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【読書】『もういちど生まれる』朝井リョウ【一人ひとりの葛藤に共感】



夏に購入した本でまだ読めていなかったものを読みました。すっかり冬ですが、本のアイスキャンディーは決して溶けないので、いつでも楽しめます。



私が今年はまった作家さんの作品です。
『もういちど生まれる』(朝井リョウ 著)について、書いていきます。


葛藤する大学生らを描く連作短編集


好きになってはいけない人を好きになってしまったり、向き合うべきことから目を背けてしまったり、何かを持っているからこそ悩んだり、持っていないことで苦しんだり。努力と才能の狭間で自分を見失いそうになったり。この作品は、様々に葛藤する大学生らを描く連作短編集です。


ひーちゃんは線香花火

大学生の汐梨には、「そんなにたいしたことじゃない」が口癖の尾崎という彼氏と、ひーちゃんと風人という友達がいる。ある日、汐梨は彼氏以外の人にキスをされる。


燃えるスカートのあの子

大学生の翔多は、クラスメイトの美女、椿のことが好き。翔多の周りには、ダンスの専門学校に通うハルや、映画を撮っている礼生がいる。「自分は何かを持っているって思う人と、自分には何もないって思う人と、どちらが上手に生きていけるのだろう。」


僕は魔法が使えない

美大生の新は、この人を描きたい、と思った女子大生に声をかけ、モデルになってもらう。しかし、新が本当に向き合いたかった人は他にいた。


もういちど生まれる

二浪中の梢は、予備校の先生に片思いをしている。梢には、美人で何でも上手くこなす双子の姉がいて、姉のことは、「うらやましいから、だいきらい」だ。


破りたかったもののすべて

ダンスの専門学校に通う遥は、なかなか上手く踊れず、良いポジションがとれずに苦しんでいた。高校生の頃は、ダンスバトルで勝ち、「すごい」と言われていたが、今ではもう「すごく」なんてない。


普段は蓋をしている感情と向き合えた


朝井リョウさんの本、やっぱり好きだなと実感しました。登場人物たちとの距離が非常に近く感じられ、私は大学を卒業してからもう数年経ちますが、一人ひとりの想いや葛藤に共感しました。


特に社会人になってから、思うことがあっても、毎日を円滑に過ごすため、とりあえずその感情に蓋をして、職場では笑顔を見せることが増えた気がします。


考えすぎると、前に進めなくなるから。まずは、今目の前にある仕事をこなすことが大切だから。将来や自分に何があるか考えるより、とりあえず与えられた役割を全うしなくちゃ。


この本を読み、自分に言い訳をして、なかったことにしている感情と向き合えた気がします。



西加奈子さんの解説も素敵でした。深く頷きながら読みました。



朝井リョウさんの作品、他のものもどんどん読んでいきたいです。普段考えないようにしていること、自分の嫌なところにも向き合うことで、新しく見えてくるものがあると思います。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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