていきたいと思います。

合理性と人間らしさ

この本は、表題作の『ままならないから私とあなた』と、『レンタル世界』という2つのお話から成ります。どちらも、合理性と人間らしさという対立軸で語られています。

『レンタル世界』では、自分のすべてをさらけ出し、

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【読書】『もういちど生まれる』朝井リョウ【一人ひとりの葛藤に共感】

【読書】『もういちど生まれる』朝井リョウ【一人ひとりの葛藤に共感】

夏に購入した本でまだ読めていなかったものを読みました。すっかり冬ですが、本のアイスキャンディーは決して溶けないので、いつでも楽しめます。

私が今年はまった作家さんの作品です。
『もういちど生まれる』(朝井リョウ 著)について、書いていきます。

葛藤する大学生らを描く連作短編集

好きになってはいけない人を好きになってしまったり、向き合うべきことから目を背けてしまったり、何かを持っているからこそ

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【読書】『世界地図の下書き』朝井リョウ【前に進む希望】

【読書】『世界地図の下書き』朝井リョウ【前に進む希望】

私の通った小学校・中学校の学区内にも、児童養護施設があったことを思い出しました。

そこの子だからどうこう、ということはなかったです。でも、私は当時、家族の誰かではなく、自分にばかり目を向けて、模試の順位や部活内の人間関係だけに泣いたり笑ったりしていましたが、彼らは違ったのかもしれないとふと考えました。

「青葉おひさまの家」で出会った新しい仲間

小学3年生の太輔は、両親を事故で亡くし、太輔を引

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【読書】『少女は卒業しない』朝井リョウ【前向きな寂しさ】

【読書】『少女は卒業しない』朝井リョウ【前向きな寂しさ】

朝井リョウさんの作品の中で、社会人を描いたものを続けて読んできたので、今回は高校生がテーマのものを選んでみました。

『少女は卒業しない』。合併により取り壊されることが決まった高校の卒業式の日。好きだった先生やダンスの道に進む幼なじみと別れ、自らの選んだ道に一歩踏み出す少女たちが描かれます。

大人になって青春ものを読むこと
青春ものは、胸がぎゅっとなるかなと思って読むのをためらってしまいます。自

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【読書】『どうしても生きてる』朝井リョウ【心がひりひりするけれど絶望感はない】

【読書】『どうしても生きてる』朝井リョウ【心がひりひりするけれど絶望感はない】

「最近はまっている作家さん」の記事で挙げた朝井リョウさんの作品、『どうしても生きてる』を読み終えました。

読むのが少し辛くなるくらい、心がひりひりします。でも、読み終わった後には、不思議と絶望感はないのです。皆さんも私もたしかに生きているという安心感さえ抱きます。

必死に生きる人々が描かれる短編集

『健やかな論理』
離婚の経験がある佑季子は、事故や自殺のニュースを見ると、とある行動をとる。

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【読書】『スペードの3』朝井リョウ【自分の嫌な部分と向き合う】

【読書】『スペードの3』朝井リョウ【自分の嫌な部分と向き合う】

先日、『正欲』を読んでから、とても気になる作家となった朝井リョウさん。今回は、『スペードの3』を読みました。

皆さんは、トランプのカード、「スペードの3」と聞いて、何を思い浮かべますか。ゲーム大富豪において、場にジョーカーが単独で出されれば、その後に出せる唯一のカード。革命が起これば、一気に強くなるカード。

ファンクラブの幹部、美知代

化粧品会社の関連会社で商品の発送等を担当している美知代は

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【深い本を読んで考える】『正欲』朝井リョウ

【深い本を読んで考える】『正欲』朝井リョウ

この世界の様々なことから目を背けず、思考停止をせず、考え続けたいと思って読んだ一冊。

『正欲』(朝井リョウ 著)。この本のあらすじや著名人の感想、読了ツイート等を読んだとき、「気持ち良く読めるかはわからないけれど、読まなければいけない本」という印象を受けた。

まだ読んだことがないという方は、試し読み部分だけでも見ていただきたい。

色々と悩むことはあるけれど、私自身は「明日、死にたくない」人だ

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